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第283話 海底火山が噴火した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

10月に入った。特に差し迫った業務も無く、書類を読んでいた所、突然庁舎が揺れた。


「きゃっ!」


この世界で地震は珍しい。久しぶりだったし、前世での死因を思い出して驚いてしまったが、それほど揺れなかったので被害は無かったし、すぐに落ち着いた。もしや、今起こった地震は……


『愛し子~! 急いで大精霊様の所に来て!』


地震が発生した直後、火精霊が私を呼びに来た。


「火精霊さん、大精霊殿が私を呼んでいるのかしら?」


『そうなんだ! 海の底が噴火したんだ! 転移して連れて来るよう言われた』


精霊は、決まった地点や大精霊のいる所に転移出来ると以前聞いた。恐らく、噴火の対処のため、私を緊急に呼び出しているのだろう。


「少々お待ち下さい。着替えて宰相閣下に報告してから向かわせて下さいな」


と言って、素早く導師服に着替え、宰相閣下の所に向かった。庁舎内は、先程の地震のためか慌ただしかった。


「宰相閣下、危急の用件にて、失礼いたしますわ」


「おお、導師殿、やはり噴火が始まったのか?」


「そのようですわ。火の大精霊殿が私を呼んでおります」


「むうっ、どのように移動するのだ?」


「精霊に転移させて貰い、直ちに現地に向かいますわ。許可をお願いします」


「許可する。被害を最小限に食い止めて貰いたい。細部は任せる」


「承知致しました。こちらでは、各所への連絡をお願いします」


「判った。気を付けよ」


宰相閣下と最小限のやり取りを行って、火精霊に転移させて貰った!


「っ! おっと」


転移した先で、少々体勢を崩したが、転ぶことは無かった……あれ? 周囲を見ると、海の様だけれど、上空に浮いている……? 重力魔法を掛けて貰っているようだ。また、少し先の海面から、物凄い蒸気が上がっている。そして……すぐそばに大きな気配が3つあった。


『愛し子よ、お初にお目にかかります。私は火の大精霊。宜しくお願いします』


『おう、お主が愛し子か! 初めましてかのう。儂は見ての通り、地の大精霊だ!』


『また会ったわね、元気かしら?』


火の大精霊は、何というか紳士風な感じで、地の大精霊は、体格の良いおじさんの様な感じの見た目だ。水の大精霊は、以前会った時と同じ、優しそうな大人の女性のような感じだ。


「火の大精霊殿、地の大精霊殿、お初にお目にかかります。精霊女王様の加護を賜りました、フィリストリア・アルカドールです。水の大精霊殿、いつぞやはお世話になりました。こちらは元気ですわ」


『もっと気楽に語り合いたい所ですが、見ての通り、海底火山が噴火しています。今回お呼びしたのは、あの火山の処置について、どう処置するか要望を聞くためと、処置の際に助力して頂くためです』


「成程、承知致しました。ところでお聞きしたいのですが、要望を聞く、とは?」


『ああ。あの火山、儂と火ので調べたが、岩漿が溜まっておるようでな! このまま放っておけば10数年はこんな感じで噴火をくり返すだろう。だが……それはお主たちも望まぬだろう?』


「ええ。可能な限り、早期に事態を収拾したいと考えております」


『結構海域も荒れるし、今だって海の生き物の多くをこの海域から避難させているから、私としても早く噴火が終わって欲しいのよ~』


『そこで、現状では3通りの解決方法を考えております。1つ目は、今すぐに岩漿をこの場所で全て引き抜いてしまう、2つ目は、ここではなく、どこかの地面の上で噴火させる、3つ目は、岩漿を地中深くに潜り込ませることです』


「……それらを行うと、どういう結果になるのでしょうか?」


『1つ目を選べば、これからここに結構大きい島が出来るでしょう。2つ目を選べば、これからどこかの大陸に新たな火山が出来ます。3つ目を選べば、何年後かにどこか別の地に火山が生まれます』


