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第030話 妖精王にも招かれた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

次の日早朝、とりあえず王城の転移門付近まで向かった。途中まではうちの馬車で、レイテア達と一緒だったのだが、馬車を降りたところで、パットテルルロース様達に会った。そのまま警護は妖精族に引き継がれ、パットテルルロース様に見送られ、転移門で移動した。ちなみに妖精族は6人で起動していた。


転移門は小屋の中にあったようで、扉を開けると、森で囲まれた中に木製の家が並び、少し離れた所に、非常に大きな木が見えた。あれが誓約の樹か。話のネタに、近くで見せて貰いたいものだ。


聞いた話では、ロイドステア国とウォールレフテ国の時差は概ね4時間程だそうで、早朝出発したにも関わらず、既に昼前だった。


道を歩くと、当然ながら妖精族がいた。特徴的なのは、大概近くに精霊がいることだ。精霊と会話をしている姿もあった。話には聞いていたが、本当に精霊とともに生きている、という感じだ。以前その話を精霊から聞いて「妖精」と表現していたが、イメージ通りだったよ。


いつもは私にも背後霊のように何体か精霊が憑いているが、転移門で移動する際に離れて、それ以降は今の所誰も付いていない。慣れた存在がいないのは、寂しいな。


とか考えながら妖精族に案内され、周りより立派な館に到着した。ここに国王陛下がいらっしゃるのか。中に入ると妖精族のメイドに案内され、とある部屋に入ると、妖精族の男性がいた。


「おお、貴女がフィリストリア殿か。私はウィントスルルームの子、クーリナルルドース。ウォールレフテ国の王をやっている。急な呼び出しにも関わらず来てくれて感謝する」


は?いきなり国王陛下が?慌てて跪こうとすると、陛下はそれを制止して


「確かに私は国王だが、そのような礼は不要だ。貴女と私は同じ精霊女王様の加護を賜った、仲間ではないか。友人と接するように、接して貰いたい」


う、うーん、そう言われると、そう、なのだろうか?……気持ちを切り替えた。


「では、クーリナルルドース様、初めまして。ロイドステア国、アルカドール領主の娘、フィリストリアです。今回はお招き頂き、有難うございます」


微笑みながら通常の礼をした。クーリナルルドース様と私はテーブルの席に着いた。ちなみにクーリナルルドース様は火属性なので、火精霊が近くにいる。


「さて、今回貴女に来て貰ったのは、女王様が「面白い娘に加護を与えた」と仰っていたので、私も是非会いたくなったからなのだ。早速弟と連絡を取ったところ、丁度会う機会があるということだったので、急ではあったが、招かせて貰ったのだ」


「……私の様な小娘など、特に面白くはないと思いますが?」


「いや、貴女は聞けば7才になったばかりというではないか。その若さでそれほど強い魔力を持ちながら、自然と調和がとれている。流石女王様の見込まれた方だと思ったよ。また、知っていると思うが、我ら妖精族は女王様と大樹を信仰の対象としている。貴女に会えることは、それだけで妖精族にとって大変名誉なことなのだ」


あー、なるほど、信仰対象の一部扱いなわけね。了解しました。


「そういうことで、今夜貴女を歓迎する宴を開きたい。受けてくれるだろうか」


「……宜しくお願いします」


まあ、仕方ないとしか言いようがない。国家間の友好を深める意味もある。話のネタを拾えるチャンスだと思って、参加させて頂こう。そう言えば、いい機会だし、聞いておこう。


「あの、クーリナルルドース様、この機会に、お尋ねしたいことがございます」


「私で話せることなら何なりと」


「私は先日、女王様から加護を賜りましたが、そのことで実際に何が出来るようになったのか、良く解っていないのです。女王様に仕える精霊から説明は頂きましたが、何分私は人間族ですので、これまでは精霊を見て、話すことくらいしかしておりませんでしたから、今一つ実感が湧かないのです。宜しければ、精霊術について教えて頂けないでしょうか」


「実は今回、その件も話そうと思っていた。女王様にも頼まれていたのでな。勿論教えよう」


おお、実は心配されていたのか。女王様有難う。でも、こっちにも話を通して欲しかった……。

ということで、精霊のことや、使役の要領についても、実演を交えながら、色々教えてもらうことになった。流石に、室内では危ないので、館の外の庭でやることになった。なお、見物はお断りした。


まず、魔法と同様のもの。これは問題なかったが、これまでの様に精霊が不審な動きをせず、私に従ってくれているのが見て分かった。やっぱり不自然なのはいかんね。次に精霊と五感を同調させるもの。


