第308話 魔法学校での講義は好評を博しているようだ
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第4週となった。来月には魔法学校で恒例の講義があるので、その準備を始めないといけない。講義内容については流石にもう慣れたもので、大きく検討するものではなくなっているが、精霊を見せることと、魔法強化については学校側の要望が高く、最近では精霊術士達も一緒に来て貰って、多くの学生に魔法強化をした上での魔法の試し撃ちを行って貰っている。各属性の精霊術士を1名ずつ精霊課長に選定して貰って、打ち合わせなどを行った。
期毎に行われる定例の御前会議に合わせた、事前の省定例会議が行われた。ワターライカ島での取り組みは宰相府から取りまとめて報告される他、現在検討中の魔道具研究所の件などを報告するそうだ。また、私も帝国に行ったりセントチェスト国に行ったりしたから、その後の対応も含め、外務省から報告されるそうだ。
御前会議の日となった。宰相府の大会議場に移動し、着席して事前配布された資料を読んでいると、陛下が来られたので、席を立って礼をした。陛下の開始のお言葉により、会議が始まった。
各省毎、現在行われている事業のうち、主要なものの進捗を報告していく。特に、国家の一大事業であり、先月から入植が開始されたワターライカ島の状況については、陛下への報告という形を取ってはいるが、政府としての区切りのようなものでもある。正式な国家としての発表や、後世に伝えて行く歴史についても、こういった文章が使われるわけだから、そう考えると感慨深いものがある。
先週までの合計で、約5万人が入植し、現在は事前に準備された田畑で耕作を行うとともに、先日私が準備した田畑の土を作っているらしく、住居も当面は問題無いとのことだった。
また、漁師達も初めての海で慣れないものの、日々の漁で獲れる魚の量も徐々に増加しており、獲れた魚は氷魔法により冷凍した上で各集落に運ばれ、食卓に上がっているらしい。当面の食糧は政府の配給が主体となっているが、米やさつまいも、各種野菜などが採れるようになれば配給は減らし、自給自足の体制を築いていく予定だ。
それと、国防省からの報告では、先日の視察の際にも話があった風魔弾発射具を搭載した船が完成したそうで、現在は搭載船を増やしつつ、海兵達の訓練を行っているそうだが、風属性の海兵の魔法の練習も同時に行っているらしい。魔法兵団もそれに協力しているそうなので、魔法兵団に所属しているティーナも教えていたりするのだろうか……?
他には、外務省から私に関連した報告があった。帝国からは、蝗害終息の正式なお礼を貰ったり、今後の交易の拡大などが調整されているようだ。特に、帝国はこちらの新産業や食材などに関心を示しているそうで、文化交流も拡大させようとしているらしい。まあ、その一環ということで、最近私の所にも第2皇子がやって来るわけだが。
セントチェスト国についても、正式なお礼が来たようだ。それと、ポールテミナ公爵家は、やはりフェルノーバス様に代替わりするようで、当座はポールテミナ領の混乱は避けられないが、鉱毒被害が回復したことで、集落が放棄されるといったことが無くなったため、国境は安定するだろう、とのことだった。
鉱毒除去技術についても商務省が主体となって普及しているが、その見返りとして、採掘された各種鉱物を安価で輸入出来るようになったそうだ。ちなみに、以前セントチェスト国で大量に入手した鉱毒、つまり重金属や硫黄などは、商務省に話をしたところ、喜んで引き取ってくれた。より分けた上で渡したから、役に立ってくれるだろう。
それと、セントチェスト国についても、交流を活発化させる方針のようだ。というのは、セントチェスト国は元々ウェルスーラ国との関係が深かったのだが、ワターライカ沖海戦以降はウェルスーラ国の影響力が低下しており、今回のことを切っ掛けに、ロイドステア国との関係強化を図りたい、との考えの様だ。
セントチェスト国自体は、ユートリア大陸内で国土が一番狭いが、鉱物資源に恵まれており、鉱毒対策をしっかり行ってくれるのであれば、我が国としては関係を強化するのはやぶさかではないらしい。なお、精霊課長から聞いたのだが、外務省を通じて、精霊術士の増加や育成方法についても支援をして欲しいという調整があったそうだ。あの国も今後は自然や精霊を大事にしてくれるだろうし、そのうち行ってみてもいいかな。
魔法省からは、現在の施策や魔道具研究所の構想を報告していた。年末の予算審議に反映して、しっかりとした組織を作るように、と陛下も仰っていたので、進めても問題無さそうだ。
こうして、御前会議も恙なく終了した。
月末の休日となり、特に用事も無かったので鍛錬を行った。武術大会対策である、仮面を装着しての鍛錬も問題無く行えている。ナビタンとの稽古も進めているが、私が見ていない時も稽古を続けているようで、なかなか様になって来た。一応前世でも道場の師範代だったので門下生にはそれなりに教える機会があったが、人に何かを教えることは、新たな発見にも繋がるので、なかなか楽しいものだ。
