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第266話 隣国王子の魔力循環不全症治療 2

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

とりあえず、暇な時間については一人で型稽古したり、テルフィを呼んで諸手態勢崩しをやったりしているうちに、夕食の時間となったので、部屋で夕食を頂いて、備え付けの風呂で入浴を済ませた。しかしながら、服は導師服のままだ。特にこれまで悪意を感じたわけではなく、精霊の警告も無かったが、念の為ということで、導師服で通すことに決めている。汚れないしね。


就寝までの時間に、明日以降の事について少し考えていた。


王子に対しては、基本的には1日1回、施術を行う。先程私が魔力を同調させて強制的に正常な魔力循環の状態に戻したから、今は健常者と同様に魔力が循環しているが、暫くすると、大なり小なり元の状態に戻ろうとする筈だ。


軽度の患者なら1回でほぼ正常になり、後は本人が意識的に魔力循環を行っていけば完治する。中度の患者なら、2~3回施術すれば大丈夫の様だ。ちなみに、去年神域で数十人の患者に対して施術を行った時は、様子見ということもあり、中度の患者にも1回のみの施術となったが、きちんと回復することが判ったため、次に行う時は、日を置いて複数回施術を行えるようにするらしい。


重度の患者への施術は、今回初めてだったのだが、特に慎重に同調を行う所以外は、他の患者と同様だったため、戸惑うことも無かった。毎日施術を行っていけば、完治するだろう。それ以外の時間については、今日の様に鍛錬に充てたり、感覚共有して周辺を見させて貰おう。




2日目だ。部屋の中でテルフィと一緒に簡易的な鍛錬を行い、朝食を頂いた。あちらの侍医と治療に関する調整を行っているキュレーニル研究員からは、昨日と同様午後に入ってから施術を行うと聞いたので、午前は時間が空いている。引き続き鍛錬を行っても良いが、折角なので、風精霊と感覚共有して、王城やこの国の王都の様子を見てみることにした。


王城自体は、うちの国とさほど変わらないようだが、細かい部分の装飾などが異なっているようだ。あと、離宮がうちの王城よりかなり多いような気がする。そう言えば昨日聞いたが、この国の王は、大体複数の妃を持つらしく、今の国王にも二人の妃がいるということだ。で、昨日会ったのは側妃で、正妃は別にいるそうだが……。


王城は概略確認したので、王都の目立つ場所を見に行ってみた。上空から確認すると、王城と大聖堂は良く目立つ。その他、学校らしき建物群や、中央通りなどは判り易い。


学校は、見た感じ貴族っぽい少年少女達が通っているようだ。施設を見た感じでは、剣術も魔法も教えているらしい。中央通りは立派な店舗が立ち並んでいたが、興味が湧かなかったので、少し横に逸れて飛んで行くと、大きな市場があり、珍しい物もありそうなので、見に行ってみた。


流石は商業が盛んな国らしく、中々活気があるようだ。並んでいる品も、これまでこちらの世界で見た事が無いものも多く、面白かった。あと、ネクディクト国はうちより赤道に近いので、作物は南国系のものが多いようだ。地球で言うと台湾辺りと雰囲気が似ている気がする。


なお、私は導師服を着ているから気にならないが、他の人を見た限りでは、結構暑そうだ。身の安全という点以外でも、他国に来た時に導師服は役に立つ。改めて女王様と四龍様に感謝しておこう……。




昼食の時間となったため、感覚共有を解いて昼食を頂き、暫くすると時間となったので、キュレーニル研究員とともに、王子の寝室に移動した。この際、当然私を警護しているテルフィや騎士達も一緒に移動したわけだが、結構物々しくて申し訳ない気がしたものの、仕事だから仕方ないと思うことにした。


部屋に入ると、王子は眠っていたので、その場にいた侍医と相談し、そのまま施術を行うことになった。昨日と同様測定用魔道具を王子に装着した後、施術を行ったが、やはり昨日より格段に同調させやすくなっており、また、正常値に戻るまでの時間が少なくなっていた。順調に回復している証拠だろう。


「本日の施術は以上ですわ。また明日、同様に実施しますので、宜しくお願いします」


と侍医に告げて部屋を出て、割り当てられた部屋に戻ったのだが……今回の施術中、何故か部屋で待機していた侍女の一人から、敵意の様なものを感じたのだが、表面上は特に何もなかったので、施術を終了した。とは言え、また変な事でも企んでいるとかだったら面倒なので、一度風精霊と感覚共有し、先程の侍女の様子を確認することにした。


