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第289話 妖精族の建国祭 1

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ワターライカ島を巡るウェルスーラ国との海戦が集結し、王都の生活は、基本的な所では元に戻った。


外務省は、ウェルスーラ国との交渉や、ロイドステア包囲網の形成を阻止するため各国との調整に入ったりと非常に忙しく、また、国防省や国軍総司令部なども、今後の国防政策に関して今回の教訓を取り入れた上で11月末の予算審議に反映させるため、多忙になっているようだ。


一方、サウルトーデ領などの災害復旧については目途が付き、国軍は撤収して、以降は各領で復興して行くらしい。そして、ワターライカ島の開発についても、ロイドステアの領有に他国がケチを付けないよう、国家の威信を掛けて進展させていくことになった。


精霊達のおかげで、本来ならば数十年後に開発を始め、そこから更に数十年単位で開発が必要となったところ、数年で入植が可能となりそうな感じなので、商工組合や国民の関心も高いらしい。


島の開発には、建設省を主管としたプロジェクトチームが結成されることになり、ここに私も加わって現地の整備と意見提出を行うことになった。私の当面の仕事は地下水脈の形成と植林かな。




11月に入り、合同洗礼式に併せて精霊視を持つ少女を確認した……のだが、何と、3名も候補を発見することが出来た。また、以前報告に挙がっていたイクスルード領行政官ケイルノーバ男爵の娘さんであるアナフィーテが、精霊術士となったので、挨拶にやって来た。


「アナフィーテ・ケイルノーバと申します。導師様、今後のご指導ご鞭撻、宜しくお願いします」


「こちらこそ、宜しくお願いしますわ、アナフィーテさん」


それからアナフィーテ、愛称はアナと言われているらしい、と少し話をしたが、特に受け答えに問題は無さそうだった。魔力も精霊術士としては高めでアンダラット法も習得しているそうだし、後は仕事に慣れて、周囲の人達と仲良くなれれば、大丈夫だろう。


月末には、ウェルスーラ国との交渉もまとまりそうなので、祝宴の準備が進められているそうだ。まあこちらは淡々と参加させて貰おう。


他にも、サウスエッド国との人材交流……に名を借りた王太子妃殿下の里帰り? も行われた。今回については、本来は共同指揮所演習を行う予定であったところ、予定が変更された一因である、ウェルスーラ国への今後の対応について話し合うため、国防大臣なども一緒に移動した。流石に日帰りとは行かず、歓迎の宴なども開かれていたが、こちらは淡々と参加させて貰った。


なお、ウェルスーラ国への対応の方向性に変更は無いが、あちらの海軍の勢力が大幅に減少し、その復活にはかなりの時間と予算が必要なため、この機にサウスエッド国は交易を主体とした海上での活動を活発化させるそうだ。高い技術力を生かして大型船舶を建造し、新たに海軍を創設しようと考えているらしい。


ただし、軍艦の兵装について、ロイドステアの魔法などに関する知識を借りたい、ということであったので、一旦持ち帰って魔法省とも相談することになったようだ。


前世の話で言うなら、火薬の発明から、大砲などが作られて船に搭載されていたのだけれど、この世界は火薬が発明されていないし、魔法が利用されているわけだから、魔法をベースにした何かを発明するのだろうか。案は無いことはないが、この件については暫く様子を見よう。




第2週に入った。魔法省自体は月末の予算審議の準備で忙しいが、私については重要な仕事がある。それは、妖精族の国、ウォールレフテ国の建国祭に参加することだ。一応外務省からも、国際交流課長以下数名が同行するが、今回は私が特使に任命されている。まあ、ウォールレフテがそういうお国柄だからね……。


なお、ウォールレフテ国からは、大使としてパットテルルロース様が駐留しているが、ロイドステア国側はウォールレフテ国駐留大使が常設されていない。以前はウォールレフテ国にも駐留大使がいたのだが、寿命の長さが違うことなどからトラブルが発生したらしく、現在は必要の都度外務省の担当者が対応しているという状況だそうだ。


迎えに来た妖精族の人達と一緒に出発した。以前訪れた時と同様、転移門の起動は妖精族側が行っている。私がやってもいいのだけれど、あちらの厚意なので、そのままやって貰うことにした。今回は、導師服で訪れている。まあ、ベースが妖精族の民族衣装らしいから、今回はこれ以上の衣装は無いだろう。


以前と同様に、転移門のある小屋の扉を開けると、森で囲まれた中に木製の家々や、誓約の樹、通称大樹が見えた……が、何やら大樹にキラキラ光る物が沢山付いているような……?


