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第279話 研究用田んぼから米を収穫した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

朝食後、出勤前にお父様達をアルカドール領に送った。お父様とお兄様は用事が終わって帰るだけだったし、お母様は元々の予定に無かったので、早めに帰らないといけないからね。


ちなみにお母様は、美肌魔法の効果で非常に美しい状態を保っているため、話題の的だったようだ。特にビースレクナ侯爵夫人であるレーナ叔母様など、頻繁に手紙をやり取りしているためか、事情は知っていたらしいが、美肌魔法の効果を目の当たりにして、アルカドール領に観光に行く事を即決したらしい。冬に入る前なら、トンネルを使えば4日で移動出来るからね……。


他の方々も来る可能性はあるそうだけれど、アルカドール領は基本的に遠いから、簡単には決められなさそうなのが残念だ。




今週は個人的に一大イベントがある。稲の収穫を行うのだ。


毎週のようにシーラ村に視察に行って地精霊に様子を確認して貰っていたし、前世では収穫の時に近所の田んぼの手伝いをしていたが、その時と同様に育っているので、問題無いだろう。


それと、現在使っている麦用の農具を改良して、精米まである程度簡単に出来るようにしているので、そちらも試して貰わないとね。


稲は収穫してから暫く干して乾燥させないといけないから、精米が終るのは、今の所の予定では8月1週の終わり頃だ。お米の美味しさを知って貰うため、収穫したお米は、作物研究所とテトラーデ伯爵であるマーク叔父様の所に一部提供することになっている。


作物研究所は現場に来ている担当者に渡せばいいけど、マーク叔父様については、そのままテトラーデ伯爵邸まで空動車で移動して渡そうと思っているので、手紙に書いて知らせておこう……。




収穫の日となり、作物研究所の人を連れて空動車でシーラ村に移動した。現地の農作業員に交じって、テトラーデ領の行政官も来ている。叔父様に手紙で状況を教えていたから、念の為に来ているのだろう。私は農作業員の長に、作業を依頼した。


「では、これから収穫作業を行って貰います。要領は資料に記載した通りですわ」


「あの『こめ』を刈り取って、まずは来週まで干すのでしたな。その辺りは小麦も同様ですから問題無いのですが……脱穀の要領が、新しい農具を使うため、良く解らないのです」


「それについては来週改めて説明致しますわ。刈り取りについては、問題ありませんか?」


「天候も大丈夫ですし、張っていた水も2週間程前から抜いていて、ぬかるみも殆どありませんから、作業には問題ありません」


「では任せますが、宜しいかしら」


「はい、お任せ下さい」


それから農作業員達は、鎌を持って稲を刈り始めた。特に問題は無さそうだ。研究所の人は、紙に何かを書いている。行政官は、土地当たりの収穫量を確認しているようだ。


「導師様、この『こめ』という作物、土地当たりの収穫量は、小麦より多そうですな」


「ええ、行政官殿。小麦より手間はかかるかもしれませんが、米を作るのも面白いですわよ」


「我が領は、雨が比較的多いためか、小麦の栽培はそれほど向いておりません。この『こめ』の方が向いているかもしれませんな。検討してみます」


出来れば本格的な生産を検討して貰いたいが……それはともかく、稲穂が刈られていくのを見るだけでも、何となく嬉しいものだ。


今回の収穫は作業人員に比して作付面積が少ないため、半日で終了した。刈り取られた稲穂は稲架掛けを行い、例の鳥除けを近くに置いて、その日は終了した。




月末の省・全体定例会議は特に大きな内容は無く、終了した。




8月に入り、まずは恒例の合同洗礼式に併せて、精霊術士候補を確認したが、今回は残念ながら精霊視を持つ少女はいなかった。




そして、個人的には待ちに待った、脱穀~精米の作業を行う日となった。2日掛けて行われ、作業終了後はマーク叔父様の所に行くので、週末に設定させて貰った。


ということで早速空動車を使ってシーラ村まで移動した。今回については、試作の農具を試して貰うので、当初に皆を集めて説明した。まずは脱穀機だ。外見は、足踏脱穀機に似ているが、足踏みでなく、水路に設置した水車の回転を利用して自動的に回転するようにしている。


