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第272話 各国への魔力循環不全症の治療を行った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

トンネル工事は合計4か所で行い、とりあえずは1か所やってから残りの予定を決めようという話だったので、残り3つのトンネル工事の予定を交通課の担当者が調整にやって来た。


ニストラム秘書官を交え、調整した結果、6月1週にカウンタール~ヘキサディス間、7月3週にイクスルード~オクトウェス間、8月1週にカルテリア~デカントラル間のトンネル工事を行うことになった。




休日をのんびりと鍛錬や読書などに費やし、第4週となった。魔法研究所や田んぼの視察を行いつつ、恒常業務を行っていたのだが、ある情報が耳に入った。東公が、代替わりするそうだ。つまり、現東公であるシェムトリーグ様が、嫡男であるクリフノルド様に公爵位を譲る、ということだ。


実際は匿ったままなのか、既に処分したのかは分からないが、領内にいるとされた異端者を現在に至るまで引き渡しが出来ていないという点で、領政を任せるに値しないとみなされても当然、というわけだ。未だ発見できず、という報告を聞いた王太子殿下は


「公爵、捜索の成果が出ていないためか、心労が見えるな。長期療養が必要だと、陛下に報告しておこう」


と、事実上の引退勧告をされたそうだ。まあ、あちらとしても処刑されるよりはマシだろう。私に対しても、恨みは持たれる可能性はあるけれど、当面は大規模な攻撃を心配しなくても良さそうなので、有難いことだ。クリフノルド様は大変だろうけれど、領政を頑張って欲しいものだ……。




神域で魔力循環不全症の治療を行う日となった。朝からカラートアミ教の馬車が迎えに来たので、テルフィを連れて大聖堂まで移動し、キュレーニル研究員達や護衛の騎士達と合流した後転移して、神域に到着した。前回と同じ講堂に移動し、説明を受けた。


今回は基本的に、初日に中程度の患者から施術を行い、終了後軽度の患者に対して施術を行っていく。中程度の患者は1日1回、3日間施術を行い、軽度の患者は1回施術を行った後は様子を見ることになる。体操なども付き添いの大人達に教えておいて、帰国後頑張って行って貰うようにする、という流れだ。


ちなみに今回は、前回行った国より3か国増加している。サザーメリド国のあったメリゴート大陸の、それ以外の国だ。何らかの思惑があるかもしれないが、人の命が掛かっているわけだし、きちんと施術を行おう。


今回もあみだくじ……ではなく「運命の導き」により施術の順番が決定され、中程度の患者については帝国4名、ヘーゲルヴェスト3名、アブドーム2名、ネルセーデル2名、ティロケープ3名、ヘイドバーク2名、ガルフィスト3名、バクウェスト2名、ノルウープ2名の計23名で、後は軽度の患者、ガルフィスト3名、ヘーゲルヴェスト4名の計7名だ。


前回の施術の実績があったからか、今回はあまり騒いだり不信感を持った人達はおらず、素直に施術を受けてくれた。中には、前回中程度の患者だったけれど、施術により軽度の状態に回復し、今回再度来ている子もいたらしく、特にお礼を言ってくれた。




今日の分の施術が終了し、休息をとることになった。なお、教主猊下については、今日と明日は、宗教行事のため、教主殿から出られないそうだ。何か話せたらと思っていたのだが、残念だ。


……と思っていたら、今回私の世話係になっている神官の女性から


「精霊導師様、もし宜しければ、今から散策を致しませんか?」


と誘われた。時間的に大丈夫なのかしら……?


