第264話 色々視察をしたり交流を図った
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今週は、王太子夫妻の視察のために延期していた、人材交流の定期視察がある。つまり、娘と孫の顔を見たいどこかの偉い人の対応をしなければならないということだ。まあ、強国であるサウスエッドとの交流が進むことは、我が国の利益にも繋がるわけだから……仕事の一環だと思ってあきらめよう。
空動車研究チームから連絡が来た。どうやら、ワンボックス型空動車の試作品が1台完成したということで、試験名目で使わせて貰えるとのことだ。やったね!
早速開発事務所に行き、試作品を受領した。試作品と言う割には、外装も内装もかなり凝っていて、普通に馬車の代わりに普段使いが出来そうな様子だった。よし、今後はこれで通勤させて貰おう。試験名目なら、沢山使わないとね。ただし、皆が驚くといけないから、当座は緊急時以外では王都周辺での使用に留めるよう、注意されたのだけれど。
次の日から出勤時にワンボックス型空動車を使い始めた。確かに4人乗りより加速性能は劣る感じだったが、最高速度は変わらなさそうだし、安定性もあるので、最初は怖がっていたテルフィにも好評だった。これなら来月の視察の際にも使用出来るだろうから、お父様に連絡しておこう。
今日は人材交流の視察のため、転移門でサウスエッド国に向かう。いつもの様に転移門で王太子殿下達と合流して転移し、やはりあちらの国王に王太子妃殿下達が熱烈歓迎を受けつつ、視察を進めて行った。ちなみに今回も泊りがけになる話があったらしいが、立ち消えになったそうだ。その理由は、某国王が仕事をしなくなるからだという噂だが……あれを見る限り、本当だろうね……。
前回同様、王太子殿下とともに、人材交流でこちらに来ている人達の視察に向かった。今回も状況を聞きつつ、手紙や荷物のやりとりをした。昼食時には、修行中の料理人のサウスエッド料理を食べさせて貰ったが、前より腕が上がっているように感じた。
王城に戻り、サウスエッド側の政府高官と懇談を行った。特に、サウスエッド国から派遣されている2名の精霊術士が魔法強化を習得したことで、更に能力を高めたという話をしたところ、同席していた宮廷魔導師長が詳しく現地で確認することになった。まあ、元々様子を見に来る予定だったので問題無いのだけれど。
視察が終了し、転移門まで移動した……やはりリーディラゼフト殿下を抱いて付いて来た国王……と王妃達に見送られ、きちんとリーディラゼフト殿下を取り戻した王太子妃殿下も一緒に転移して、ロイドステアに戻った。
次の日、某宮廷魔導師長が、魔法強化を試すために魔法研究所に向かう所に同行した。質問などもあるだろうし、最近はしつこくないから、多少警戒しながらも問題無く付き合えているので、まあ仕方ない。セナデアは地属性なので、他の職員が試していたが、ロストナの魔法強化は、宮廷魔導師長が自身で試していた。
「これほどまでに強化されるとは……確かに、精霊術士を増やしたくなりますね」
「元の魔法自体も非常に強力でしたが、魔法強化されると、何かの災害かと思ってしまいますわね」
「精霊導師殿にお褒め頂けるとは、光栄ですね。ご期待に添える様、更に氷魔法や雷魔法に習熟させて頂きましょう。ところで、魔法強化についての質問ですが……」
やはり質問が来たので、事前に精霊課と調整しておいた内容を話しておいた。最近は魔法兵団との協同訓練などにより、大まかな使い方なども分かって来ている。この辺りは今年の魔法学校の講義にも活用させて貰おう。
空動車のおかげで移動が非常に楽になり、田んぼの視察に行ってもすぐに到着することが出来た。ただ、シーラ村の人々には非常に驚かれたので、今後はこれで移動することを言っておいた。肝心の米については、見た感じ、分げつ期が終わり、幼穂形成期に入ろうというところかな。水の管理を徹底して、栄養を稲穂に届けて貰おう。
地精霊にも確認したが、順調に育っているとのことだった。特に病気などにも罹っていないのであれば、このまま育ってくれるだろう。後は、実際に稲穂を付けた時の動物達への対応かな。動物については、周囲に柵を作っているので入っては来ないようだが、鳥などが食べに来るのを防がないとね……。
