表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

310/414

第303話 セントチェスト国の鉱毒対応 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ポールテミナ領の状況を聞いた後、一度実験をするため、空動車で領中心都市から少し離れたワズニウ川の川原にやって来た。


川底は微妙に青白くなっているように見え、また、川には魚は見られなかった。恐らくは銅やカドミウム、硫化物、硫酸イオンなどが通常よりはるかに多く含まれているのだろう。


一度、地精霊と右手を同化させ、重金属や硫化物を取り出せるかどうか試してみた。まずは土壌の状態を見てみる。地中深いところの成分と、地表面付近を比べてみると、確かに重金属が多いし、特定の元素が多い気もする。これが硫黄だろうか?


それらを地表面から抽出してみる……集めるのにかなりの力が必要なようだが、周辺の土壌から該当する成分を抽出することが出来たようだ。ということで目の前には、硫酸銅や硫酸カドミウム、その他硫酸塩や硫化物らしき物質がまとまっている。


この周辺からだけでも抱えるほどの量が集められたということは、全域にはどれだけの量が流れているのだろうか? 今後の作業量と、それだけ環境破壊が進んでいるのだと考えると、気が重くなった。




その日は一旦公爵邸で休ませて貰い、次の日にはワズニウ川流域を空動車で確認してみた。やはり広範囲に亘って汚染されているようだ。一度フティール銅山も確認に行ったが、周辺には木が無かった。これは酸性雨だけでなく、薪や建材として使用したせいで無くなっているのだろう。今後は植林も進めて貰わないとね……。




数日間調査を行っていたところ、フェルノーバス様の通達により銅山の操業が一時停止されたので、本格的に土地の回復を進めることになった。ワズニウ川の近くまでやって来て、和合をしようとしたが、よく考えると和合に必要な地精霊の数が足りなかったので、私に付いている地精霊に、他の地精霊を呼んで来て貰うことにした。暫くして


『おお、愛し子よ、久しぶりだな!』


と、地の大精霊がやって来たので、少々驚きながらも挨拶を返す。


「あら、地の大精霊殿。ワターライカ島の対応以来ですわね。地精霊には、他の仲間を呼んで来るよう頼みましたのに、貴方がいらっしゃるとは」


『ああ、丁度儂がおったのでな! それに、この地の状況は、以前から気になってはいたのだが、今回愛し子が動くのであれば、儂も顔を出そうと思ったのだ!』


「そうでしたか。では、可能であれば、助力をお願いしたいのですが、宜しいでしょうか?」


『確かに、お主と儂が力を合わせれば、当面この地の変調は回復するだろうが……この国はなあ……鉱山が多いので、昔から儂らの声を聞ける者を通じて警告しておったのだが、少しも聞きよらん。挙句の果てにはこのように大規模に土地を荒らしておる! 正直なところ、この地に住む人間など見捨てたくなっておるのだ……』


「お気持ちは解りますが……既にこの国だけの問題ではなく、周辺国にも影響が出てきているのですわ。私としても、今後は対策を講じるように働き掛けますので、何卒ご助力をお願いします」


『ふむ……では、この国の王に、儂を会わせて貰えんだろうか? 流石に文句の一つも言わせて貰わんと気が済まん!』


「その程度で宜しければ、調整させて頂きましょう」


基本的には、土地の回復が終われば国王には謁見することになるので、その際に地の大精霊を呼んで、魔力を与えて姿が見えるようにすれば良いことだ。あちらにも事前に言っておけば、問題は無いだろう。


『そうか、それは良かった! 何せあいつらときたら……』


それから暫く地の大精霊の愚痴? が始まった。鉱山が多いこの国には、各地の鉱山で何度も警告していたが、聞き届けられることは無かったそうで、鉱山の周辺は荒廃しているらしく、地精霊達は心を痛めているそうだ。


それでも、範囲が限定されていたからまだ良かったものの、このフティール銅山は大規模に開発したので広範囲に亘って荒廃しており、汚染範囲が海の近くにまで広がってきたため、先日、水の大精霊からも何とかするよう言われたらしい。