「もう日が沈んでおりますが、宜しいのでしょうか?」


「ええ。今が見頃ですわ。神域長からも、もし宜しければ……と」


神域長と言えば、カラートアミ教のナンバー2だ。その方のお薦めであれば、行かないわけにはいかないから、テルフィを連れて、女性の案内の元、散歩に出てみた。暫く歩くと、夜なのに、地面が仄かに光っているような場所があった。


「精霊導師様、あちらがアルフラミスの群生地でございます」


そうそう、アルフラミスの群生地があるんだよね。で、私のあだ名にもなりかけたこの花、昼間見ても美しい花なんだけれど、夜見ると、仄かに光る花として有名なのよね。その美しさや、神域周辺にしか咲かないところから「神を讃える者」という意味の古い言葉が名前の由来なのだそうだ。


神秘的な景色を見ることができ、いい気分で就寝できた。




治療2日目、今日は軽度の患者からだ。ネクディクト2名、帝国6名、ティロケープ4名、ヘイドバーク2名に施術を行った後、中程度の患者全員に対して施術を行った。この際、先日王子に対して施術を行ったネクディクト国の付き添いの人、恐らく貴族だと思うが、私に手紙を渡してくれた。


休憩中に見てみると、王子からの手紙だった。ありがとう、またあいたいです、と書かれていた。字を習って、早速書いたような手紙だったがとても嬉しかったので、その日の夜に早速返事を書いた。あの人に渡せばいいかな。




治療3日目、最終日だ。まずは昨日と同様、軽度の患者からだ。ノルウープ4名、アブドーム2名、バクウェスト3名に対して施術を行った後、中程度の患者全員に対して施術を行った。その間に、ネクディクト国の人には王子宛の手紙を渡した。


今回については、軽度の患者だけでなく、中程度の患者についても殆ど回復したことで、特に施術への疑問が投げかけられることもなく終了した。また、終わりの際には、教主猊下に来て頂いた。皆の前で今回の労をねぎらうお言葉を頂いた後、控室にて少々お話を頂いた。


「精霊導師殿、お変わり無さそうで、安心いたしました」


「教主猊下におかれましても、ご健勝のようで、何よりですわ」


「貴女に対しては、その功績から色々と噂がございますが、決して己を見失わないよう、ゆめゆめお気をつけなさって下さい」


私は普通の人に出来ないことが出来るけれども、決して万能ではないし、誤ることもある。それに、人々からの期待が過度にかかって来ることもあるだろう。そういった際に、自分を見失ったりすると、大きな後悔をしかねないという話なのだろう。特に最近は、密かに神使なのではないかという噂も流れていて、そういった目で見られると、どう反応して良いか判らなくなってしまう。


調子に乗りすぎたり、人の期待や思惑に乗りすぎないよう、気を付けないと、自分自身を保てなくなるからね。私の人生目標は、合気道を極めることだ。自分を律し、自分とは何かを常に考えないと、それを成すことは出来ないだろう、と、改めて思い直した。


「はい、良くも悪くも私が成せることは限られております。神の御心によってこの世にあることを忘れず、自分を律し、周囲を信じ、力を尽くしたいと考えております」


「それは良かった。神は、いつも我々を、見守って下さいますよ」


教主猊下は去って行った。何故か、見えない重石のようなものが、取れた気がした。




今回は特に問題無く治療を終了させることが出来た。それに、美しい風景を見たり、ネクディクトの王子から手紙を貰ったりして、良い気分転換になった。


王都に戻り、陛下や宰相閣下にも治療の結果を報告した。その際、ネクディクト国の状況について、宰相閣下から補足的な話があった。あれから、正妃が亡くなった……というより、状況からすると、幽閉されて、毒杯を飲まされたような感じらしい。


流石に次の国王になるであろう王子を暗殺しようとした罪は償わないといけないし、死罪以外にはありえないのだろうけれど、何だかやるせない気分になって、その日は終了した。




後日、政府全体会議において、私の魔力循環不全症の治療が神域で行われたことも話題になっていたが、ネクディクト国との関係が更に良好になっていることが報告されていた。


特に、計算具の作成法をネクディクト国に公開するという話だった。協定を結んで、こちら側に作成した数の分だけ特許使用料のようなものが支払われるそうだが、あの国は商業が盛んだから、需要は大きいだろうね……。


魔道具の輸出は、魔石が希少かつ高価であることからごく少数だ。しかし、相手国が自分の国で作ることが出来れば、ある程度普及させることも不可能ではないから、需要に応える形で協定が結ばれたのだろう。


私としても、両国の関係強化に多少なりとも関わることが出来たので、良しと考えておこう。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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