第292話 無事予算審議が行われた
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ワターライカ島の開発を滞りなく進めているうちに、予算審議、正式名称で言うと「ロイドステア国貴族議会1523年予算審議」が開催されることとなり、私は予算審議の方に参加した。今年も例年通り6日間で実施されるようだ。
予算審議初日、総務省と財務省関連事業の審議だ。
まずは総務省からだが……私にも関係していそうなのが、来年の行事や式典の予定、サウスエッドとの人材交流やセクハラ対策の推進かな。
財務省は……今年も私に関係する事業は無かったな。
審議2日目、外務省と国防省関連事業の審議だ。
外務省は……予算審議自体には関係無かったが、現在行われているウェルスーラ国との交渉の概要についての話があった。まずは今後陸上戦力での戦争に発展することは無く、海戦のみで終結するようだ。
船同士の戦闘については、領土が関係しないことから、基本的に賠償は発生しないらしいが、今回の海戦の原因であるワターライカ島の帰属については、我が国の領土と認める流れで進んでいるそうだ。まあ、実効支配が進んでいるからね……。
ロイドステア包囲網が作られるかどうかは今後の情勢次第だが、それを防止するため、各国にも書簡を送っているそうだ。当座の大規模な戦争は回避できそうで良かったよ。
国防省の方は……「魔法戦力を活用した戦闘要領の検討」を更に推進するそうだが、空動車関連については「飛行兵団の創設」という独立した新規事業が提起された。これは、先日の空動車の活躍により検討されたもので、当初の運用構想であった魔法兵団の一部ではなく、独立した部隊にするというものだ。
任務に関しては、敵陣の縦深への攻撃や、偵察、連絡、輸送など様々なものを検討しており、任務の重要性や多様性を考慮した結果、魔法兵団の枠に収まらないため、独立部隊でないと運用が厳しくなるということだった。
当面は二人乗り空動車のみを導入するが、重空動車なども導入する予定だそうだ。また、団員については、魔法兵団の地魔法兵のみならず、騎士団や歩兵団からも地魔法が使える者を集め、養成して行くそうで、新編業務はかなり大変らしい。
審議においても、先日の戦いから重要性は認識するものの、かなりの予算増だったため、議論が過熱しすぎて一時中断するといった場面もあり、審議がかなり長引いたが、結局来年については「飛行兵団の創設準備」ということで落ち着きそうだ。
その他については、今年度は延期された、国軍総合演習やサウスエッドとの共同指揮所演習については、規模は今年予定したものと同等だが、空動車の運用についても加えて行くという話だった。まあ、それは仕方ないのかな。
それと、今後の情勢次第では、サウスエッド国と同様に海兵団を海軍化する可能性もあるようだ。ただし、我が国の造船技術はウェルスーラ国やサウスエッド国より低いので、技術発展にもよるということだ。
審議3日目、今日が本番だ。
とりあえず建設省については、私も参加するワターライカ島の開発がある。大まかな実施項目と必要な予算について提起されたが、これについては既に一大国家事業として認知されており、また、今後の利益も莫大なものになることが予想されるため、財務省側からも追加の予算に関する意見が出るくらいに順調に進んだ。
その他、本来であれば工事を増やす予定だったのだが、ワターライカ島開発の関係で、来年の工事は今年並みということになった。まあ、精霊術士の支援については、問題無いと思う。
さて、魔法省関連事業の審議だ。
まず、魔法教育については、来年は全ての領が改正された教育要領の対象となり、新しい体制に移行する。人材面では、やはり今後も継続して募集していくようだが、教材面は西公領で安価な紙が大量に作られており、来年で必要分は配布可能らしい。
魔法課については、来年は光魔法の教本を作るそうだし、新しい魔法の更なる普及を図るようだ。
魔道具課は、重力魔法やその他の新魔法の魔道具開発を進めるようだ。ヴェルドレイク様が研究している、無線機のような魔道具は研究が進むだろうか……?
