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第262話 ウェルスカレン公爵の襲爵の儀に参加した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今週は王太子夫妻の1回目の各領視察を終了し、王都に戻られる。その際、併せて西公やフェルドミナーク様も王都にやって来て、襲爵の儀を行うらしい。


領主の襲爵の儀は、通常は陛下が任命する形で執り行うそうだ。まあ、その方が、本来あるべき姿なのだろうけど、不幸があったために襲爵する時などはとりあえず領内で儀を行い、落ち着いたら王都にやって来て、陛下に謁見するという形も許されているそうだ。


ちなみに、お祖父様からお父様に代替わりした時も領地での襲爵だったらしい。お祖母様が亡くなった時のお祖父様の悲しみは深く、領主としての仕事を続けることはもとより、王都まで行ける状態ですら無かったため、手続きだけして後からお父様が王都に謁見に来たという話だ。人は必ず死ぬわけだから、そういったこともあるのだろうけれど、あまり見たくはないものだな……。




王太子夫妻が戻られる日となった。この日は朝から王都の大通りは警備が厳重になった。基本的に陛下や王太子殿下が王都を出る時や帰って来る時は、パレードの様になって民衆が集まるからね……。今回王都を出られる時は、私については巡回助言の為に王都にはいなかったけれど、同じような感じだったらしい。まあ、これも権威を高めるための活動らしいから、今後もやっていくのだろう。


書類を確認しつつ、王太子殿下達が王都に戻られる頃に、風精霊と感覚共有し、王都入口付近に飛んで行き、様子を確認した。


暫くすると、入口付近に衛兵達が集まった。どうやら、王太子殿下達の馬車が到着したらしい。警護の騎士隊が入口から整列した状態で入って来る。衛兵達は、王太子殿下達に敬礼っぽい動作をしていた。


王太子殿下達の乗っている馬車に続いて、西公の馬車もいる。その後も騎士隊が続いて入って来て、そのまま王城に向かって行進している。道端の民衆は、王太子夫妻に対して手を振ったり、歓声を上げている。特に怪しい動きをする者も無く、王太子殿下達は、入城した。


さて、私については襲爵の儀に陪席することになっているので、感覚共有を解いて、謁見の間に移動した。




謁見の間にて、他の陪列者に混ざって様子を見ていると、西公とフェルドミナーク様が謁見の間に入場し、定位置まで前進し、跪いた。西公は小冠を身に着け、短めの王笏を持っている。


暫くすると、陛下と大司教台下が入場して、陛下は玉座の位置に、大司教台下は少し離れた位置に前進した。そして、儀式を統制する侍従の言葉で、襲爵の儀が始まった。


「ウェルスカレン公爵 襲爵の儀」


「ウェルスカレン公爵、前へ」「はっ!」


西公が、陛下の御前に出て、再度跪いた。


「ジャスクナード・ウェルスカレン。これまで良く領を治めてくれた。その功績は、後世まで語り継ぐに相応しいものであった」


「偉大なる我が王よ! 我が忠誠を御覧戴き、この身に有り余る幸せでございます。民と地を奉納致しました後も、偉大なる王の威徳を語り継ぎましょうぞ」


そう西公が言った後、小冠を頭から取り、王笏と一緒に陛下に差し出した。陛下は更に近付いて小冠と王笏を受け取ると、それに合わせて近付いて跪いた侍従に小冠と王笏を渡した。侍従は盆を掲げ、それらを受領する。その際、陛下は盆に元々載せてあった勲章を取った。


「そなたの功績を讃え、極光輝勲章を授ける」


陛下は、公爵位にあった者に対してその功績を讃える勲章を西公、もとい、ジャスクナード様に授与した。


「偉大なる我が王よ、身に余る光栄に存じます」


そうジャスクナード様は言って勲章を受け取り、右手で勲章を持ち、そのまま胸の前で右手を止めた。陛下は元の位置に戻り、その後にジャスクナード様も立ち上がって元の位置に戻り、跪いた。


