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第304話 セントチェスト国の鉱毒対応 4

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ポールテミナ領中心都市から王都まで移動した。


今回については、警護部隊も含めての移動なので、徒歩の移動速度に合わせることとなり、5日かかった。ただ、王都までの道において様子を見た限りでは、枯れていた木々も葉が付き始めていたことなどを確認出来た。


王都に到着後、警護部隊の殆どは郊外に駐屯し、私やテルフィ、外務省の職員及び少数の兵が王城に宿泊することになった。とりあえずは駐留大使に会って、現状を確認させて貰った。


フェルノーバス様からこの国の政府に対し、鉱毒の汚染地域の回復の件が報告されて、こちらはかなりパニックになっているらしい。確かに、常識ではありえないことだからね……。


また、国土の荒廃が精霊云々は関係無く、鉱山の開発に伴うものだという話も、一部の人達には受け入れて貰えたらしいが、今回汚染地域を回復させたことにより、逆の事を行うことも出来るのでは、という疑念も出て来ているそうだ。これは、地の大精霊に出て来て貰うのが正解になりそうだ。




次の日、駐留大使とともに謁見の間に移動した。この際、念の為に私に付いている精霊達の姿を見せた状態で謁見することにした。疑念を抱かれても困るからね……。


「ロイドステア国大使及び精霊導師の入場」


入場統制の声と共に扉が開かれ、駐留大使と一緒に入場し、立ち止まって、跪いた。やはり私の後ろに浮いている精霊達を見て驚いているようだ。


「ロイドステア国大使殿、そして、精霊導師殿、面を上げよ」


「陛下、この度は拝謁賜り、恐悦至極に存じます」


「うむ。此度は我が国の為に尽力したとのこと。礼を言う」


「そのようなお言葉を頂けるとは、誠に有難き幸せに存じます」


「また、ロイドステア国からは、鉱山の採掘においても環境汚染を防止する技術を提供する用意があるとの話を聞いた。我が国としても検討に値すると考えておる」


「我が国の王も喜ばれることでしょう」




ここで、国王は私の背後の精霊達をちらりと見た後、言った。


「さて、精霊導師よ、此度の件で何か所望する事があると聞いたが、誠か?」


「仰せの通りにございます。此度においては、地の大精霊の助力により、事を収めることが出来ましたが、その際に、地の大精霊から陛下に御目通りの申し出を受けております。特に、此度の件については、皆様もお知りになりたいとお考えになっている筈ですので、許可を頂きたく存じます」


「成程、道理よの。よし、大精霊を呼ぶがよい」


許可が出たので、地精霊に呼んで来て貰った。暫くして


『おう、愛し子よ、すまんな!』


と、地の大精霊が出て来たので、魔力を与えて姿を見せて貰うと、再び周囲がざわめいた。


「陛下、地の大精霊にございます。現在は私の力にて、精霊視を持たぬ者でも視認できる状態にございます。なお、精霊に人の作法を求めることは、ご容赦願います」


「ふむ、地の大精霊よ、此度の件について、話したい事があるそうだな」


『そうなのだ、王よ。儂ら地の精霊達は、この国の鉱山の採掘自体に反対しているわけではない。生活の為に必要な事は理解しているつもりだ。だが、採掘の際には、人や自然に悪影響を及ぼす物質が出ることもある。それを何とかして貰いたいのだ』


「だが、此度お主と精霊導師で回復したのではないか?」


『確かにそうだが、それは現在溜まった鉱毒を除去したに過ぎん。当然今後も対策を行わずに採掘を行えば、同様に汚染されてしまう。また、森林の回復には植樹なども必要ゆえ、地盤の弱化に伴う河川の氾濫は当分頻繁に発生する筈だ。鉱毒の流出防止に加えて、そういった事も今後行って貰えんだろうか』


