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第278話 央公府での婚姻式に参加した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

仕事が終了し、王都邸に戻った時、お父様から申し訳なさそうに頼まれた。


「フィリス、明日エヴァを迎えに行って貰えないだろうか?」


「明日は休日ですし、問題ございませんが、何故でしょうか?」


「今日商務省で塩製造法の他領への技術提供に関する調整を行っていたのだが……その際に財務大臣……央公が顔を出されてな。そして、27日に行われる息子の婚姻式に参加して貰いたい、と頼まれてしまったのだ」


「そういえば、お父様は私を名代にして、お断りされたのでしたわね」


「正直、その頃から予定が大幅に変わってしまったのでな。しかし、頼まれてしまった以上、断れん」


今の我が家は体制派だからね……当然、その領袖たる央公の意に沿わないといけないわけだ。


「そういうことであれば、私は構いませんが……お母様の準備は如何されますか?」


「エヴァには申し訳ないが、予備の盛装で対応して貰おう」


侯爵夫人たるお母様については、急な会合にも対応できるよう、常に使えるドレスを準備しているそうだ。私も今後必要になりそうな気がするので、少々滅入りながらも、承知した。




次の日、お父様と一緒にお母様を迎えに行き、状況を説明すると、お母様は、仕方ないといった顔をして、了承した。


「……そうなった以上、あれこれ言っても仕方がないわね。判りました。今から準備をしましょう」


そう言ってお母様は、メイド長のキーファナに指示を出し、準備をさせた。


「すまんな。この埋め合わせは必ずする」


「構わないわ。雪花会の方も上手く行ったし、当面はこちらにいないといけない予定はありませんからね」


「お母様、その『雪花会』とは一体何の集まりなのでしょうか?」


「そういえばフィリスには言っていなかったわね」


それからお母様に「雪花会」なるものの話を聞いた。どうやら、お母様は月1回、セイクル市の主要なご夫人達を家に呼んで、美肌魔法を行うことにしたらしい。今回はたまたま講義の日とバッティングしたため、当初は王都に来られなかったのだそうだ。


「ご夫人達の圧は尋常では無かったからな……だが、結果的に良い方に向かっている」


どうもお母様の所に、美肌魔法を教えて欲しいという要望が殺到したらしく、そのため、メンバー限定のエステサロン? を主催することにしたそうで、それが雪花会というわけだ。ただ、これが功を奏したのか、ご夫人達の間でお母様の求心力が更に高まっている状態だそうだ。それは良かった。


ということで、家族でエルムハイド様とレナ様の婚姻式に参加することになってしまった。




今週は、イクスルード~オクトウェス間のトンネル工事を行うことになっている。事前の資料を読む限り、これまでの要領を参考にすれば、問題無いだろう。


トンネル工事の日となり、私は王都のイクスルード侯爵邸からイクスルード領の中心都市に転移して、イクスルード侯爵に挨拶した後、トンネル入口付近の村に、前回とほぼ同様の編成で移動した。今回は侯爵自身が同行した。まあ、ダリムハイト様は魔法学校在学中だからね。


到着後、周辺の状況を領兵に確認し、問題無いということだったので、トンネル入口予定地に移動した。これまでと同様、女王様の像を置いて、風精霊に暫く山谷風を止めて貰った後、案内係を空動車に乗せてオクトウェス側に行った。


オクトウェス側についても、伯爵自身がやって来ていた。伯爵に、工事の要領などを説明した後、地精霊を探していると……丁度転がって遊んでいた地精霊がいたので挨拶をして、魔力を渡して仕事を頼むと、元気に飛んで行った。


暫くすると、結構離れた所からやって来たので、入口の場所を変更した。伯爵と話して、前回同様この付近についても工事を行うことにした。では、和合を行おう。


【我が魂の同胞たる地精霊よ。我と共に在れ】


地精霊と和合を行い、周囲を10分程で均した後、トンネルを掘り進めた。今回は概ね25キート、前世の距離にするなら23kmくらいなので、中間地点を過ぎた所で地精霊に案内して貰いながら、掘り進めて行くことにする。


