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第295話 私の成人を祝う宴が行われた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は私の15才の誕生日、成人を祝う宴があるので仕事は休んで色々準備を行うが、それはそれとして日課の早朝鍛錬をテルフィと行っていると、最近は一緒に鍛錬を行っているナビタンもやって来た。


「あら、ナビタン。いつもより早いから言っておりませんでしたのに。まだ寝ていて宜しいですわよ」


「こちとら鼻が利くんでな。それより、今日は色々あるってのに、お嬢様も大丈夫かよ」


「体調を点検する意味もありますから問題ありませんわ。では、いつもの様に型稽古を始めましょう」


ということで、体操を行ったナビタンと一緒に型稽古を始めた。テルフィは型稽古には参加せず、他に一緒に鍛錬を行っていた護衛達に混ざって対戦を始めた。最近は大体こんな感じだ。


獣人族には、獅子獣人、狼獣人、猪獣人、鹿獣人、兎獣人など、様々な民族がいるそうだが、ナビタンは熊獣人らしい。熊は犬より鼻が利くらしいから、色々な事が分かるらしい。最初は犬か狸なのかと思っていたが、どちらも違っていた。そういう民族は無いようだ。まあ、確かに犬は人間が飼い馴らした狼だし、狸は日本にはいたけどこちらにはいないからね……。


「ところでお嬢様、そんなものを被って良く普通に動けているな。いつもながら感心するぜ」


「まあ、こうやって慣れておかないと、大会で苦労しそうですからね」


ちなみに今の私は、導師服を着ている他、仮面を付けている。導師服は魔力を通すことで浄化を行えるから、夏の鍛錬には必須なのだが、従来と違うのはこの仮面だ。顔全体を覆っていて、視認のために目の周辺は前世の剣道の面と西洋兜を混ぜたような形状になっていて、両耳の上付近に着いた紐を結んで固定する仕組みになっている。


これは、武術大会の際に素性を隠して参加する際に着用を義務付けられているものだ。そう、15才になった私は漸く武術大会に参加可能になったのだ。


昨年ダリムハイト様がミリナとの結婚のために武術大会に参加した際、お父様とお母様も武術大会を観戦していたのだが、以前から参加を狙っていた私は、その際に許可を頂こうと話を持ち掛けた。二人とも難色を示したが、最終的には素性を隠して参加するのであれば、と許可を頂いた。


合気道には試合が無く、また、本来は争うための技術でもないわけだが、それは合気道を極めた人だけが言えることだ。私の様な志半ばの者は、強者との本気の戦いを積み重ねることにより、様々な事を理解していかねば、道を極めることなど出来ないだろうと考え、様々な不都合を押して参加させて頂くことになったわけだ。


例えばこの武術大会、何らかの理由で貴族が参加することも多く、ダリムハイト様は家の決定で参加したから普通に家名を名乗っていたけれども、家の決定ではなく個人的に参加する場合は、素性を隠して参加することが認められている。予選落ちしたら家名に泥を塗る、などの考えもあるから、勝ち抜く自信が無い場合は素性を隠すことも多い様だ。


で、この素性を隠す場合、着用を義務付けられているのがこの仮面だ。確かに顔が分かるなら、素性を隠す意味は無いから仕方ないのは判るけど、視界が制限されるし動きづらい。しかも属性を隠すためか、覗き込まないと目元が判らないようになっているというね……。正直これに慣れないと、通常の動作が取れないと判断したので、早朝鍛練の際に被ることにしたのだ。まだぎこちないところもあるが、良い鍛錬になっているので続けている。


それと、武術大会には、棒を得物に参加しようと思っているが、現在使っているものをそのまま使うのは問題がありそうな気がする。というのは、カーボンナノチューブを作れるようになってから、棒のコーティングを、鎧にも使った魔法銀との複合素材で行ってみたのだが、非常に堅い上、魔力との親和性が高すぎるためか、最近では刃を想像しつつ魔力を強く籠めると瞬間的に刃の様に噴出するようになった。


仮に「魔法刃」と呼称しているが、流石にこれが知られると規定に抵触する可能性があるから、別の棒を試合用に作って参加しようと検討しているところだ。素性を隠すという観点からも必要だろうしね……。





