第293話 戦勝と領土獲得の祝宴が行われた
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予算審議や、政府の全体定例会議も問題無く終了した。
それと、前に連絡を受けていたが、お父様が王都にやって来た。来年国防大臣になることが決まったので、その引継ぎやその他諸々の調整を行うためだ。帰りは私と一緒に転移門での移動だが……まあ、各領主との会談は往路だけで十分だからね。
お父様には、ワターライカ島や、ナビタンを現在うちで預かっている件などを報告した。
「成程。島を誕生させた話は概要を聞いていたが……噴火の被害を最小限にした上、領土が増えるなら、良かったではないか。それと、その獣人族の子供については、外務省を通じて引き取り手を確認しよう。引き取り手が現れない場合は……複数属性者であることを鑑みると、引き続き当家で預かった方が良いだろう」
「承知致しましたわ」
12月に入り、カラートアミ教本部において、ウェルスーラ国との交渉を行っていた外務省担当者から速報が入った。ロイドステア国がワターライカ島を領土とすることを漸く認めたのだ。
その数日後、戦勝とワターライカ島の領土編入の祝宴が開かれた。
私は、ワターライカ沖海戦に直接参戦したわけではないが、そもそもの発端であるワターライカ島を誕生させたということで、主役の一人になってしまった。他の主役は、当然オスクダリウス殿下と海兵団長だ。祝宴自体は実施が決まっていたから、いつでも参加出来るがごとく準備していたが……殿下達と同列に並ぶのは正直気が引けるな……。
私達主役は、全員入場後に入場し、陛下以下、王家の方々がいる壇上へ上がることになっている。控室に待機していると、オスクダリウス殿下が話し掛けて来た。
「ふぃ、フィリストリア嬢、今日も美しいな。盛装が、良く似合っている」
何故か照れながら私を誉めてくれるオスクダリウス殿下だが……まあ、普通に対応しよう。
「お褒め頂き、有難く存じますわ。オスクダリウス殿下こそ、救国の英雄に相応しい出で立ちでございますわ」
「あ、ああ、有難う。だが、私などは、貴女を含め、数多くの者達の御膳立てに乗っただけだからな」
「それでも、殿下は自らの意志で、努力して得た実力をもって、見事に乗りこなされました。殿下がいらしたからこそ、この国は救われたのですわ」
「貴女にそう言って貰えて、本当に嬉しい。今後も、力を貸してくれると有難い」
「承知致しましたわ」
そのような話をしていると、侍女が呼びに来たので皆で移動し、会場に入った。皆の拍手の中、壇上で陛下に礼をする。
「皆の者、本日は良く集まってくれた。只今から、ワターライカ沖海戦の勝利、並びにワターライカ島の領有を祝う会を執り行う」
陛下が宣言すると、大きな拍手が起こった。その後は功績の紹介があり、私達の一言も終わり、祝宴が始まった。国内の主要な貴族、参加している大使の方々との挨拶を行っていく。
特に、戦勝の最功労者であるオスクダリウス殿下に対しては、一層畏まった挨拶をする。何せ、無敵艦隊とも呼ばれたウェルスーラ国海軍を、技術的奇襲の上であったとは言え、圧倒的な数の差を覆して殲滅したのだから。
もし、国内の政治状況が数年前と同じなら、オスクダリウス殿下は王太子殿下の対抗馬として持ち上げられていたと思うが……現在は、改革派が弱体化しているから、そういった雰囲気にはならない筈だ。そういった意味でも良かったよ。
挨拶も終わった頃、帝国大使のカルロベイナス第2皇子が近付いて来た。
「改めて、戦勝と領土獲得をお祝いする。だが、貴女の美しさには、誰も勝てぬだろう」
「まあ、お祝い頂けた上に、私にまでそのようなお言葉を頂けるとは、有難く存じますわ」
「真実だからな。それに、貴女が参戦しても良かったのではないか?」
「出過ぎた真似は、新たなる不和を招きます。今回は、これが最善でしたわ」
「それは、この国が貴女を擁するには小さいからだ。我が国であれば、存分に活躍出来るだろう」
「私は活躍を望んでおりませんわ。極めたいものがございますので」
「……ふっ、そうか。だが、そちらにおいても、我が国は多くの人材がいる。無論、私も協力させて貰おう」
「非常に魅力的な申し出ですが……私がこの国から出る理由にはなりませんわ」
「それは残念だ。だが、我が国は何時でも貴女を迎え入れる準備があることは忘れないで貰いたい。では、失礼する」
第2皇子は去って行った。まあ、確かに彼を始めとする帝国の猛者達と対戦してみたいとは思うのだけれど、それだけを理由に家族や友人達と離れるのは嫌だし、私が極めたいのは合気道であって、戦いではないのよね……。
そういえば、他の主役達は別の所にいるな……海兵団長は、国軍の主要な人達と豪快に話し合っているし、オスクダリウス殿下は……ライスエミナ様と話している……というか、ライスエミナ様が近付く令嬢達を威嚇しているように見える。あれは、私も近付かない方が良さそうだ。ふと、オスクダリウス殿下と目が合ったが、殿下は少し悲しそうな目をしていた。
さて、私は変な人に絡まれる前に、お父様の所にでも行こうか……と思ったところ、誰かが私に礼をした。
「まあ、セントラーク男爵、今日は良き日ですわね」
「導師様、此度は海底火山噴火を終息させたばかりか、巨島を我が国の領土と成され、この国にとり多大な貢献をされましたこと、誠に喜ばしい限りでございます」
と、ヴェルドレイク様が挨拶に来てくれた。そういえば、最近はワターライカ島関連で忙しくて、会ってなかったな。
「そう仰って頂けると光栄ですわね。研究の方は如何かしら?」
「新しい魔道具については、雷素の研究をある程度行ってから取り掛かることに致しました。導師様から賜った法則などをまとめ、検証するのが面白くて、つい時を忘れてしまいます」
「まあ。興味を持って頂けたのであれば、協力させて頂いた価値はありますわね」
「誠に有難く存じます。故に、研究は長引きますが、その分、ワターライカ島開発のための魔道具検討もさせて頂くことになりました」
「では、ワターライカ島開発計画集団に加わるのでしょうか?」
「はい、その通りです。宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いしますわ」
その他、ヴェルドレイク様とは、電気・電子の性質などについて話したりした後別れ、私はお父様の所に顔を出した。お父様は、現在の国防大臣である前イクスルード侯爵、つまりダリムハイト様の祖父に当たる方と話をしていた。
「お話が盛り上がっていらっしゃるようですわね。宜しいでしょうか?」
「おお、導師殿。今後国軍は変革していくのでな。貴女の父君にも話をさせて頂いていた所なのだ」
「予算審議を聞いていただけでも、飛行兵団の創設や、海兵団の海軍化など、非常に興味深い内容がございましたわね」
「ああ。何とも大変な時期に後任を引き受けてしまったようで、今から頭が痛いよ」
「しかしお父様は、これまで領の産業振興などを手掛け、今や国中の注目を集めるまでに成功させた方ですもの。国軍の変革も、必ずや成し遂げて下さいますわ」
「娘にそこまで言われては、やらざるを得んか」
そのような感じで楽しく話しているうちに、祝宴は終わりを迎えた。
それから私は、ワターライカ島の開発を主な業務として過ごし、2年と4か月の月日が流れた。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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宜しくお願いします。
暫くは島の開発が主体となり、大きなイベントが入れ辛くなっていたため、時を進めました。次の話は、2年間の回想のようなものになりますので、ご了承下さい。