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第027話 精霊女王に招かれた 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

……転生という現象は、精霊女王にとっては既知の物なのか?下手にはぐらかしたりすると、虚偽の発言ととられる可能性がある。ここは正直に告げ、情報を収集しよう。


「……いえ、私はそのような方はおりませんでした。ところで、私に前世の記憶がある、と何故お分かりになられたのでしょうか」


女王様は少し考えた後、何かに気が付いたような表情をして、言った。


『そういえば、人には、複数属性者が転生者であることは、知られておらんかったかの』


何?!そんな話があるのか!……私が驚いている間に、執事風精霊が女王の質問に回答した。


『明確な根拠は神からは与えられていなかったと記憶しています。ただし、複数属性者は神から何らかの使命を与えられている、という説が人の間にはあるようですし、複数属性者から実際に話を聞いた者なら、真実を知ることも可能でしょう』


なるほど、全属性者も複数属性者の一種だから転生者だ、ということね。それを知っているなら一目で判るわ。ついでなので聞いてみよう。


「複数属性者が、神から何らかの使命を与えられている、とは?少なくとも私は何も伺っておりませんが……」


『それは、複数属性者、すなわち転生者が、前世の記憶を引き継ぎ、素晴らしい能力を発揮していることから出た話であり、根拠はございません。神は優れた才能を持った者を転生させ、文明や文化を更に発展させることを考えられている可能性がありますが、神の遠大な思考は我々も理解できませんので、推測でしかありません』


『そもそも、魂の管理区分としての意味もある属性を、複数にする意味も我等は理解しておらん』


何やら話が壮大なものになってきた気がする。まあ、話を落ち着けよう。


「なるほど。では、明確な使命などはない、ということですね。安心いたしました」


『ちなみに、お主、前世はどのような人生だったのじゃ』


話はまた嫌な方向に飛んで行った。まあ、素直に話しておこう。


ということで、私が地球の日本で暮らしていて、地震に遭って死んでしまったが、転生して現在フィアースで暮らしている、ということをかいつまんで話した。


『なるほど。異世界に住んでおったとはのう』


『これまでの複数属性者には、前世を異世界で生きた者は存在しておりませんでしたが……もしかすると、全属性者は異世界の魂を転生させた者、ということでしょうか』


『わからぬ。じゃが、その可能性は高いの』


『フィリストリア様より前に生まれた全属性者は、全員生後すぐに亡くなられていますので、確認しようがありませんね。今後生まれたら確認できるかもしれませんが……』


この話ぶりからすると、異世界からの転生者は、今の所私だけらしい。まじか……。


そんなこんなで、色々と勉強になる話を伺い、帰らせてもらうことになった。しかし……


『では、お主の部屋に転移する』


女王様御自ら送って頂けるのですか?戸惑っている間に女王様が私の肩に手を置き、転移した。


『こちらの世界に任意で転移できるのはあの場では我だけじゃからの。では、またな』


「有難うございまし……」


と御礼を言っている間に、女王様は転移して帰ってしまった。よく見ると、丁度私の部屋の花瓶にいた水精霊が、平伏してブルブル震えていた。恐らく、精霊に影響を及ぼすのですぐに帰ったのだろう。ちなみにもう夜が明けていた。


先ほどまでかなり緊張していたのが解けたせいもあり、とても眠いのだが、とりあえず現状を把握してから眠ろうと思い、扉を開けると、近くにいたメイリースと目が合った。話しかけようとしたところ


「旦那様、奥様、お嬢様がお戻りになられましたーー!」


と大声で走って行った。これはものすごく心配している筈。きちんと説明しないとあかん奴だ。


そして、メイリースが行った先に向かって移動すると、父様、母様、お祖父様、兄様が揃っていて、母様には泣いて抱き付かれ、兄様には頭を撫でられた。思わず泣いてしまった。




その後、眠いのをこらえて説明しようとしたが、父様から、とりあえず寝なさい、と言われて眠った。起きると夕方だったので、夕食を取った。この日は全員揃っており、そのまま、夕食後に説明する流れになった。そして、女王様に加護を頂いたことをかいつまんで話した。


「やはりそのような話になったか……」


父様はそう呟いた。母様やお祖父様も、同様に考えていたようだ。


「実はね、精霊導師に関する研究がなされているのは貴方達も知っていると思うのだけれど、その中で、魔力の高い精霊術士は、精霊導師になる可能性がある、という仮説があるの」


なるほど、そのままズバリですな。後は誓約を守れる人物であることを女王様が認めるだけ、と。


「しかし、精霊女王の加護を戴いてしまった以上、陛下に報告せねばならんのう」


「お祖父様、まさか私は、ここにいられなくなるのでしょうか」


頭の中を、荷馬車に乗せられて王都へ連れられて行く私のイメージ図が……。


「そんなことはないわい。ただ、事実を報告するだけじゃ」


「フィリス、精霊導師という存在は、このロイドステアだけでなく、世界中の国に影響を与えるのだよ。精霊導師がいるだけで、国内が発展することが約束される。また、エスメターナ様の頃は、敵対する国家には、水源が枯渇するなどの不利益が発生したため、周辺国家はどこも建国直後で不安定なロイドステアを攻められなかった。つまり、精霊導師は、国家間の均衡を大きく崩す存在なのだよ。直ちに国王陛下に報告することは、貴族としての義務だ」


そこまで大事になるとは……やはり一度持ち帰るべきだったのかもしれないが……今更だ。


「では、どのように報告されるのでしょうか」


「まず、今から緊急の謁見を魔道具で願い出る。そして、明日私とエヴァ、そしてフィリスの3人で王都に転移門で移動する。恐らく明後日には陛下に謁見できる筈だ」


「何も今すぐに謁見するわけではないわ。まずは服装など、失礼に当たらないものを準備しましょう。その上で、陛下のご下問などに対応できるよう、内容を想定して、回答を準備すれば、問題ないわ」


なるほど母様、身だしなみとQ&Aですね。何となく気が楽になってきたよ。


「それではフィリス、謁見時の服装の準備をするように。あと、今回は王都の館に転移することになるから、身の回りの世話をする使用人と護衛数人だけ連れて行く。あちらにも何人かは維持管理員として配置しているが、急に我々が行っては対応できない」


ううっ、急にお仕事を入れてしまって申し訳ありません。


「承知いたしました。直ちに準備いたしますわ」




こうして、慌ただしく服装の準備をして、次の日転移門を使って、王都の侯爵邸に移動した。


ちなみに、本来転移門は、相当な量の魔力を消費するらしく、魔導師級でも3人は必要だということだったのだが……、私一人で難なく動かすことが出来た。もし王都に行くことになっても、転移門があればすぐアルカドール領に帰れることが分かったのが、収穫だった。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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