「この回転している部分に稲穂を当てて、脱穀を行うのですわ」


実際に刈り取って干し、乾燥させた稲を持って使ってみる。


「はえ~! このようなことが出来るんですね! 小麦の脱穀とは違いますが、こっちの方が楽ですな!」


こちらの世界は、小麦の脱穀の際は千歯扱きを使っていたそうで、それでも米の脱穀自体は可能だったが、どうせならということで、もっと楽に出来るものを考案してみた。足踏みで回転する機構は逆回転の防止がうまく行かなかったので没にして、代わりに水車を使ってみたが、何とかうまく作って貰ったわけだ。


何人かに使って貰ったが、千歯扱きとは違い、力が要らないので、好評の様だ。ちなみにこの脱穀機、小麦の方にも使えるので、作物研究所の担当者は、今回の試作品の使い勝手を見て、国内に広めようと考えているそうだ。


次に、脱穀機で集めた籾などを、唐箕のような農具で籾とそれ以外に分離したが、それは基本的に同じなので、特に質問は無かった。なお、この唐箕のような農具、前世の唐箕と何が違うのかというと、魔法で風を起こすところだろうか。なので、前世の唐箕より短時間で作業が終了する筈だ。


その次は、籾摺りだが……魔法で籾殻を除去するので「摺り」にはならないかもしれない。今回行うのは、地属性のものを引き寄せる魔法と、水属性のものを引き寄せる魔法だ。これらは基本的な魔法なので、既に魔道具の作成も容易で、魔道具版も作れるそうだが、今回は私もいるし、魔法で済ませることになった。


最初に私が米を作った時は、瓶型の容器に入れて棒を突っ込んで籾摺りをしていたのだが、作業が面倒なので色々考えた。精霊達に確認した結果、籾殻は単純な地属性で、米は地属性と水属性を持っていたため、試した結果、魔法で籾殻を引き剝がすことに成功したのだ。


ということで、私の目の前で、上から籾を落として貰い、右側と左側で同時に魔法を使うことで、籾が籾殻と玄米に分かれていく。


「これは……導師様でないと出来ないのではありませんか?」


「元は単純な魔法ですから、地属性の者と水属性の者が協力して行えば、可能だと思いますわ」


最後に玄米を精米する。少量であれば、容器に入れた玄米を魔法で擦り合わせると良いのだが、大量に行うのは難しいので、こちらも水車を使って精米することを提案させて貰った。




こうして、一連の動作を説明した後、作業に取り掛かって貰った。農具は幾つか作ってあったため、当初を除いて農作業員が手持無沙汰になることもなく、順調に精米まで進んだ。やったね!


精米が終了した後、米を持ってそのままマーク叔父様の所に向かった。今回精米したのは収穫した籾のうち半分で、もう半分については、来年用の種籾にするかどうかを行政官に検討して貰うことになった。




テトラーデ伯爵邸に到着し、叔父様に挨拶した後、調理場を借りて、米を使った料理を作らせて貰った。とは言っても、単にご飯を炊いたり、炒飯や炊き込みご飯を作るだけなので、単純作業は伯爵邸の料理人達に協力して貰った。やはりこの匂い、懐かしい感じだ。


各種料理が完成し、試食会形式で準備され、テトラーデ伯爵一家や行政官達、作物研究所の担当者、その他使用人有志に米料理を試食して貰った結果……


「ふむ……これは……確かに主食として有用だな」


「これは……作法的にはこうして食べれば問題無さそうね」


「これがフィリス姉様がお作りになったという『こめ』か……ほんのり甘味があるな」


「うーん、僕はこっちの焼いたものの方がいいな」


伯爵一家はまあともかくとして


「質の悪い小麦を作るより『こめ』の方が良いかもしれん。適地はあの辺りが良いか……」


「陸稲より水稲の方が味は良いかもしれんな。導師様の仰る通りだったか……」


行政官や研究所員の人達は、稲作に関して色々考えているようだ。



その他、今回特別に海鮮丼を作った。アルカドール領がプトラム分領から魚を輸送していることを知ったマーク叔父様達が、同様にハトーク分領から魚介類を取り寄せて食べているそうなので、それを使わせて貰い、酢飯の代わりに柑橘類の果汁を使ってみた。


「おお、確かにこれは魚介類に合う! 素晴らしい!」


「美味しいですが、魚はもう少し細かく切り分けると、食べ易いと思いますわ」


「不思議だ! 魚の生臭さが、気にならない!」


「お魚も案外美味しいね。でも、さっきの焼いたものの方が僕は好きだな」


といった感じで概ね好評だったので、今後はもっと稲作が広まるといいな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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