「そういった事は、精霊の仕事ではないのか?」


『基本的にはその通りだが、儂らは神より『人の行いは、人に責が及ぶ』と言われておる。故に、人の成した事の結果発生した事象の回復は、人に行って貰わねばならん。儂らは助力のみ許されておる』


「……相分かった。それと、確認するが、此度の件は、意図して荒廃させたわけではないのだな?」


国王はどうやら、精霊の仕業と言われていた件についても聞いてみたかったようだが、それは地の大精霊にとっては、不満を口に出す良い切っ掛けだったようだ。


『何で儂らがそんなことをする必要がある! 自然を破壊しようとする精霊などおらん。寧ろ、儂らは対策を行うよう警告しておったわ!』


……それから地の大精霊は、これまでの経緯を話し始めた。


他の鉱山と同様に、フティール銅山について地の精霊術士が調査をした際に、鉱毒の対策を行わないと大地が荒廃すると警告したところ、銅山の開発を行っていた領主がそれを嫌って、地の精霊術士を陥れて王都から追放し、開発を進めたという話をしたところ、謁見の間にいたある貴族から奇妙な視線を感じた。関係者だろうか?


国王もおとなしく話を聞いているようだが、微妙に怒っているように感じる。更に話は続き、現在発生している精霊への噂についても、実は大地の荒廃の責任を負わされることを恐れたその領主が広めた噂らしい。なるほど、そういう話だったのか……。


「相分かった。……財務大臣ポールテミナ公爵はおるか」


すると、先程奇妙な視線を向けた貴族が恐る恐る出て来て跪いた。この人がポールテミナ公爵か。


「偉大なる陛下。忠実なる臣、ポールテミナ公爵はここにございます」


「……先程の地の大精霊の言をどう思う?」


「恐れながら陛下、全くの偽りにございます。そもそも証拠がございません」


まあ、普通は証言がそのまま証拠になるわけではないからね……しかし


「恐れながら陛下、発言をお許し頂きたく存じます」


「精霊導師よ、発言を許す」


「精霊は神により、偽りを申す事の出来ぬよう作られた存在にございます。即ち、先程の言は全て、真実にございます。そして、精霊の言の真偽を語る事は、神への疑念ととられかねません」


「なっ、この小娘!」


ポールテミナ公爵が私に何か言おうとしたようだが、それを国王が遮り、怒りを湛えた視線をポールテミナ公爵に向けた。


「確かにそう伝えられておるな。……公爵、今一度問う。先程の地の大精霊の言をどう思う?」


すると、ポールテミナ公爵は、何だか良く分からない言い訳を始めたため


「もう良い。暫く謹慎せよ」


と国王が手を振って告げたところ、周りにいた衛兵によってポールテミナ公爵が謁見の間から追い出された。それから国王が、再度私達に礼を言って、この謁見は終了した。


これまで他国に派遣された時と同様、回復を祝った宴などが開かれることも無かったので、あとは気楽なものだった。


それと、王都から追放されたという精霊術士のことが気掛かりだったので、駐留大使に聞いてみたところ、追放と言っても、出身の領に戻っただけのようで、その後は普通に結婚して、幸せに暮らしているそうだ。その領は豊作が続いているらしく、領政も良好らしい。まあ、その人の所に行った地精霊達が沢山いるらしいからね……。


我が国は幸い精霊術士が多いけれど、精霊術士が少ないと、こういうことも起こるのだろうか? 今後はこの国にも精霊視を持つ少女が増えていくことを祈ろう。




ということで、仕事を終えた私はロイドステアに帰った。国内に入ってからは空動車のみでの移動だったため、1週間で王都まで帰り着くことが出来た。帰ってからは陛下に復命を行い、また、詳細な報告を、宰相閣下や外務大臣、お父様に対して行った。


派遣された目的を達成し、精霊への誤解も解くことは出来た。あの様子だと、今後は鉱毒対策や植林なども行ってくれるだろうし、精霊の言葉を蔑ろにすることも無いだろう。早く復興して欲しいものだ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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