感覚共有、と言っているもので、よく使われるのは視覚と聴覚の共有。離れた場所に精霊を移動させ、その場の状況を見聞きできるようだ。先日兄様が貰った遠視のようなものか。それはすごい!と思って試しにやってみたが、視界がグラグラ揺れてしまい、慣れるのに時間がかかりそうだった。練習が必要だな。


ちなみにこれ、なんと会話もできるらしい。正確には念話で、当然、同属性限定になるが。今回、すぐにロイドステアにいるパットテルルロース様と連絡が取れたのも、パットテルルロース様が風属性なので、こちらで風属性の妖精族と感覚共有した風精霊が、実際に飛んで行って伝えたらしい。飛んで行かせるにはそれなりに魔力を使うが、感覚共有自体はさほど魔力を使わないそうだ。今度試してみよう。


さて、今度はいよいよ体の一部または全部を同調させるやり方だ。基本的には、活性化した上で、ある言葉を呟くことで発動できるようだ。この言葉は、その昔、女王様の誓約に基づき、精霊達と約定を交わして決められたものだそうだ。その言葉を聞いた近傍の精霊が、約定に応じた行動をとってくれるらしい。


一部の同調は、精霊一体と体の一部分、例えば右腕とか、左足とか。そうすることで、その一部分が強化されるとともに、そこに意識を集中することで、魔法ではなく、属性自体を操ることが出来るようになるらしい。


全部の同調は、精霊何体かと体全体で同調する感じだそうだ。ただし、この場合、辺り一帯の属性を支配下に置いたような感覚を持つそうだ。聞く限り、とんでもない能力だが……試してみることになった。


ただし、これらの同調を行う時は、衣服も気を付けないといけないらしい。水精霊だと服が濡れ、地精霊だと服が汚れる。火精霊だと、特殊な服以外は燃えてしまう。風精霊なら殆ど影響がないそうなので、今回は風精霊で試すことになった。


【我が魂の同胞たる火精霊よ。我の右手に宿れ】


クーリナルルドース様が言葉を呟くと、後ろにいた火精霊が右手に飛び込み、右手が熱を帯びた。

ちなみに現在クーリナルルドース様が着ている服は女王様から賜った特別製の服らしい。私は火精霊も扱えるので、出来れば入手したいものだが……まあ、後でお礼の念話をするつもりなので、様子を見て聞いてみるか。では私も風精霊でやってみよう。とりあえずは近くを漂っている風精霊を見ながら


【我が魂の同胞たる風精霊よ。我の右手に宿れ】


と言うと、風精霊が私の右手に飛び込んだ。何か、右手が風を纏っている、そんな感じだ。では、右手に意識を集中……おおっ、何か右手から無数の糸が伸びて、周りの風属性の物質に繋がっている感じだ。


試しに、頭上につむじ風……ええっ、こんな簡単に発生するの?なにこれ。次はかまいたち……うわっ、何か原理云々の話ではなく、本当にイメージ通りに現象を作ることが出来る。凄い!


ひと通り思いつく現象を試したのち、同調を解除した。解除の時は【戻れ】と言うだけだ。


「どうかね。精霊と同じことを行う感覚は」


「……正直、万能感を覚えましたが、同時に恐ろしくもありました」


「そうだな。その感覚を忘れないで欲しい。次は全身で試してみるが、その前に、全身を同調させるのは非常に魔力を消費するので、必ず確かめることだ。まあ貴女の魔力量なら、あまり心配ないだろうが。また、情報過多で意識を失うかもしれないので、危険を感じたら、解除しなさい」


一応魔力を確かめたが、全く問題ない。では、見本を見せてもらおう。


【我が魂の同胞たる火精霊よ。我と共に在れ】


クーリナルルドース様がそう呟くと、周囲から火精霊5体が体に飛び込んだ。すると、クーリナルルドース様が炎を帯び、ふわりと宙に浮かんだ。すると威圧感が漂う。更に、私達の周囲にいる精霊達が平伏しているように見える。なるほど、大精霊と同格とは、こういうことか。


暫くするとクーリナルルドース様が同調を解いた。少し息が荒い。これは長時間やるとかなり疲れそうだ。では、試しに私もやってみよう。


【我が魂の同胞たる風精霊よ。我と共に在れ】


周囲にいた風精霊5体が私の体に飛び込んだ。途端に、周囲の何か色々なモノと繋がった感覚を覚えた。何というか、景色を見るというより、景色に溶けていく感じだ。自分の体が、意識が、景色だ。