7月に入り、魔法学校で行う精霊概論の準備をしていたところ、魔法学校から連絡があり、今年については他国からも講義を確認したい、という申請があったそうだ。どうやら、元々サウスエッド国大使が今後のことを考えて、精霊に関する知識を得ようとして視察を申請していたのだが、その情報をどこからか入手した帝国も申請してきたらしい。
私自身は構わないのだが、魔法学校も対応が大変だろうな……。ちなみにお父様は国防大臣になってからは来なくなった。騎士学校ならともかく、魔法学校の視察は余計な軋轢がかかるから遠慮しているらしい。
省の定例会議なども特に大きな話題は無く、魔法学校で講義を行う日となった。魔法学校に精霊課長や精霊術士達と一緒に空動車で移動した。今回、来て貰っている精霊術士は、火属性がアナフィーテ、風属性がサリエラ、水属性がアリネラ、地属性がエナだ。今日対応可能な者の中で希望者を募ったら、案外人気があったので抽選した結果、この4人になった。
「友人が魔法学校に通っているので、楽しみですわ」
「アナさんはまだ学校に通っている年頃ですからね。イクスルード領出身の方かしら」
「はい。あちらの親も行政官でして、幼い頃から親しくさせて頂いています」
「今回会えると宜しいですわね。エナさんもそういった方がいらっしゃるのかしら」
「私の知り合いは既に卒業して、今では嫁いでいますね……精霊術士の仕事も楽しいのですが、婚期が遅れてしまうのは、少々気が重いですわ」
車中で会話をしていたところ、微妙に重たい話になったりしたが、魔法学校に到着したので流れを変えつつ学校長の所に行き、挨拶と時間調整をした後、講義を行う大教場に向かった。大教場の教壇に立ち、学生の皆から礼を受け、挨拶を行った後、講義を始めた。
ざっと見た所、学生達や教官の他にも、確かにサウスエッド大使や、帝国大使である第2皇子が聴講していた。とは言っても特別扱いする必要も無いので、普通に講義を行おう。
ある程度講義を進めたところで、例によって精霊に姿を見せて貰うと、やはり皆の注目度が高い。サービス? に、大教場内を暫く舞って貰ったり、精霊達が普段どのようなことをしているか、なども話したりすると、皆面白そうに講義を聞いてくれた。
魔法強化の体験実習の時間となり、魔法練習場に移動した。魔道具で拡声しながら、説明を行う。
『では、先程説明しましたが、これから魔法強化の体験を行って貰います。各属性の精霊術士に来て貰っていますので、属性毎に分かれ、あちらの的に魔法を放ってみて下さい。なお、あちらの的は魔法強化用に作られた特別製で、恐らく壊れることは無いと思いますので、存分に魔法を放って下さい』
精霊達に姿を見せて貰っているので、学生達は案内の必要も無く属性毎に分かれた。教官や大使達も魔法を試してみるようだ。第2皇子は……火属性の所に行ったようだ。そういえばあの人、魔法の腕については特に聞いていないが、どの程度なのだろうか?
精霊術士達が、それぞれの場所で打ち合わせ通りに魔法強化を行い、魔法強化された状態での魔法体験が始まった。通常時と比べて格段に威力の上がった魔法を見て、学生達が驚きの声を上げている。
第2皇子も、火属性弾を放った後、驚いた表情をしていた。魔法の実力は……今の威力からすると、皇族としては申し分ない、といったところか。目が合ったからか、近付いて来て私に質問をした。
「講師殿、尋ねたいのだが……この『魔法強化』は、全ての精霊術士が行えるものなのか?」
「いえ、それなりに修練を積んだ精霊術士にのみ行うことが出来ますわ。ロイドステア国の精霊術士については、修練を積んで魔法強化が使えるようになってから、各種業務を行うようにしております」
「成程……我が国の精霊術士にもそれが可能なのだろうか?」
「可能ですわ。細部については、私からはお答えできませんので、政府間で調整をお願いします」
「承知した。教示頂き、礼を言う。そういえば、今度の武術大会で、面白い噂を聞いたのだが、とある貴族令嬢が大会に参加するとか。何かご存じではないか?」
「それは講義の内容ではございませんので、お答えできませんわね。ふふ」
「そうだな、では失礼する」
第2皇子は、それから地属性の所にも行って、魔法を試していた。
講義が終了し、皆と一緒に魔法省へ戻った。その中で精霊術士達にも感想を聞いたが、一番嬉しく思ったのは、学生達も精霊を認識してくれたことらしい。精霊に限らず、見えている人と見えていない人が会話をすると、どこかにずれが生じてストレスになるからね。まあ、妖精族の様に全員が精霊を見ることが出来るようになるわけではないだろうから無い物ねだりなのだが、そういう技術などが開発されて欲しいものだ……。
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