第277話 土砂崩れ対策の補強工事を行った
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業務が終了し、家に戻ると、お父様から手紙が来ていた。今年も精霊概論の講義を見に来るそうだ。それに合わせて、政府と領政に関して調整をしたり、知人に会ったりするそうだ。この時、お兄様についても、調整に同席したりする他、魔力増幅の件で魔法研究所や魔法学校に用があるので、一緒に来るらしい。講義が文字通り父兄参観になりそうで、少々気が重いが、やるべきことはやろう。
休日になったが、ここ暫く雨が続いており、外で鍛錬が出来ないので、部屋の中で出来ることをやったりして過ごした。
第2週に入った。講義の準備も概ね終わったので、小雨が降っていたがシーラ村に視察に行った。空動車は便利だが、出来れば雨が降った時のためにワイパーなどが欲しいな。
私の場合、高速で飛ぶ時には風魔法を併用して空気抵抗を減らしたりしているので、雨がフロントガラスに当たることは殆ど無いのだけれど、普通に移動する時は当たるので、その都度水魔法で移動させている。この辺りは改善要望を出さないとね……。
田んぼを見に行ったが、特に雨風によって倒れてはいないようで安心した。地精霊にも確認したが、もうすぐ収穫出来るそうだ。農具などの準備も順調らしいし、月末には収穫かな。
書類を読んでいると、宰相補佐官が訪ねて来た。ペンタデウス領で大規模な土砂崩れが発生する可能性があるらしい。早速宰相府に向かった。会議室には、新宰相閣下をはじめ、数人の宰相補佐官や交通課長がいた。
「おお、精霊導師殿。早急に手を打たねば大きな被害が発生する可能性があるのでな、宜しく頼む」
「宰相閣下、承知致しました」
「詳細は彼らから確認して貰いたい」
「導師様、状況を説明させて頂きます」
一人の宰相補佐官から説明を受けたところ、ペンタデウス領の北部を通る国道の一部が山中にあるのだが、その近辺の地盤が緩んでおり、最近の長雨で大規模な土砂崩れが発生する可能性が高いそうだ。
「地盤が緩んでいると各領巡回助言において助言を受けましたので、交通課で点検し、崩れそうな箇所の補強工事中だったのですが、工事が間に合わない可能性が少なからずあるため、恥ずかしながら導師様にご助力を頂きたく、宰相閣下に報告させて頂きました」
交通課長からも説明があった。なるほど、国道の工事は事業区分としてはステア政府が担任する案件だけど、各領巡回助言の直接の窓口は領になるから、その辺りで調整が遅れた可能性もあるかもしれない。何事も順調に行くわけではないからね……まあ、何にしろ、通常の手段で解決できないのだから、私の仕事になるだろう。
「直ちに現場に伺いましょう。場所はどちらになるのでしょうか?」
会議室に広げられた王都周辺の地図で、土砂崩れが起こりそうな地点を教えて貰った。ここなら空動車で行けば1時間もかからないので、空動車で移動する事になった。そして、作業要領については、地盤を補強することになった。将来的には、山肌が見えている所を植林するなどした方が良いが、それは今後の状況次第かな。
早速導師服に着替え、テルフィや宰相補佐官、交通課の担当者達を同乗させ、空動車で現地に移動した。
雨であまり視界は良くなかったが、空を飛んで移動する存在が殆どいないので、交通課担当者の案内の元1時間弱で現地に到着した。雨の為、工事は中断しており、仮設置された宿泊所に作業員達は待機していた。
現場責任者に状況を確認した所、国道の交通制限は掛けていないが、近隣の山中への立ち入りは禁止しており、付近に人間はいないだろうとのことだった。ならば、今のうちに補強させて貰おう。
概ね地盤が緩んでいるとされた一帯の中央付近に空動車で移動して、降りてから和合を始めた。
【我が魂の同胞たる地精霊よ。我と共に在れ】
地精霊と和合を行い、まずは周辺の掌握にかかった。地盤の緩み……は……ああ、なるほど、確かに地属性でない隙間が多い。こういった部分を補強すればいいのか。
