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第026話 精霊女王に招かれた 2

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

とりあえず、回答を出すまではこの別室から外には出して貰えなさそうだ。もう一度状況を整理しよう。


1 精霊達は、精霊視を持つ私の魔力が高いことで困惑している


2 現状を改善する方策は、女王様が私に加護を与えることである


3 加護を受けない場合、どうなるか分からない


……、正直、加護を受けないと、私、殺されかねないのでは?そもそも、私は精霊達の「平和」を乱す存在に、既になってしまっているわけだしね……。恐らく、国に与える影響は大きいのだろうけれど、私が生きて行くためには、精霊導師になるしかない。


…………意識を丹田に向け、暫く時を過ごし、落ち着くことが出来た。


とは言っても、私が認められるかは、誓いの内容によるはずだ。そこに含まれる要素は


1 「自然と平和を愛する」という文言

2 私の最も大切なもの


になる。


自然と平和を愛する、という点については、敢えて口に出すのは面映いが、誓う内容としては全く異存はない。自然との調和を図るのは、合気道を修めようとしている者として当然だし、むしろ積極的に寄与するものなのだが……私の最も大切なもの、とは何だろう。


恐らく、誓いを違えた時に奪われる、という意味もあるのだろうから、真実でなければ誓いの意味がない。通常、命とか家族、恋人などだと思うのだけれど、私に恋人はいないので、命や家族が、私にとって、最も大切なものなのだろうか?……そもそも「私」とは誰だ。フィリストリア・アルカドールなのか、渡会和蓮なのか、あるいはその両方か。


……「私」は、その両方として生きたい。ならば、両方を繋ぐものこそ、最も大切なものだ。




「考えがまとまりました」


『では、先ほどの間へご案内します』


執事風精霊が現れ、再び精霊女王の間へ案内された。私は女王様の前に跪いた。


『面を上げよ。どうじゃ』


「女王様のご加護、有難くお受けしたいと存じます」


『ならば、お主の最も大切なものに、誓え』


ここで再度、丹田に意識を向けた……よし。



「私は、自然と平和を愛することを、この魂に誓います」



女王様は、暫く無言で私を見つめていたが、ふっ、と微笑んだ。


『よかろう。お主が誓約に違わぬ者であると認め、加護を授けよう。そうか、魂か……』


どうやら認めてもらえたようだ。さて、私は家に帰れるのだろうか?


『フィリストリア、暫く付き合え』


まだ帰れないようだ。しかし帰れるかどうかは、女王様次第なのだから、断るのはやめた方が良い。


「何用でしょうか?」


『なに、茶でも飲みながら話そうと思ってな。連れて来い』


女王様はそう言って、どこかへ転移した。そして執事風精霊が、私を何処かの部屋に誘導する。部屋に入ると、女王様がお茶を飲んで待っていた。挨拶をしようとすると


『堅苦しいのは良い。座れ』


と言われたので、何も言わず着席すると、先ほどの水精霊がやって来て、飲み物を注いでくれた。そういえば、謁見の場と違い、あまり緊張しないで話せる気がする。もしかして、あの威圧のようなものも、試練のようなものだったのだろうか。


『さて、加護について説明しよう。あれを』


暫くすると執事風精霊が箱を持ってきた。女王様が箱から首飾りを取り出し、私に手渡してくれた。


『これは我の加護を得た証じゃ。特に力はないが、持っておけ』


この館の入り口にあった紋章と思われる意匠があり、黄金色に輝く石がついていた。


「有難うございます。こちらの意匠は、女王様の紋章でしょうか」


『そうじゃ。今後はお主も使って良いぞ。あと、その石は、お主の属性を表す』


なるほど、私が全属性だから黄金色なのか。なら、エスメターナ様は、青色のものを貰ったのかしら。


『我とお主の間に、念話の回線を繋いだ。困ったことがあれば、話すことを許可する』


「それは光栄に存じます。お心遣い、有難くお受けいたします」


『あと、精霊の使役についてだ。……説明せい』


また説明を執事風精霊に投げた。ということで執事風精霊から説明を受ける。まず、魔法はこれまでのように使えるそうだ。また、精霊と感覚を同調させることが出来るようになるそうだ。妖精族が使う本来の精霊術は、やはり人間の言う精霊術より高度らしい。


そして、女王様の加護を得た者は、精霊と体の一部または全部を同調させることにより、各属性にそれぞれ1体いる大精霊と同格の存在として扱われるようになるらしい。この時には、精霊と同様に、自然の流転を司ることが出来るそうだ。これには多量の魔力が必要だが、私なら慣れれば問題なくできると言われた。


何やらとんでもない能力の気がするが、今度試してから考えよう。なお、女王様の加護を得た者に対して、精霊が危害を加えることは禁止されるらしい。つまり、私に危害を加えるとみなされた魔法は、発動されないそうだ。魔法攻撃を気にしなくて良くなるのは、物凄く有難い気がする。


それらの使用法やら、念話のやり方などを聞いて、執事風精霊の説明は終了した。有難うございました。




その後、少し女王様と世間話をした。ただ、女王様と私では、少し世間のスケールが違ったようだが。


『そういえば、エスメターナは兄が一番大事だと言っておったのう』


突然300年前の偉人の話をされても、私はどうすればいいのか。


「エスメターナ様の兄君と言えば、我が国の初代国王陛下ですね。さぞ素晴らしい御方だったのでしょう」

とりあえずそう言ったところ、衝撃の事実を女王様がのたまった。


『あ奴は兄を好いておったからのう。兄以外のものになるのは嫌じゃと言って、独り身を貫いておったわ』


は?何それ?聞いてないよ!それは所謂ブラコンをこじらせたアブない人では……?


「え……っと、エスメターナ様は、精霊導師の使命の為、独身だったと伺っておりましたが……」


『それは単なる言い訳じゃ。我は別に婚姻を妨げたりせんわ』


それは……王妹殿下が結婚を拒否されるとは……周りの方々、さぞかし大変だったでしょうね……。


『あ奴の兄への想いが強かったからこそ、我も加護を与えたのじゃがな』


なるほど、それだけ兄君を愛していた、ということか。エスメターナ様は、精霊導師として初代国王陛下の治世を支え、建国直後の荒れた国内を復興させた最大の功労者であり、300年経った今も、我が国では伝説の英雄だ。


初代国王が崩御され、その後を追うようにして亡くなったとされている。今際に「精霊達よ、今後もこの国をお願いします」と言ったそうで、だから我が国は、他国に比べて精霊術士が多いと言われている。彼女にとって国は、兄君との間に出来た子供のようなものだったのだろうか。そのような事を考えながら


「次の世では、兄君とは他人として巡り合い、結ばれていたら良いですね」


と何の気なしに言ったところ、また女王様の爆弾発言が飛び出した。


『お主は、前世にはそのような者がおったのか』


女王様は、私が前世の記憶を持つ転生者だということを知っているようだ。一瞬で頭が冷えた。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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