本来言うべき先はセントチェスト国なのだろうが、精霊術士を通じて警告しても国が動いてくれないので、とばっちりが地の大精霊に向かったようだ。


水の大精霊は結構ねちっこく文句を言うらしく、困っていたところに私がセントチェスト国にやって来たので、良い機会だと思って姿を現したらしい。それはお疲れ様でした……。


あと、以前ディクセント領で水の大精霊にそれとなく聞いていた、セントチェスト国の精霊術士の話も詳しく話してくれた。やはり、この鉱山の開発に不利な内容を話したことから、政府から遠ざけられて、現在はこの領から離れている、ネクディクト国に接した領に住んでいるらしい。


精霊としても、話を聞いてくれる人間がいる土地の方が良いのか、この領などにいた地精霊のうち、結構な数の精霊がそちらの領に移動しているそうだ。そうなっても仕方が無いのだろうが……それらは為政者達のせいで、そこに住む人々のせいではないからね……。


精霊は基本的に人そのものに関心を持っているわけではないけれど、こういった自分達の活動に関した内容であった場合は、情報を集めていることがある。精霊女王様と話していても、それなりに情報を集めてそうな感じがするからね。しかも、通常の人間には気取られないから、内緒話なども聞かれてしまっている可能性がある。私としても、公明正大を心がけておかないとね……。




地の大精霊の愚痴? が終わった所で、和合を行うべく、定められた文言を呟いた。


【我が魂の同胞たる地の大精霊よ。我が願いに応じ、共に在らん】


『我は地の大精霊なり。其の願い、聞き届けた』


すると、茶色い光の奔流が私を飲み込んだ。意識が大地に溶けていくような感じがしたが、暫くすると、体の感覚が明確になってきた。


そして、大地の状態を確認できるよう、知覚の範囲を広げていくと、やはり広範囲に亘って汚染されていたことが確認出来たが、地の大精霊と和合を行うことで、通常の和合より遥かに知覚範囲が広くなっていたため、フティール銅山による汚染の範囲を全て知覚することが出来たようだ。


「大精霊殿、これから銅山の採掘によって流出した重金属や、雨に混じって大地に降り注いだ物質を集めますが、宜しくお願いします」


『応! まかせておけい!』


では、この場に銅やカドミウム、硫黄などを集めよう。地の大精霊も補助してくれるから、取りこぼしは無い筈だ。


掌握した大地から、それらを集めて行く。同行していたフェルノーバス様達、テルフィや警護部隊の人達も、私と次第に集まって来る物質に注目している。


集めた物質がある程度の塊になったら、異空間に収納して、再度集める、といったことを繰り返し、小一時間経った頃には汚染地域の除染が終了した。


ついでに、枯れた樹木達にも地属性のエネルギーを与えて、回復しやすいように調整して、作業を終えた。




和合を解き、地の大精霊にお礼を言う。


「大精霊殿、ご助力頂き、有難うございました。おかげであのような広範囲の土地の回復が、一度で終了しましたわ」


『なに、どうせ何かしらの対応は必要だったのだから、儂としても助かったわい! では、宜しくな!』


と言って、地の大精霊は去って行った。今回は助けてくれたけれど、きちんと声を聞かないと、いずれは見捨てられてしまうかもしれないということを、しっかりとこの国の人達にも解って貰わないとね……。


私の作業が終わったことに気が付いたフェルノーバス様が、こちらにやって来た。


「……精霊導師殿? 今はどのような状況なのだろうか?」


「ポールテミナ公爵令息殿、地の大精霊殿の助力のおかげで、全ての汚染地域の除染に成功致しましたわ。また、枯れた樹木にも地の力を与えましたので、暫くすると、復活していくことでしょう」


「何と! 本当に我が領だけでなく、他領にまたがるワズニウ川の流域全てを回復させたと言うのですか? 確認しても宜しいか?」


「宜しくお願いします」




それから数日間は、ポールテミナ領内やワズニウ川下流の領の主要な地域の状況を確認し、川底の色が普通の色になっていたり、樹木に葉っぱが戻って来ていることが確認されたため、回復が真実であると証明された。


このため私は、フェルノーバス様の同行のもと、セントチェスト国王に謁見すべく、王都に向かうことになった。地の大精霊が謁見に同席することも伝えたが、特に問題無く、許可を得られた。これで憂いなく謁見が出来るかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