……現状、予想が容易で、かつ最も被害を抑えるには、ここでマグマを出し尽くして島にするのがいいかな……そうだ、津波や海流の変化についても聞いておこうかな。


「ここに島を作る場合、津波が発生しませんか? それと、海流の変化が起こるのではありませんか?」


『それについては、私の方が調整して、いい感じにするわ』


「……では、ここに島を作ってしまう方向で、お願いします」


『承知致しました。では、私と地のが協力して、岩漿を引き出すとともに、地下深くの岩漿溜まりを圧縮して塞ぎましょう。出来ればその際、愛し子には私達のどちらかと同調して、力を貸して頂きたいのです』


「私が力を貸さなくても大丈夫なのではありませんか?」


『ここは海の上だからな! 儂と火のは中々全力が出せんのだ。そうだな……儂は地が海面近くに出ておるから、多くの同胞を呼ぶことで力を使えるが、火のはまだ今の段階では、同胞も僅かしか呼べん』


なるほど、火と地の大精霊は、海の上では力の発揮に支障があるわけか。恐らくは海底火山の場合、噴火して海面付近に火口が来ないと、対応が難しいのだろう。話からすると、私は火の大精霊と和合した方が良さそうだ。


「では、私は火の大精霊殿と、同調致しますわ」


『そうですね。宜しくお願いします』


こうして私は、火と地の大精霊と協力して、噴火を終了させることになった。水の大精霊は、津波を防ぐとともに、噴火が終わった後、海流を整えたりするらしい。


『では、始めましょう』


【我が魂の同胞たる火の大精霊よ。我が願いに応じ、共に在らん】


『我は火の大精霊なり。其の願い、聞き届けた』


すると、赤い光の奔流が私を飲み込んだ! 意識が燃え広がっていくような感じに一瞬驚いたが、暫くすると、体の感覚が……確かに、海底から更に深く、大量のマグマが溜まっているのを知覚した。また、地の大精霊は、地精霊達を呼んだらしい。噴火した辺りから、何十、何百の地精霊が飛び出し、地精霊の所に集まって来た! 何だか壮観だな……っと、では、私と火の大精霊は、マグマを引き抜く役だね。


「では、参りますわ! やあぁーーーーーーっ!」


『同胞達よ、いくぞぉーーーーーーっ‼』


その瞬間、海底から凄まじい量のマグマが飛び出した! マグマはみるみる海面に広がり、大量の水蒸気が発生している。地の大精霊達も、力を合わせてマグマ溜まりを閉鎖しているようだ。それに合わせて、地盤自体も隆起し始めたように見える。そして、地盤が動くことで、地震が発生しているが、水の大精霊が津波の発生を抑えてくれているようだ。これなら心置きなく力を使える。よし、どんどん引き抜くぞーーっ!




……1時間程して、漸くマグマ溜まりからマグマを概ね引き抜けたことが知覚出来た。地の大精霊の方も終わったようなので、和合を解いた。一瞬落下しそうになるが、やはり重力魔法が掛かり、落下はしなかった。どうやら地の大精霊が掛けてくれているらしい。


「地の大精霊殿、有難うございます。それにしてもこれは……」


『うむ、結構大きな島が出来たようだな! はっはっはっ!』


……と、地の大精霊は言ったが……ちょっとこれ、大きすぎないか? 100kmくらい先まで地面が見えるんですけど! 大丈夫かこれ……。


『仕方ありません。大量の岩漿が溜まっていたのですから』


『まあ、調整は少々手間だけど、数日あれば大丈夫よ~』


……まあ、大精霊達もこう言っているし、作ってしまったものは仕方がない。問題はこれからの話だ。とりあえずは帰って、新しい島が出来た事を報告しないとね。


「火、水、地の大精霊殿、海底火山噴火の対処に協力頂き、有難うございました。私については、これから戻り、報告しなければなりませんので、失礼させて頂きます」


皆にお礼を言って、空動車を出して立ち去ろうとしたのだが、地の大精霊に話し掛けられた。


『愛し子よ。沢山の同胞を呼んだので、折角だから暫くはこの島で何かさせようと思うのだが……何かやって欲しい事はあるか?』


それは願っても無い申し出だ。今は溶岩の塊だから、人が住めるようにある程度手を加えて貰おうかな?


「……では、こういう感じの島にして頂ければ、助かりますわね」


と、色々地の大精霊にその場で考えた要望を伝えた所、快諾を貰った。これでこの島の開拓も進むだろう。私は改めて3体の大精霊にお礼を言って、王都へ戻った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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