第252話 精霊術士集中鍛錬が始まった
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今日から精霊術士集中鍛錬がある。私は当初の3日間については同行して、鍛錬の場の設定や調整などを行うわけだが……とりあえずは魔法省からウェルスカレン公爵王都邸に移動し、精霊術士達やその他スタッフを転移門で五月雨式に転移させ、最後に自分も含めて転移させた。
流石に魔力が30万あってもなかなか厳しいものがあった。転移1回あたり3万くらいは使っているからね……。
転移先で、既に色々調整を始めていた精霊課長と一緒に、西公に挨拶をした後、皆の宿に行って預かっていた荷物を出していった。ちなみに今回は、途中で王都に戻ったりするので、お土産がある場合はその際に併せて運ぶということにさせて貰った。
その後は各鍛練場所の巡回だ。今回については、前回行った資料班の人達がいるので、準備にはあまり困らなかった。まあ、地組の土壁を作ったり、水組の泉の清掃を行ったりはしたけれども。
なお、今日から単独で私の専属護衛をやっていたテルフィは、緊張していたようだが、特に問題無かったようだ。レイテアについては、結婚まではうちの王都邸に住むが、色々準備があるので、シンスグリム子爵邸に毎日通う予定だ。式は来月になるから、その際は参加させて貰う予定だ。
前回同様、夕食は西公達と一緒に取ったが、紙事業は順調のようで、工場を増設しているところらしい。また、砂糖については、輸出だけでなく領内でも使うため、取引を増やしているようだ。研究所のレシピも幾つか買ったらしく、食後のデザートが出て来た。今日はプリンだったが、チェルシー様が特に気に入っているそうだ。
今回、婿入りしたフェルドミナーク様も一緒に夕食を取っていたが、見た感じ普通になじんでいるようだった。
集中鍛錬初日はなんだかんだとやることがあり、結構疲れたので、夕食後は早めに休ませて貰った。
2日目は、精霊課長と一緒に各組の状況を確認することになっている。朝食後、風組から様子を見に行った。風組の13名は、公府の郊外にある、一日中風が吹いている場所で鍛錬を行っている。まだあまり気温が高くないため、1日中いると案外寒いので、適宜暖を取りながら鍛錬を行うそうだが……。
現場付近に到着すると、何台か馬車があり、護衛の人達がいた。暫く前から、鍛錬を始めているそうだ。案内されて現場に行くと、ロドニィ達が風に当たりながら、活性化などを行っていた。ロドニィは私達に気付き、近付いて来た。
「導師様、課長、現在鍛錬を実施中です。今のところは異状ありません」
「ご苦労様。何か困っていることはないかしら」
「今のところは特にございません。鍛錬要領も、資料班の人達から聞きながらやっております」
「1日中ここにいると、今の季節は体調を崩しかねないから、しっかり皆を見てやって欲しい」
「はい。交代で定期的にあちらの焚火に行く事にしておりますが、その他、私も適宜確認したり、近くにいる者同士で顔色を見ながら注意喚起を行うようにしております」
どうやら問題無さそうだ。私と精霊課長は、暫く風組の様子を見た後、移動した。
次は水組だ。温泉に漬かりながら行っているから、結構楽しいようだが……現場付近に到着すると、やはり護衛達が近傍で護衛を行っている。私達は温泉の方に行ってみた。すると、何人かは温泉に漬かりながら活性化を行っていたが、水組は確か15名だったから、少ないな。とりあえずレミファがいたので状況を聞いてみよう。
「レミファさん、組長のミクリナさんはどちらへ行かれているのかしら?」
「ど、導師様と課長……えーと、ミクリナ組長は、あちらの方で体力練成を行っていると思います」
「分かりました。有難う」
まあ別に体力練成を行っていても問題は無いのだけれど……教えて貰った方向に進むと、広場のような場所があり、確かに何人かが体操などを行っていた。ミクリナもいたので状況を確認してみる。
「ミクリナ嬢、状況を教えて欲しい」
「導師様、課長、お疲れ様です。実は、泉に全員漬かってしまうと少々手狭ですので、5名ずつに分けて、泉、体力練成、休憩を順番に行っているのです。今のところは異状はございません」
なるほど。確かに1日中活性化を続けられるわけではないし、そういった意味では効率的だな。
「承知致しました。引き続き頑張って下さいな」
暫く水組の様子を見ていたが、特に問題無さそうだったので、次の火組の所に移動した。灯台にある大きな魔道具の所で鍛錬を行っているんだよね。今回は前回より大幅に人数が増えて、10名でやっているから、水組の所みたいに、何か処置を行っているかもしれないな……。
灯台に到着し、様子を見に行ってみると……皆頑張って鍛錬してはいたのだが……とりあえずクロティナを呼んで、状況を確認した。
「クロティナ嬢、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!まだ始まったばかりですし、もう少し頑張ります!」
「クロティナさん?少々体がふらついておりますわ。一度休憩を取った方が宜しいですわよ」
……どうやら、少々頑張りすぎたようだ。熱中症などに関して、休んだ後に説明しておこう。
ということで、一旦皆に出て貰い、涼しめの所に集め、休んで貰った。ついでに昼食も取ったりして長めに休憩を取った。休憩の終わりに、熱中症予防に関する説明を行った後に、地組の方に移動した。地組は壁の中で砂に埋まっている筈だ。16人が埋まっているのは、なかなかにシュールなものがあるが……様子を見させて貰おう。
鍛練場所まで歩いて行き、組長のグルミラがいる所でしゃがんで話をした。
「グルミラさん、変わりはないかしら?」
「導師様、課長、地組は異状ありません。順調に鍛錬を行っております」
まあここは、問題無さそうだ。暫く地組の人達と話をした後、西公邸まで戻った。
自分に割り当てられた客間で休憩していると、精霊課長が入って来た。
「導師様、実は先程、相談を受けまして、もし可能であれば、ウェルスカレン領に2名いる精霊術士についても、一緒に鍛錬をさせて貰えないか、という内容です」
「確かお二人は、行政官夫人でしたわね。現状はどの程度の能力があるのでしょうか?」
「お二人とも、アンダラット法は習得しているということです。以前から鍛錬したいとは思っていたそうなのですが、実質一人で行うのは敷居が高かったようでして」
確かに、一人ぼっちでやるより一緒にやる人がいた方がいいか。今回は既に人が多いから、2名増えたところで支障は無いだろう。交流も出来るから、断る理由も無いな。
「宜しいのではないかしら。いつから参加されるのでしょうか?」
「出来れば明日から参加したいとのことです」
「では、地組と水組の方には、連絡しておいて下さいな」
「承知致しました」
次以降も、近傍の領に精霊術士がいる場合は、誘ってもいいかもね……。
その日の夜は、地精霊と感覚共有して、地組の宿にお邪魔して、皆の様子を見て、話したりした。やはり砂に埋まるのは抵抗があるらしい。今回は早速壁を作っておいて良かったよ。
3日目にも、各組を見て回ったが……地組と水組は、早速行政官夫人達が精霊課の精霊術士に混ざって鍛錬を行っていたけれど、結構仲良くやっているようだ。問題無さそうなので、私の方は一旦王都に戻らせて貰った。
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