今回は少々地盤が緩めで、結構水も出て来ていたからしっかり岩化しつつ進み、1時間少々でイクスルード側に出ることが出来た。こちら側もしっかりと固めて、今日の作業を終えて宿営地で休んだ。




次の日は、侯爵に挨拶をした後、手を地精霊と同化させて、トンネルを空動車でオクトウェス側に移動しつつ、内部の工事を進めていった。2時間程でオクトウェス側入口に到着し、丁度伯爵が近くにいたので、今後の工事を確認した。


とりあえずは広い道路に接続できる道を作るだけで良いらしいので、樹木を株ごと移し替えたりして道を作り、作業終了を伯爵に伝えて、伯爵邸に移動した。その日は伯爵邸に宿泊し、次の日王都に戻った。




エルムハイド様達の婚姻式の日がやって来た。私達は、早朝から空動車に乗って公府セントリードに移動し、1時間半ほどで公爵邸に到着した。ちなみに今回は、現在の体制派領主全員が参加しているとのことだ。


つまり、お父様、ビースレクナ侯爵、トリセント伯爵、クインセプト伯爵、ブラフォルド伯爵、エルステッド伯爵、サウルトーデ伯爵、ペンタデウス伯爵が来ているわけだ。なので、婚姻式の合間に会合があるらしい。


まあそれは領主達で勝手にやって頂くとして、私はお母様達について、祝宴の準備だね。




ということで、婚姻式や公府内のパレードなども無事終了し、祝宴が始まった。私はお兄様にエスコートされ、参加している。早速エルムハイド様やレナ様の所に挨拶に行った。


「エルムハイド様、レナスフィリア様、改めまして、ご婚姻おめでとうございます」


「カイダリード、フィリストリア嬢、祝ってくれて有難う」


「勿体ないお言葉ですわ。しかし、あれだけ水晶の薔薇が揃うと、壮観ですわね。流石、セントラカレン家ですわ」


今回、セントラカレン家は、ドミナスに水晶の薔薇を大量発注したらしい。それが祝宴会場の入口に置かれ、会場に到着した人々は驚くとともに、その景観に魅了され、暫く足が止まっていた。


「あのくらいやらないと、レナに愛想を尽かされてしまうからね」


「そんなことはありませんが……その気持ちは嬉しいわ」


そのような感じで、二人の仲は問題無さそうだった。ただ、今回レナ様の家族は、前西公たるジャスクナード様とエイムランデ様だけで、ペルシャ様とチェルシー様は来ていない。この辺りは、派閥の関係もあると思うので、今後どうなるかは、何とも言えない所かな……。


さて、他の知り合いは……ヴェルドレイク様は、既に独立し、男爵位を持っているから、正確にはセントラカレン家ではないが、エルムハイド様の実弟だから、当然いるよね……。


あと、ライスエミナ様も当然参加しているわけだが……王家の代表で参加しているオスクダリウス殿下がエスコートしているためか、遠目で見てもご機嫌に見える。挨拶しないわけにはいかないが、二人の邪魔をしてはいけないので、手短に挨拶した後、ヴェルドレイク様の所に行ってみた。


「ヴェルドレイク様、兄君のご婚姻、おめでとうございます」


「カイダリード、フィリストリア嬢、兄達を祝ってくれて有難う」


そのまま、ヴェルドレイク様の所で話していた。基本的には昔から交流しているからね……。


「ヴェル、君が作った計算具、王都で使わせて貰ったけれど、素晴らしいね。是非アルカドール領でも使わせて欲しい所だ」


「カイ、計算具はフィリストリア嬢の助力が無ければ作ることは出来なかった。今も新しい魔道具の製作に力を貸して貰っている。アルカドール領で使って貰えるなら、有難いよ」


「我が妹は、本当に色々な所で活躍するね。心配してもし足りないよ」


「しかし、そういうフィリストリア嬢だから、皆も力を貸してくれる。今は力が足りないが、私も、その一人になりたい」


「そう仰って頂けるだけで、私は幸せ者ですわ」


ということで、旧交を温めつつ時は過ぎ、祝宴が終了して、私達は王都へ戻った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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