「フェルドミナーク・ウェルスカレン、前へ」「はっ!」


フェルドミナーク様が、陛下の御前に出て、再度跪いた。


「フェルドミナーク・ウェルスカレン。公爵の相続を認める。そして、ウェルスカレン領を統治せよ」


「偉大なる我が王の、輝かしい治世の一隅を担えるとは、我が身に有り余る幸せでございます。身命を賭して、偉大なる王の威徳を領内に下知致しましょう!」


陛下がフェルドミナーク様の前にお出でになり、先程の小冠と王笏を侍従の差し出す盆から取り、小冠をフェルドミナーク様の頭に乗せ、王笏を手渡した。そこでフェルドミナーク様、もとい、新西公が宣誓した。


「偉大なる我が王よ。私フェルドミナーク・ウェルスカレンは、偉大なる王より賜りし小冠と王笏の輝きにより、領民を導き御代を讃え、務めを奉ずることを、御前にて誓います」


陛下は頷かれて、玉座に戻られた。西公達は退出し、襲爵の儀は終了した。




さて、この後は西公王都邸で、襲爵の祝宴なのよね。私も一応呼ばれているから参加させて頂くわけだけど……事前の情報によると、少々面倒な人も来るようだから、気を付けないとね。


それから休みを取って家に戻り、準備をして西公邸に向かった。




西公邸に到着し、会場に案内され、暫く経つと現・前西公が入場し、挨拶の後、祝宴が始まった。


とりあえずは現・前西公の所に行って挨拶をした。なお、こちらの祝宴は王都に住む人達にも周知するという意味で行われるので、一応エイムランデ様とペルシャ様もこちらに来ているが、そこまで大々的ではなく、王都在住の領主、西公と縁の深い貴族しかいない。本番は、西公府に帰ってから行われる祝宴で、そちらは総力を挙げて執り行うそうだが。


王族代表で参加していたオスクダリウス殿下や、王都在住の領主達にも挨拶をして、ウェルスカレン領出身の精霊課長の所で話をしていると、先日ロイドステア大使としてこちらに着任した、帝国第2皇子がやって来た。


「導師殿、このような良き日に、貴女の様な美しき花があるというのは、ロイドステアは何と幸せな国だろうか」


「大使殿、お声掛け頂き有難き幸せですわ。この度は大使に就任されましたこと、誠に目出度きことでございます。貴国との絆が一層深まる事を願っておりますわ」


「絆を深めるには、貴女と私の縁が強くなるのが一番なのだが……それは当面難しいのでな。ただ、我が国については、最近精霊への注目が高まっているため、精霊に造詣の深い貴女にも、今後意見を伺いたいのだが、良いだろうか」


「承知致しました。業務上問題無い時であれば、いつでもいらして下さいな」


「そう言って頂けると助かる。では、改めて伺わせて頂こう」


第2皇子は去って行った。今回は以前のような、こちらを値踏みするような感じではなく、ただ挨拶に来ただけの様に見えた。それでも、今後こちらを訪ねて来ることがあるのであれば、色々情報を入手しておかないといけないかもね……。そうだな、丁度空いたみたいだし、ペルシャ様の所に話しに行ってみよう。


「西公夫人、お疲れではございませんか?」


「いえいえ、この位で疲れていては、領での祝宴にはとても対応出来ませんわ」


「それは宜しゅうございました。少々お話したいと思いましたので」


「まあ、フィリス様。宜しいですわよ」


「実は、先程帝国のロイドステア大使殿からお話がございまして、今後は精霊に関してご質問に来られることがあるとのことでしたので、その際に必要になりそうな、帝国側のお話などを伺いたいと思いまして参りましたのよ」


「確かに、帝国のことであれば、外務省より我が家の方が詳細な話は伝わって参りますわね。では、行政舎の担当に伝えておきますので、そちらに問い合わせて下さいな」


「お力添え頂き、感謝致しますわ」


「いえいえ、こちらもフィリス様には大変お世話になっておりますし。そうそう、5月中旬から下旬にかけて、アルカドール領に伺わせて頂くことになりましたわ」


「是非我が領を楽しんで頂きたいですわ。その頃は一番暑い季節ですから、避暑に最適ですわね」


「ええ。その他、砂糖や精塩だけでなく、色々取引できそうなものを拝見させて頂く予定ですのよ」


「それは有難いですわ。宜しくお願いします」


ついでに色々領の話をしているうちに、祝宴の時間が終了になった。まあ、今後は更に西公家と連携を深めていかないとね……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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