暫くこの一帯の補強を行い、ついでに山肌が見えている所については全面岩化しておいた。作業が終わったので、和合を解き、同行していた宰相補佐官達に、作業の終了を告げた。
「ほ、本当に、この短時間で作業を終了させたのでしょうか?」
「ええ。近くの工事予定地で宜しいので、確認して頂いて宜しいでしょうか」
宿泊所に戻り、何名かの技術者に近傍の工事予定地を点検して貰った。この人達は、地魔法を使うことで地盤の状況などを概略把握することが出来るらしい。
「数日前に点検した際は、土の移動が簡単に出来ましたが、今は全体が強固な岩の様です。あれなら我々が補強工事を行う必要は無いでしょう」
帰って来た技術者達からは、全て問題無しという報告を受けたので、今回の作業は終了となった。補強工事自体も、全体の点検を行い、問題無ければ終了するとのことだった。
同じメンバーで王都に戻った時には、夕方になっていた。まずは宰相閣下の所で報告する。
「補強工事が間に合わなければ、西部に向かう経路が当分の間通行不能となっていたところだ。感謝する」
「宰相閣下、お褒めに与り有難き幸せに存じます」
その他、所要の手続きを行い、その日の業務を終えた。
省定例会議があったが、大きな内容は無く、ペンタデウス領の補強工事の話や、大臣の視察対応の様子などが大きな話題になった。まあ、エルステッド領の視察については、大過なく終わったようだ。
明日は講義の日という事で、業務が終了して帰宅した後、お父様とお兄様を迎えるため、アルカドール領に転移した。なお、今回はコルドリップ先生もお父様の補佐として同行している。
「いつもすまんな」
「迎えに来てくれて有難う。しかし、そのうち私だけでも転移門が起動できるよう、更に鍛錬するよ」
「どういたしまして。お兄様が気軽に来られるなら、楽しいでしょうね」
等々話しながら王都邸に転移し、夕食を食べた。
精霊概論の講義はいつも通り午後からなので、私は普通に出勤したが、お父様達は商務省に調整に向かい、お兄様は朝から魔法学校に行っている。私は早めに昼食を取り、お父様や精霊課長と一緒に魔法学校へ向かった。
ちなみにコルドリップ先生は引き続き業務調整中だ。学校長室で時間調整代わりに学校長と最近の魔法学校の様子について話し、時間となったので大教場に移動し、講義を開始した。
今回、知っている人は……家族以外だと、セレナがいるね。あと、2学年以上の希望者もそれなりにいるが、学校職員も結構来ている。まあ、去年の年末魔法戦みたいなことがあったら嫌だしね……。
今回の目玉としては、魔法強化に関する特性だ。
特に、魔法強化の強化度や範囲、持続時間について、検証結果が概ねまとまったので、そういった話をさせて貰った。
強化度は飛距離及び威力が約3倍で、精霊術士による変動は殆ど無く、範囲については魔法強化を行う精霊術士の属性との親和度、持続時間は与えた魔力の量によって変わるという結果が出た。属性との親和度というのは明確な数値などでは出ていないが、精霊の声の聞こえ易さだそうだ。
私は特に困ったことは無いが、精霊の声に雑音が入ったりして、聞き取りづらいという精霊術士がいるそうで、そういった人達は属性との親和度が低いらしい。鍛錬方法としては、精霊術士集中鍛錬で行っているようなことをやれば、ある程度は向上していくようだ。
そういった事を話しながら、今回も魔法強化を体験して貰う時間を作った。前回同様、特製の的を準備して貰い、各属性の希望者に魔法強化を試して貰った。やはり魔法強化してもらうのは初めての人が殆どで、結構感動していた様子だった。
質問なども問題無く対応し、精霊概論の講義は無事終了した。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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