また、魔法兵課については、引き続き魔法兵操典の改正を進めるとともに、飛行兵操典の研究に取り掛かるそうだ。相変わらず、あの課長は時流に乗るのは上手いな。
精霊課は、今年の精霊術士集中鍛錬とその後の鍛錬施設の使用により、魔法強化が可能な精霊術士が増えたため、各領巡回助言の他、ワターライカ島の工事支援などにも十分対応できる体制だ。なので、主要な事業としては、今年同様の各領巡回助言のみとなった。
来年も私は、遠方の7領を担当するが、流石に来年は、私もワターライカ島開発に携わっているためか、全ての領の巡回助言を私にやらせる……という話は出なかった。
なお、精霊課の事業とは直接関連が無いが、国防省から質問が上がった。飛行兵団の創設に当たって、最低でも風の精霊術士が編成される必要があるが、対応可能だろうか、という内容だった。
確かに先日も、リゼルトアラの誘導があってこそ空動車隊が活躍出来た、という実績があったし、風の精霊術士は工事の支援が無いため、地や水の精霊術士に比べて余裕がある。精霊課長は、基本的には対応可能だが、人数は今後調整させて頂きたい、と回答していた。
審議4日目、商務省と農務省関連事業の審議だ。
商務省については、研究関連の精霊術士への支援要請は変わらなかったが、例のカーボンナノチューブとグラファイトの複合素材の研究が「新素材の研究」という新規事業として挙がっていた。
どうやら、それっぽいものが少量作れたそうなので、今後も研究して、空動車の車体への利用や、その他装備品、農工具などへの活用を考えているそうだ。
なお、最近私がワンボックス型空動車を良く使っているので、王家や上級貴族家もワンボックス型空動車を持ちたいと言っているそうで、もしかすると私に製作依頼が来るかもしれないが……流石に私も、あれを作る作業に従事し続ける気は無いから、早く実用化を成功させて欲しいものだ……。
農務省については、私個人への品種改良の支援要請が継続している。それに加えて、さつまいもや米の普及をしていくらしい。
さつまいもは痩せた土地でも育つため、イクスルードだけでなく、ディクセント領やオクトウェス領などにも奨励していくそうだ。
また、米については、作付面積当たりの収穫量の多さや小麦の生産に不向きな地域での生産を検討しているらしい。なお、テトラーデ領については、シーラ村以外にも田んぼを作る場所を選定している、とマーク叔父様からの手紙に書いてあった。
あと、カイコ関連だが、ヘキサディス領での育成が進み、今後は糸や織物の職人を招聘して、どのように布や服を作っていくか検討するそうで、アブドーム国で作られた織物なども参考にするようだ。
審議5日目、法務省と宰相府関連事業の審議だが……。
法務省は全般的には関係ありそうな無さそうなという感じだったが、ワターライカ島関連で、領地に関する法令の改正を行うそうだ。確かに、これまで無かったわけだから、追加しないとね。
宰相府については、海底火山対策の為に計上していた予算が余ったため、それをワターライカ島開発予算に充てる方向で進めるそうだ。財務省としても有難いだろうな。
それと、来年には特別補佐官が宰相府に置かれることになった。これは既に陛下から指示が出ているため、特に予算上の質疑も無く進められたが、以前重力魔法活用会議の際にあった、オスクダリウス殿下が特別補佐官に就任するという話だ。
ただし、今回の話では、重力魔法の民生への活用以外にも、飛行兵団関連の業務が入って来るそうだ。これは、空動車隊長としての実績が買われたということかな。
そして最終日、陛下が予算案を承認する日だが……魔法省関連ではご下問は無かった。また、今回新たな領土としてワターライカ島が編入されるため、開発を進めて国家としての更なる発展を目指す、と仰っていた。私も頑張らないとね……。
ということで今年の予算審議も無事終了した。ただし、今後暫くはワターライカ島の開発が主な仕事になるから、年末年始休暇以外は、のんびりとは出来ないだろうね……。
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