早朝鍛練が終わり、早めの朝食を頂いた後に、宴の準備が始まった。いつもは全身エステのような感じで終わるが、それに加えて通常私にはやらない美肌魔法も使って、メイド達に念入りに準備されている。


「お嬢様も遂に成人されましたね……本当にお美しいですわ……」


「クラリア、いつも有難う」


「いえいえ、お嬢様にお仕えさせて頂き、幸せな日々を送っております。それにしてもお嬢様は、お仕えした当初と比べて、本当に大人の体形になりましたわね。羨ましい限りですわ」


この数年で、身長の伸びは止まり、お母様より少し大きい位の背になった。ただ、横の方は一部が成長をやめず、遂にはこんな有様に……前世とあまりに違う様相を呈しているので、お母様遺伝子が働き過ぎたようだ。


部分的な身体強化で揺れを止めることが出来なかったら、激しく動くと痛くなったと思われる。あまりに揺れないので、一部で上げ底疑惑が起こったらしいが、それは正直どうでもいい。


「こんなのは、動き辛いだけですわ。変な視線が更に増えて、困り物ですし」


「……お嬢様は……そういう所は全く変わっておりませんわね。世の殿方達が可哀想になりますわ」


「その話はあと3年後に伺うわね」


雑談をして気を紛らわせながら、宴の準備を進めた。




ドレスの着付けも終わり、待機していると、お父様や、今回の宴のために王都にやって来ているお母様、お兄様、お祖父様が部屋に入って来た。


「フィリス、成人おめでとう。しかし、本当に美が人の姿を取ったような美しさだな」


「フィリス、成人おめでとう。ふふ、あのお転婆な娘がここまで立派になって……」


「フィリス、成人おめでとう。全く君は、世の芸術家に大変な苦労をさせたい様だね」


「フィリス、成人おめでとう。本当にマーサに生き写しじゃ……」


等々、お祝いとお褒めの言葉を頂き、暫くして宴が開始された。私は主役なので、皆が集まってから入場だ。家令のカールダラスが呼びに来たので、誘導されて、会場である大広間に向かう。お父様、お母様と一緒に壇上に上がり、まずはお父様が挨拶をする。


「皆様、今日は娘の成人を祝うため集まって下さり礼を申します。我が娘、フィリストリアは本日成人を迎えました。ご存じの通り娘は現在、精霊導師として活動しており、それはこの国に限らず他の様々な国でも力を発揮しております。それに加えて、最早蕾ではなく咲き誇る花、私の母もそう讃えられておりましたが『ステアのアルフラミス』という言葉が相応しいというのは、親の贔屓目ではございますまい。しかしながら、神託がございましたことをお忘れなきようお願いします。では、娘の輝かしい未来の為に、皆様におかれましても宜しく頼みます」


今回は領内では無く、客には体制派の領主などもいるからそれなりの言葉遣いだったが、現状の説明も何だかなあ……。ちなみに、本来私は申し込まれたダンスを断れなかったらしいが、例の神託のおかげで、家族と踊るだけでダンスの時間は終わるそうだ。それは地味に有り難いかもしれないな……。


「皆様、私の成人を祝うために集まって下さり有難く存じますわ。精霊導師として、今後も活動していくことになりますから、皆様の変わらぬお力添えを宜しくお願いします」


と、私の挨拶は簡単に終わり、拍手の後、宴が始まった。


今回は基本的に、央公をはじめ、体制派の領主達が参加している他、政府の主要な関係課長や私的に関係の深い方達が来ている。人数制限を行った結果ではあるが、お兄様の時とは違い、同年代があまりいないため、友達がいないように思えて微妙に悲しい所だ。


というところで、その様な方達からお祝いを頂いた後、お父様、お兄様、お祖父様とダンスを踊って、歓談の時間となった。会場を歩きながら、声を掛けたり掛けられたりしながら時間を過ごす。


「改めて、成人おめでとう。侯爵も言っていたが、貴女の美しさは『ステアのアルフラミス』と言うべきだな。宰相府でも、貴女が来た時は、皆仕事の手が止まってしまうのだ」


「オスクダリウス殿下、お褒め頂き有難く存じますわ。しかし、お仕事の邪魔となるようでしたら伺わない方が宜しいでしょうか?」


「いや、それは困る。昇降機や自動階段の仕様、空動車の改良、飛行兵団の運用や兵装など、貴女の助言が無ければまとまらなかった。貴女が忙しい中頼るのは心苦しいところだが、引き続き宜しく頼む」