宮廷魔導師長もサウスエッド国に帰り、通常業務を行っていると、ニストラム秘書官が入って来て、王城からの連絡事項を伝えてくれた。どうやら、帝国大使である第2皇子が、王城での仕事の帰りに魔法省に来るらしい。魔法や精霊に関する質問をしたいそうなので、私以外にも魔法課長や精霊課長も大臣の応接室に待機することになった。第2皇子がやって来たので礼をしつつ、懇談に移行した。
「魔法大臣、私は大使という立場ですが、実質は留学に近い状況ですので、こちらの国の勉強もさせて頂きたい」
「伺っております。大使殿には我が国の実情を本国に伝えて頂かねばなりませんので、お答えできかねることはございますが、真摯に対応させて頂きましょう」
それから魔法に関する話が始まった。やはり帝国でも氷魔法や雷魔法は実用化されておらず、こちらに来て驚いたとのこと。また、その他にも魔法に関する技術が進んでいることから、サウスエッド国のように人材交流を行うことは出来ないか確認していたが、そこは同盟を結んでいないからという理由で否定的な回答となった。
また、精霊術士による魔法強化に関しても、帝国に現在6名いる精霊術士に学ばせたいという話があったが、そこもお断りの方向で進めさせて貰った。ただ、実情を知ることで、同盟を結ぶ材料になるかもしれないということで、今後もこちらに来ることにはなるらしい。
その他、雑談として、剣術の話になった。
「我が国の剣術は、長く戦乱が続いていたせいか、力と速度を重視し、それこそ敵を鎧ごと叩き伏せることもあります。まあ、通常は鎧の隙間を攻撃するのですが。また、無手となった場合にも、そのまま対戦を続けて、相手に有効な攻撃を与えれば勝利という形であるため、実戦的です」
「成程。我が国は剣での勝負を重視しているところがございますな。特に最近は、女性の剣士も増加しておりますが、それぞれの特性を生かし、高みに昇るかのような様子です」
魔法大臣は、シンスグリム夫妻のことを念頭に置いたような表現をした。
「ええ。正直、軟弱な剣だと思っていたのですが、先日実際に拝見させて頂き、こういった考えもあるのだと思わされました。実際に対戦したくなりましたが、流石に立場もあるので叶いませんでした」
こんな感じで最後には談笑していたが……帝国の剣術の話は非常に面白かった。日本においても、江戸時代初期の頃はそんな感じだったのだろうな……と、前世の歴史に思いを馳せた。
省定例会議も大きな報告は無く、週末になり、各領巡回助言の組の1つが王都に戻って来た。パティのいる組だ。時間もあったので、私は精霊課長への報告の際に同席させて貰った。私への報告は殆ど顔見せのようなものだから、細かい様子は判らないのよね……。
今回帰って来た組は、フェルダナ、ラクノアとパティだ。最年長のフェルダナが組長となってはいたが、押しの弱い性格なので、報告を聞く限り、パティもラクノアもフォローしていた様だ。サウルトーデ、リーデカント、テトラーデ、ペンタデウスの4領を巡回していて、これまでだと、主要な町の周辺しか精霊に状況を聞く事が出来なかったのだが、精霊に様子を見て来て貰うよう依頼することで、短期間にかなり広範囲の状況を確認することが出来たそうだ。
それと、海兵団のあるプレドックにも寄って、海兵団本部に配置されているロナリア達の様子を確認したそうだ。あちらで聞いてみた所、最初は相当ぎこちない感じはあったものの、セクハラ的な言動はあまり見られなかったという話で、改善はしているようだ。
特に、セフィリアが気さくに団員に接したり、ロナリアが酒場で一緒に酒を飲んだりしたおかげで、それなりには融和が図れているらしい。精霊術士集中鍛錬後に、更に4名の精霊術士が配置されたこともあり、海底火山の監視任務はあるものの、結構楽しくやっていたそうだ。それなら安心かな。
それと、テトラーデとペンタデウスでそれぞれ1名、水と風の精霊術士候補がいたそうなので、近々王都にやって来るとのことだ。精霊術士は今後も様々な活躍の場があるし、頑張って貰いたいものだ。
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