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第300話 ワターライカ島への入植が始まった

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

暫くは特に大きな業務も無いが、ワターライカ島関連については、定期的に様子を見ることになっている。また、私の業務とは直接関係は無いが、最近はこちらを訪ねて来る方達が増えた。某国防大臣は除いたとしても、重力魔法事業関係でオスクダリウス殿下がやって来たり、先日のお礼と称して帝国大使である第2皇子がやって来たりと、何だかんだと対応している。


で、今についても王太子妃であるレイナルクリア様の対応中だ。


「フィリストリア、確かにサウスエッド産とヘイドバーク産の幹生殻葵では、作成した殻葵糖の風味に違いがあるわね。茶葉の様に、風味の違いを活かすのは面白いわね」


「はい、レイナルクリア様。サウスエッド産は酸味が強く、香りが豊かですわ。ヘイドバーク産については、苦みが特徴的でしょうか。どちらの物でも美味しい殻葵糖は作れますが、それぞれ個性があって宜しいかと存じますわ」


「では、幹生殻葵は今後、サウスエッドからの輸入も増やすように働きかけますわね」


「元々幹生殻葵の需要が増加しておりましたから、ヘイドバーク産だけでは不足しておりましたからね」


「このように美味な甘味が話題にならないわけがありませんわ」


そう言いながらレイナルクリア様と私はチョコレートの食べ比べを行っている。チョコレートは元々アルカドール領で研究しながら作っていたのだが、去年甘味品評会に出品して以降、貴族の間で大変な人気となり、製法を知ったレイナルクリア様が、カカオ豆の輸入を増やすべく動いていたのだ。


元々、私がヘイドバーク産のカカオ豆の存在を知ったから、ヘイドバーク国から輸入していたわけだが、実はサウスエッド国でもカカオ豆は生産しており、産地を変えて大丈夫かどうかなどをレイナルクリア様が私に相談していたのだ。


「実は私も殻葵糖が気に入っておりまして、気軽に食せないかと考えておりました。ただ、幹生殻葵の生産は地域が限定されており、大量生産は難しい状況ですから、今回のレイナルクリア様のお考えは素晴らしい事だと存じますわ」


ただ、それでも今後も需要は増えるだろうから、何とか国内でも作れないか密かに検討しているのだけれども、品種改良してもワターライカ島で栽培するくらいしか手段が無さそうなのよね……品種改良も万能じゃないからね。まあ、入植が落ち着いたら試してみるのだけれども。


その後暫く、レイナルクリア様とチョコレート談義を行っていた。




今日は月末の政府全体定例会議だ。各省の報告や議題の中では、特に今回はワターライカ島への入植が5月から始まるため、その状況についての各省の報告が目を引いた。現在判っている入植希望者だけで、かなりの数に上っており、一般国民の関心も高いことが伺えた。


まあ、暫くは食料の心配は無いし、魔物も盗賊もいないという意味では安全な地域でもあるから、現在の生活が苦しい人達にとっては救いになるかもしれない。


その他としては、私が帝国の蝗害に対処した件が紹介されたりした。蝗害は対応が難しい災害の一種なので、私が簡単に対応出来たのは驚くべきことだったらしい。ユートリア大陸でも、サウスエッド国やネクディクト国などでも発生することがあるらしく、その場合は支援の要請が来る可能性が高そうだ。


それと、最近東西公領などで、前世でいうところの覚醒剤や麻薬に該当する薬の摘発が増えているそうだ。こういった類の薬は、カラートアミ教が医療系以外での使用を控えるよう教えていることから、許可制になっている国が多く、我が国でも許可された医療関係者以外は所持及び使用を禁止されている。


摘発された場所からすると外国から密輸されたものの可能性が高いそうだが、現段階ではどこの国から入って来ているか不明らしい。前世の様に、衛星情報などがあれば判るのだろうけれど、あるものでやっていくしかないし、こちらに協力依頼が入れば、協力させて貰おう。