危険を感じたので、同調を解いた。


「どうだったかね。……まああの感覚は、慣れるまでに時間がかかる」


暫く何も考える事が出来なかった。




我に返ると、クーリナルルドース様が目の前にいた。どうやら私は放心していたようだ。


「申し訳ありません。少し意識を手放してしまいました」


「まあ、最初であそこまで同調できれば、何度か試せば動けるようになる。疲れただろう。宴まで時間がある。暫く休むといい」


「有難うございます。お言葉に甘えて休ませて頂きます」


妖精メイドに案内され、今日泊まる部屋に着いて、ベッドに座ると、疲れていたのかそのまま寝てしまった。




ノックの音が聞こえた。私は寝ていたことに気づき、起き上がり「どうぞ」と言うと、妖精メイドが入って来た。どうやら、宴の準備が整ったので、呼びに来たようだ。


一応、姿見で顔や髪を見て問題ないことを確認して、妖精メイドに連れられ、宴の会場に向かった。どうやら広場で宴を行う様だ。いつの間にか、私の背後に、精霊達が付いていたので、少し落ち着いた。


私はクーリナルルドース様の隣の席に座った。多くの妖精族が私を見つめている。女王様の御威光なのだろう、好意的な表情だ。私はクーリナルルドース様に紹介され、皆さんに挨拶をした後、宴が始まった。


多くの妖精族が私の所に挨拶に来た。中には感激して泣く人もいた。いやそんな大層な者ではありませんから泣かないで下さい。また、エスメターナ様と話をしたことがある、という妖精族もいた。妖精族の寿命は500年くらいあるらしく、前王の世代の妖精族なら、会っている人は少なくないそうだ。どうやら、エスメターナ様の時も大歓迎されたようで、その縁が元で、ロイドステアとウォールレフテの間に同盟が結ばれ、転移門も設置されたという話だ。やはり凄い方だ。ブラコンだけど。


色々話をしていると、クーリナルルドース様がやって来て、私に話しかけてきた。


「どうだろうか、同胞達は。何か困らせていることは無いだろうか」


「いえそのような事は決して。このように手厚く歓迎され、大変楽しい時を過ごさせて頂いております」


「妖精族と接する人間は、そちらの国には少ない。できれば、貴女からも妖精族についての偏見が無くなるように、力添えをして頂ければ有難い」


確かに私も、このような機会が無ければ妖精族と話すことは無かっただろう。王城勤めの方なら、多少はパットテルルロース様とも話すだろうけれど、立場もあるので、こういった交流は難しい。実際、うちの国を含め、妖精族は容姿が美しく、自然と平和を愛し、強力な精霊術を使うが、他種族との交流を好まない偏屈というイメージが先行しているようだ。しかし、今日見ている限りでは、偏屈そうには見えない。


「分かりましたわ。微力ながら、交流の一端を担わせて頂きます」


「そうだ、明日は帰る前に、この付近を見てもらおうと思っているのだが、希望はあるかね」


「それでしたら、是非一度、大樹を拝見したいのですが……宜しいでしょうか」


「なるほど、大樹は我々の象徴。こちらからもお願いする。大樹は……」


それから、クーリナルルドース様は大樹の説明を始めた。どうやら大樹がとてもお好きなようだ。そしてそれを聞いた他の妖精族も入って来て、各々の大樹への想いを語った。うん、良く解った。


そこで気になる情報が1つあった。大樹の枝は、かなり丈夫な上、一定の間魔力を蓄えることができるそうだ。魔道具の材料などにも利用されているらしい。この枝で作った棒であれば、徒手とあまり変わらない感覚で使えるかも!




次の日、大樹こと誓約の樹を見せてもらった。周りに多くの精霊がいる。神々しい雰囲気なのに、何故か暖かく、安心する。なるほど、これは素晴らしい樹だ。この樹を見ることが出来ただけでも、この地に来た甲斐があるというものだ。


帰りしなに、2クール、つまり地球の単位で言うと1.8m、6尺の長さの枝を束で貰い、転移門を使って王城に転移した。クーリナルルドース様や、多くの妖精族が見送ってくれた。迎えに来てくれた護衛達に枝の束を渡し、王都の侯爵邸に戻った。


なお、本来は陛下に報告する必要があるのだが、私が頻繁に会うと色々と勘ぐられるため、内容自体はパットテルルロース様が報告してくれるらしい。感謝だ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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