第258話 レイテアの婚姻式に参加した
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週末の夕方となり、魔法省から自宅に戻った。ただし、今日はこれからお父様達を迎えに行かねばならない。明日、レイテアの婚姻式及び祝宴に参加するからだ。
レイテアが男爵になってから、うちが寄親という関係になっていたからね……。当然、私も参加しますよ? 内心的には友人枠なのだけれど。何せ、結婚が近づくにつれて、レイテアが不安がって
「本当に私などが、彼の妻になっても良いのでしょうか?」
などと、早朝の鍛錬時に聞いてきたりしたこともあったので、テルフィと二人で宥めたりもしたしね……。
というわけで早速両親とお兄様を迎えに行った。お父様とお母様は宴への参加だが、お兄様は魔法研究所に用事があるため、併せてやって来たのだ。魔力増幅の件らしい。ただ、迎えに行った時に、お父様から
「フィリス、我々を領に送った際に、内密で話しておきたいことがあるので、そのつもりでいてくれ」
とこっそり言われた。はて、何のことだろう……?
トリセント側の参加者達は、馬車で王都までやって来ていた。レイテアのご両親については、うちに来ていたので、お父様達と挨拶をして、宿泊する部屋に戻った。まあ、今日は親子で積もる話もあるでしょうし、ゆっくり話し合って下さいな。
久しぶり……というほどでもないが、こちらも折角の家族との食事だ。領の様子などを聞きながら楽しく食べさせて頂いた。
今日は朝からレイテアは式の服装を着て、大聖堂に隣接している式場に向かっている。大聖堂で婚姻式を行うのは王族だけで、大聖堂に隣接している式場があり、通常はそちらを使うそうで、貴族用と平民用に分かれているらしい。当然今回は貴族用の式場だ。参列者も貴族が多いから、内装が平民用とかなり異なっているそうだが、今回初めてここに来たので、違いは判らない。
婚姻式については、参加者は儀礼的な服を着ることになっているので、私は魔法省の制服を着て、お父様とお母様は領主と領主夫人の儀礼用の服を着て、参加している。新婦であるレイテアは控室で待機しており、一応挨拶をさせて貰った。レイテアは白いシンプルなドレスを着ており、白百合の冠を使うようだ。
式は恙なく行われた。新郎家と新婦家の長の立ち合いのもと、高位神官が祝詞を新郎新婦に向けて唱えていた。それが終わると新郎新婦に問いかけた。
「サムスワルド・シンスグリム。汝は、この女を妻とし、神の教えに従い、共に生きると誓うか」
「誓います」
「レイテアーナ・メリークルス。汝は、この男を夫とし、神の教えに従い、共に生きると誓うか」
「ち、誓います」
「両家長よ、新たな夫婦の誕生を認めるか」
「認めます」「認めます」
「神の御名において、婚姻は成った。新たな夫婦の誕生に、祝福を」
高位神官のその言葉で、私を含めその場に居合わせた人達の拍手の音が、式場内に鳴り響いた。
その後は、新郎新婦は王都内の決められたコースを馬車で進み、道を歩く人達から祝福の言葉を受けるというイベントを行い、その他の人は祝宴への参加準備の時間となった。一旦家に戻ってクラリアにドレスを着せて貰い、同様に着替えたお父様達と一緒に祝宴会場であるシンスグリム子爵邸へ向かった。
会場に到着し、参加者を見てみると、トリセント関係者以外はやはり軍関係者が多い。また、騎士学校長や主任教官もいた。こちらはレイテア絡みかな。とりあえず、知人には挨拶しておこう。
挨拶をしているうちに、主役の二人とその両親達が登場し、挨拶をしてから祝宴が開始された。
見た感じ、新郎新婦双方の両親達は、結構打ち解けているようだ。まあ、どちらも結婚に乗り気でない子供にやきもきしていたらしいからね……気が合ったのかもしれない。
新郎の席には結構荒っぽい挨拶をしていく人達がいるが……悪意は感じないので、まあ大丈夫だろう……と、周りの観察をしていたところ、騎士団長が話し掛けて来た。
「導師様、やっとあいつが身を固めましたぜ。これで漸くあいつに団長の座を譲れますよ」
「まあ。新婚なのですから、暫くは余計なことをしてはいけないのではありませんか?」
「それはそうなんですがね。俺だって何年も待ったんですよ。全く、人の上に立つなんて柄でもないのに、たまたま武術大会で勝っちまったのが運の尽きですよ」
「武術大会で殿堂入りされた方にそう言われては、周囲が困りますわよ」
「いえ、奴がまだ対戦相手にいなかったから勝てただけですよ。まあ、今後はこの国の剣術は変わっていく。あの夫婦がいますからね」
「ええ。レイテア自身がそれを望んだからこそ、私も専属護衛の任を解いたのですわ」
「そういえば、次の専属護衛も女性だとか。筋は良いのですか?」
「そうですわね……真面目ですし、物覚えも悪くありませんが……あまりレイテアと比べず、彼女の強みを生かせるように鍛えていきますわ」
「シンスグリム子爵夫人は、今なら判りますが、突出した才能を持っていますからな……あれで騎士学校卒業当時は芽が出ていなかったのだから、この国の剣術や教育制度が全く対応していなかったのは明らかですが、その辺りも改善されつつありますからな。この前入って来た新人達を見て、皆戦々恐々としていますよ」
「競い合えることが実力を伸ばす一番の環境ですからね。私も早くテルフィを対戦相手となれるように鍛えないといけませんわね」
「おっと、ここにもとんでもない方がいらっしゃる。では、私めはこれにて失礼」
騎士団長は去って行った。あの人とは気が合うのか、知らずに話し込むことが多いな……。
ふむ、新郎新婦の所が少し空いたな。話しに行こうか。
「改めまして、おめでとうございます」
「お嬢……フィリストリア様、有難うございます」
「フィリスで良いわ。ご両親、とても喜んでいらっしゃるようね」
「ええ。あの笑顔を見ているだけで、婚姻して良かったと思えますよ」
「もう、そこは隣の旦那様でも宜しいのではなくて?」
シンスグリム子爵は、酒も入っているせいか、非常に上機嫌だった。まあ、まだ理性はあるようだから問題は無いだろう、多分。
「彼とは今後一生添い遂げますので、焦って仲良くなる必要もありませんからね」
微妙に複雑な返しだが、まあ、仲良くやってくれるのだろう。
「そういえば、来月から正式な教官になると聞いたわ。暫くは女主人として館を回すのかと思っていましたわ」
「……そういったことは性に合わないと判りましたので、屋敷の者に任せることになりました。ですので、出来ることをやらせて頂きます」
「まあ、二人が納得しているのであれば、宜しいと思いますわ」
「ええ。今の所、彼とは対戦している時が、一番楽しいですね」
……やっぱりそうか。なお、レイテアは、シンスグリム子爵に魔力波を教えているらしい。確かに彼が魔力波を習得したら、別次元の剣術家に進化しそうで、楽しみではある。
「仲の宜しい事で。では、時間が空きましたらこちらに鍛錬に来させて頂きますわ。まだテルフィでは私の対戦相手は出来ませんから」
「いつでもお待ちしておりますよ、フィリス様」
こうして、レイテアはシンスグリム子爵夫人となった。恐らく彼女は、今後多くの人に剣術を教え、鍛えて行くのだろう。そう考えると、何だか自分の事のようにワクワクして来た。私も頑張らないとね。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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