王子の寝室に行くと、丁度侍医達の事後処置が終了して、侍女一人を残して部屋を出て行くところだった。件の侍女も部屋を出て行ったので、後を付けてみると……待機所らしき部屋で、紙に何かを書き始めた。読んでみたところ


「精霊導師の施術により、王子の体調が元に戻りつつあります」


という内容が書かれていた。その後、侍女は紙を封筒に仕舞って窓を開け、その封筒を外に落とした。ここは1階で、特に風も吹いていなかったので、そのまま庭に落ちた。


すると、どこからか庭師のような男がやって来て、その封筒を回収して何処かへ歩いて行く。また後を付けてみると、別の離宮の裏口をノックし、出て来た侍女に先程の封筒を渡した。


その侍女は、やはり封筒を持ってどこかに移動していく。付いて行くと、ある部屋に入って行った。入口に衛兵がいたので、身分の高い人……正妃? の部屋かもしれない。


特に魔法禁止部屋でもないので、そのまま入ってみたのだが……。


「……何ですって! 全く忌々しい!」


と、紙に書かれた内容を読んで怒っている女性がいた。高そうな服を着ているので、恐らく正妃だろう。封筒を持って来た侍女は、恐る恐る部屋の隅に下がって行った。正妃らしき女性は、紙を床に叩きつけ、何回も踏んでいた。淑女らしからぬ振る舞いだが、非常に怒っている事は判った。


暫くして、踏み疲れたのか落ち着いた正妃? は、近くの椅子に座り、少し考えていたようだったが、侍女に誰かを呼びに行かせた。暫くすると、侍従らしき男が入って来た。


「正妃殿下、お呼びでしょうか」


「あれの容態が回復しているらしいわ。何とかして頂戴」


「しかし……発見が難しい毒とは言え、何度も使用すれば、露見する可能性がございますが……」


「大丈夫よ。今なら弱っているでしょうから、もう1回使えば確実でしょうし、精霊導師とやらのせいにしてしまえば、こちらには害は及ばないわ」


「成程……では、その方向で処置させて頂きます」


「頼みましたよ」


侍従らしき男は退室した。正妃は椅子に座って


「側妃の分際で、正妃である私を差し置いて、王子を生むからいけないのよ……」


と呟いていた。恐らくはこれが動機なのだろうが……そんなことであの可愛らしい王子を殺そうとしたのかと思うと怒りが湧くが、それよりも、その毒とやらの使用を未然に防がなければならない。話からすると、厳重な警備と人の目をかいくぐって1度は気付かれずに使用できたようだ。


そう言えば、王子が魔力循環不全症になった切っ掛けは、原因不明の高熱だった。その高熱を引き起こしたのが、毒なのかもしれない。


発見が難しいとは言え、使用者には必ず強い悪意が生じる筈だ。それを利用して実行犯を捕まえてしまえば、後は何とかなる可能性がある。まずは風精霊に頼んで王子の周辺で強い悪意を感じたら、軽い電撃で威嚇して行動を止めて貰い、その間に私を呼んで貰うことにした。


また、どこまで信じて貰えるか判らないので、正妃のことは濁して、王子に暗殺の危険があることを、国王に手紙で伝えることにした。書いた手紙は、地精霊と感覚共有して、重力を操作して国王の部屋まで運んでおいた。


さて、どういった手段で暗殺を行おうとしているのか……毒を使うと言っても、経口とは限らないし、肝心の王子が眠っているから、お世話に乗じて毒を使われるかもしれないし、常に警戒しなければならないわけだ。精霊に監視して貰っているとは言え、私もいつでも対応できるようにしておかないとね……。




それから2日間は何も起こらず、私の施術により王子は順調に回復し、意識も取り戻した。その時は、国王と側妃もやって来て、王子の回復を喜んでいた。ただしその際、国王から二つ折りの小さい紙をこっそり渡された。周囲に気付かれないように見てみると、紙には


「暗殺の阻止に協力して貰いたい」


と書いてあった。無言で頷くと


「たまに息子の話し相手になって欲しい」


と皆の前で言って、私がこの部屋に随時立ち入る許可を出してくれた。どうやらそれなりの信用は得られたようだ。まあ、元々何らかの疑念を抱いていたのかもしれない。優れた医者であろう侍医が「原因不明の高熱」と言っていたしね。しかしこれで名分は出来た。後は阻止するだけだ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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