「ああ、あれは建国祭に伴い、大樹を飾っているのです」


案内している妖精族の人がそう答えてくれた。建国祭は、大樹の根元の広場で行うそうだが、広場に入れるのは主要な人々だけで、殆どの国民は入れないそうだ。なので、自分が懇意にしている精霊と感覚共有をして、様子だけ見るという人も多いらしい。なるほど。


暫く歩いた後、以前の様にクーリナルルドース様の所に案内された。国際交流課長以下は実務のために席を外し、私だけがクーリナルルドース様に挨拶をした。


「フィリストリア殿、久しいな。貴女の偉業は弟や精霊女王様から色々聞いている。先日は大精霊殿達と巨島を誕生させたそうだな。流石と言えば良いのか、悩むところだがな」


「あれは海底火山の噴火を終息させようとして行ったことですわ。大精霊殿達に御力添えを頂き、誠に幸甚でございました」


「それも貴女に強い意志と力が無ければ成立しなかった。以前も強大な魔力を持っていたが、今は数段大きく、しかも更に自然との調和が成されている。いやはや、末恐ろしいな。それに、以前は着ていなかったその服も、良く似合っている。確か先代であるエスメターナ殿も着ていたな」


「お褒め頂き光栄ですわ。精霊女王様や四龍様、繕ってくれた精霊達には、日々感謝しております」


「それが良かろう。さて、明日の建国祭だが、どこまでご存じかな?」


「ロイドステア国にございました資料は一通り目を通しておりますが……もし宜しければ、ご教授頂ければ、有難いですわ」


「では、これから夕刻まで、一通りお教えしよう」


そう言って、クーリナルルドース様は、誰かを呼んだ。司祭の様な雰囲気をした壮年に見える男性だ。


「おお、今代の愛し子様。お初にお目にかかる。儂はフロアトトリースの子、ヨルドナナラース。今回の祭りの纏め役などをさせて頂いておるが……愛し子様には是非、祭りのことを知って貰いたいと思っておりましてな」


それから、ヨルドナナラースさんに別室で建国祭について色々教えて貰った。祭りについては、最初にクーリナルルドース様が精霊女王様と大樹に感謝の言葉を告げてから開始を宣言し、皆で集まって飲食し、また、大樹の元に集った11組の男女の話を劇にして舞台で見たりするそうだ。


そして、この建国祭の時は、大樹周辺で奏でられた楽曲が、共鳴の様に会場だけでなく色んな所で聞こえるらしく、それに合わせて多くの妖精族が仲間や精霊達と踊り明かすらしい。なお、今は季節としては冬で、例えばアルカドール領などはかなり雪が積もっている筈だが、大樹の近くでは年間を通じ、他国に比べ寒暖の差が少ないそうだ。なので夜でもかなり暖かいらしい。


妖精族は、大樹から生まれた魂が体に入り、人が生まれると考えているそうで、多くの妖精族は、この祭りの時に授かる子が多いらしい。それは別の要因かもしれないが……それを言うのは野暮というものだ。


その他、建国祭の時は、いずれかの大精霊が顔を見せるそうで、何かしらの祝福をするそうだ。なお、私についても、何か祝辞を言って欲しいらしい。まあ、特使だしね。




そんな感じで色々興味深い話を聞いていたところ、ノックがあり、以前も見た妖精メイドが入って来た。どうやら、夕食の準備が整ったので、呼びに来たようだ。


ちなみに妖精族は、あまり身分の差というものは考えていないそうで、夕食は国際交流課の人達や、護衛のテルフィも一緒に取った。テルフィはかなり抵抗があった様だが、郷に入っては郷に従え……は交流を深めるには必要なので、我慢して貰おう。


夕食の際も、建国祭の話題は続いたが、ヨルドナナラースさんの娘さんが、11組の男女のうち、主導的な役割を持つ女性、要は主役を演じるらしく、クーリナルルドース様曰く、期待しているそうだ。


ヨルドナナラースさんは、家柄で選ばれたような感じで話していたが、話を聞く限り、娘さんは非常に練習をしていたらしい。明日は楽しみにさせて貰おうかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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