「承知致しました。引き続き、伺わせて頂きます」


オスクダリウス殿下は、予定通り宰相府の特別補佐官となり、重力魔法に関係した技術を社会に普及させる仕事を主に行っている。


それと、空動車部隊である飛行兵団の初代団長に就任した。これは通常ありえない人事だが、ワターライカ沖海戦での実績を踏まえてのことらしい。団長に相応しい人材を育成するまでは、団長を兼務するそうだ。


それはいいのだが……あの海戦以降、殿下からはかなり強い好意の視線を感じる。ライスエミナ様のこともあるし、あまり深入りしたくない所だ。殿下は臣籍降下の際に併せて結婚するそうなので、それまでには結論を出しておかないとね……。




「騎士団長夫人、私の為に来てくれたのは有難いのだけれど、身体は大丈夫なのかしら?」


「ええ、お嬢様の行っている部分身体強化を応用すると、ほら、問題ありませんし」


「もう……元気な子を産んで頂戴ね」


「承りました。そして、いずれは剣を教えたいので、その際は御指南を頂きたく存じます」


「貴女や騎士団長が教えれば十分だと思いますが……何か助力出来ることがあればそう致しましょう」


レイテアは妊娠中で、現在はかなりお腹が大きいが、それでもいつも通りに振舞っている。私の使っている部分身体強化を応用したと言っているが……それはそれで流産などの事故を防ぐために有効な気がするな。


何せあの状態でも、対戦は控えているが鍛錬自体はしているし、騎士学校で教育を行っている。夫婦仲も良好で、たまに休日に遊びに行くと、大体一緒に鍛錬をしている。良い事だ。




「セントラーク男爵、お忙しいところ来て頂いて有難うございました」


「いえ、いつもお世話になっておりますし、いつもに増して美しい今日の貴女のお目に掛ることが出来ただけで、何物にも代え難い時間です」


ヴェルドレイク様はこう言っているが、ワターライカ島関連の魔道具の設計に加え、通常業務でも色々やっているらしいし、その上通信機(仮称)も試作段階に入っているようだ。才能があるのはこれまでの業績で解っているが、それでも無理はしていないだろうか?


「非常にお忙しいと伺っておりますわ。お体には、気を付けて下さいな」


「日々充実しておりますが、自身の体調管理にも気を配りましょう。差し当たっては貴女との語らいが、一番体調に良さそうです」


「ふふ、そうですか。そう言えばあの時……」


それから暫くヴェルドレイク様とワターライカ島開発の際の思い出話などをしていた。




その他、精霊課長や、他の魔法省の課長達も改めてやって来て、歓談などを行っているうちに、宴が終了し、皆が帰って行った。そして暫く休んだ後、家族だけの誕生会となった。


「では、フィリスの15才の誕生日、そして、成人を祝おう」


そして皆から改めてお祝いの言葉を貰った。


「父上、母上、お祖父様、お兄様、お祝い頂き、有難うございます」


と私がお礼を言って、夕食が始まった。今日はアルカドール牛ステーキや、そばなどが出て来ている他、私がリクエストしたチョコレートケーキが出ていた。今回のケーキは、ブッシュ・ド・ノエルに似ている感じがするが、こちらではクリスマスは無いので、特に気にせず美味しく頂いた。


夕食の後は、皆がプレゼントを渡してくれた。お兄様の時は装備一式だったが、嫡男ではない私の場合、特に決まっていないため、各々からプレゼントを頂いた。


お父様からはティアラを、お母様からはイヤリングを、お兄様からはチョーカーを、お祖父様からはブレスレットを頂いたが……恐らくお揃いなので、談合の結果だったのだろう。少し席を外し、皆のプレゼントを装着して改めてお礼を言うと、喜んでくれた。


誕生会が終わって自室に戻り、姿見の前で改めて自分を見てみたが、やっぱり大人になったな……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

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宜しくお願いします。


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