5月に入った。まずは恒例になっている精霊視を持つ少女の確認だが……今回については水の精霊術士候補1名を確認した。


水の精霊術士は、ワターライカ島にも配置した方が良いのではないかという話も出ているから、多いと助かるのよね。現在は多く在籍しているからいいけど、継続的に育てて行かないと、いつの間にか退職していなくなってしまうからね……。


退職と言えば、私が魔法省での勤務を始めて最初に会った精霊術士の一人であるロナリアが、去年25才になったので退職となったのだが、その際彼女はアルカドール領での生活を望んだため、丁度相手を探していた行政官の所に嫁いだ。


彼女は王都出身だったため、どこを選択しても問題無い状態ではあったのだが、その中でアルカドール領を選んだ理由は、精霊酒が飲みたかったからだそうだ。今では毎日晩酌で飲んでいると手紙に書かれていたから、希望通りで良かったとは思うけれど……飲み過ぎないようにと返信しておいた。




5月になったことで、いよいよワターライカ島への入植が始まった。基本的には海に面した領から船でライカル港に移動し、そこから業種に応じた場所に移動していくことになる。特に、各種行政職なら中央地区へ、漁業関係ならハリス漁港地区へ、農業や牧畜は点在している開拓村に移動している。


開拓村は同郷の人達が多いらしいが、今回は米やさつまいもを主に作っていくので、指導的立場の人もテトラーデ領やイクスルード領から呼んでいる。今年は試しで作って貰い、来年から本格的に生産する方針だ。


食料については、当座は本土からの持ち出しや、ハリス漁港で獲れる魚を主体にする予定だ。また、当初移住して来た人達が住む家などは用意しているが、今後増える場合はそれぞれの地区に任せる方針だ。


今の所、入植者が多いのは、イストルカレン、ワンスノーサ、ノーナイスト、ペンタデウス領らしい。改革派の領が多いのは、最近不景気だからだそうだ。私が言って良いのか分からないが、改革派は落ち目らしく、特にあの異端審問騒ぎや、クリフノルド様に代替わりしたことが原因で東公の求心力が低下しているそうで、今ではカウンタール家が改革派をまとめている状態らしい。


ちなみにペンタデウス領は体制派だが、ここは漁師の家に生まれたけれど、船を継ぐことが出来ない若者が多いらしい。漁港の大きさの関係上漁船の数が制限されているからだそうだが、そういった者達はこれまでは出稼ぎをしていたところ、漁師として働けるワターライカ領に移住しようという話なのだそうだ。漁船をそれなりに準備していて良かったよ。


そういえば、堆肥などの関係もあるので、牧畜は当初から重要視していて、今回幾つかの領から牛、馬、豚、鶏を輸送している。ただし、当座は産み育てることが主体で、食肉用にするのは暫く後になる予定だ。


このような感じなので、暫くはワターライカ島の環境が大きく変化していく。また、海兵団や飛行兵団の一部は引き続き島に配置されているけれども、こういった時には治安上の問題が発生しやすいため、ペンタデウス領のフルホークに駐屯している歩兵団第4歩兵隊から千兵隊2個隊が配置されているそうだ。やっぱり住民が増えるとどうしても諍いが発生してしまうからね……。




かくいう私も、入植開始の様子を見るため転移門により中央地区に移動し、行政舎で様子を聞いたり、空動車で主要な町などに行って、実際に様子を見たりした。基本的には何というか、人の持つエネルギーを凄く感じた。久しぶりに意識を感じるのがきつく思えたよ……。


新たな生活に夢を抱いている人や、どうしようもなくて藁にもすがる気持ちでやって来たような人、親について来たのはいいけれど、状況が良く分からなくて不安に思っている子供など、様々だった。


当座は生活基盤を作ることで精一杯になるだろうけれど、文化的なものも増やして行かないとね。その辺りは、ステア政府の各省から派遣された職員達も考えていると思うけれど、差し当たっては集落のまとめ役を決めて、教会を建てて神官に来て貰った方がいいだろう。一般の人達が安心するからね。


何にせよ、この新天地にやって来た人達が、幸せに暮らせるように、今後も頑張っていこう。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


※ 造語

  幹生殻葵:カカオ豆  殻葵糖:チョコレート


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