第251話 光魔法を魔法研究所に情報提供した
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年末年始休暇が明け、今日から通常勤務だ。とは言え、今日の所は休暇間の異状の有無を確認したり、挨拶回りが主体になるけれど、来週と再来週に精霊術士集中鍛錬があるため、そちらの話も最終的な調整が進む筈だ。今回の集中鍛錬は、短期間だけれど人数が多いから大変だね……。
実用試験名目で借りている空動車で出勤したが……これまではお兄様が学校に行くのを見送った後に出発していたから、その辺りが変わったな……と思った。
出勤して魔法大臣に報告に行ったり、今年お世話になりそうな大臣に挨拶に行ったり、各課に様子見に行ったりしているうちに、午前中が終ってしまった。そういえば、新人精霊術士のレブネアが、精霊課に顔を出した時にこちらに挨拶して来た。貰ったばかりの制服を着ていたので、多少大きい感じだったが、そのうち慣れるだろう。
午後は執務室で書類を見ていたところ、精霊課長が入って来た。
「導師様、今度の精霊術士集中鍛錬の参加者について報告致します」
参加する精霊術士とスタッフの名簿を精霊課長から貰い、目を通した。今回は精霊術士の参加者が54名と、前回より大幅に増えているため、それに合わせて資料班と警護班もほぼ参加するようで、宿屋が5つほど貸し切りになるそうだ。
「今回は、アンダラット法を覚えている所から始めますから、期間自体は短いですが、多くの者が魔法強化まで到達しそうですわね」
「はい、ですので巡回助言などの業務については、2月以降に開始させて頂けますし、余裕を持って分担させることが出来ます」
これまでは人数がいない分、早く始めて遅く終わっていたからね……。あと、精霊術士達のお願いも精霊が良く聞いてくれるようになったそうだから、助言の効率自体も上がるらしいし、良い事だ。
ちなみに、入ったばかりのレブネアも名簿に載っていた。既にアンダラット法を習得していたそうで、ならば入れない理由は無いということで、急遽参加者に追加したそうだ。まあ、アルカドール領の魔法教育のおかげかな。
あと、レイテアとテルフィの状況も見に行った。とは言っても、私が行った時には各所への顔合わせは終了し、待機場所の使い方などを話していた。ここは時間が空いた時は、鍛錬も出来るから結構いいんだよね……。
次の日、国防省の方から空動車の実用試験のスタッフがやって来た。空動車に関する意見を聞きに来たそうだ。基本的には実用試験のスタッフが準備した質問用紙に、回答を書いて提出するのだが、自由意見なども書いて良いそうだ。ついでだから色々書いておこう。
あと、借りていた空動車は状態を見るため、返すことになった。早く自分の空動車を持ちたいものだ……。
数日は大きな問題もなく業務を行っていたが、今日は精霊術士集中鍛錬の事前会議が行われるということだったので、参加させて貰った。流石に今回は参加者が多いため、統制をとるのも一苦労のようだ。
まずは精霊課長から、概要の説明があった。1月19日、前3時に魔法省庁舎を出発し、6台の馬車を3往復させてウェルスカレン公爵王都邸まで前進し、到着後、私が転移門で西公府ウェルナードにあるウェルスカレン公爵本邸まで転移させる。
今回は6回に分けて転移させるので大変だ。最初の5回は私自身は陣の外から手を伸ばして魔力だけ与えて他の人達を転移させ、転移した人達はすぐに陣から出て貰う。でないと転移門が動かないからね……。
転移後は各属性組に分かれて行動し、本邸から公府内の宿まで移動し、荷物整理及び昼食後、各属性の鍛錬場所の確認だ。
20日から34日までは鍛錬期間で、最終日である35日は身辺整理と移動日だ。この際、34日夜は公爵本邸で、前回同様慰労会が行われると聞いている。また、今回については全員アンダラット法を習得しているため、最初から属性のエネルギーの感受性を高めて行くことになる。
精霊術士は汚れても良い、運動の出来る服を準備し、水属性の者は、それに加えて水着も準備する必要がある。前回の教訓から、火属性の者も水着を持って行くようだ。
それと、属性組毎に集まり、今回の組長を選定した。風と水は年長者がいたのですぐに決まったが、火と地は同年代ばかりだったので決めづらかったようだ。
結局火はクロティナ・シャノン、地はグルミラ・シトガンになった。クロティナはうちの領出身なので結構話しているが、グルミラはカウンタール領出身ということくらいしか覚えていない。
風はロドニィ・ガーゼル、水はミクリナ・マニソルになった。この二人と、他の二名を含めた四名は、以前海兵団でひどい目に遭っていた。まあ、こちらに戻って来てからは、明るく勤務してくれるようになったが……体制が改善されて本当に良かったよ。
なお、精霊課長は全日参加だが、私については19~21日、28日、34~35日に参加する。まあ、今回は様子見以外にやることがない、というのが理由だ。
その他、公府の概略の説明を行って、会議は終了した。
今日は省の定例会議だ。特に、年が明けて初めての会議なので、改めて挨拶したり、変化事項を連絡したりした。また、精霊課からは来週の精霊術士集中鍛錬の話をしたりした。その他、魔法教育の要領が変わっていくことなどが話題になった。
週末となった。今日については、光魔法の件で魔法研究所の方に顔を出すことになっている。魔法研究所に到着し、所長に出迎えて貰ってから、火属性研究室の方に向かった。所長と一緒に室長室に入り、光魔法の説明をさせて貰った。
「……成程。火属性の力を直接光に変える魔法ですか……生活を便利にするという意味では大きな需要があるでしょうが……そこまで危険な魔法なのでしょうか?」
「ええ。この魔法を開発して思ったのが、暗殺者に使用される危険性でした。ですので、何かしらの対策を思いつくまでは、こちらに情報提供することすらためらわれたのですわ」
「……一度見せて頂いても、宜しいでしょうか?」
「では、実験場の方で一通りの光魔法をお見せしましょう」
所長、室長、数名の室員と一緒に実験場の方に移動して、全員にサングラスを渡して、基本的な光魔法から使っていく。最初は皆驚いていたが、光の色を変えたりしても、それほど強い反応は得られなかった。
「所長殿、次は収束単色光線魔法をお見せしますが……壊れても問題無い的はございますか?」
「では、あちらの木の的にお願いします」
ああ、あれね……では、軽く撃ってみよう。えいっ。
「……導師様、あ、あの木の的に、いきなり穴が、開いたのですが……あれが収束単色光線魔法ですか?」
「ええ。火属性の力を一旦集める必要性はございますが、さほど時間もかからず攻撃できますわ」
「こ、これが最大の威力でしょうか?」
「いえ、今のはほんの少し力を集めただけですから。力の集め方によって威力が変わりますわ」
今度は少しエネルギーを多めにしたところ……柱を貫いてしまったためか、的が壊れてしまった。これを見た皆は、かなり動揺したようだ。
「……確かにこの魔法は、非常に危険ですね。導師様が危惧されていることが、理解出来ました……」
「防御については、このような障壁を作成することで可能となります」
緑の障壁を作って見せたが、レーザーの危険性を知ったからか、食いつきが良い。
「私が知るところの光魔法については、以上となりますが、宜しいでしょうか?」
「は、はい、是非研究させて頂きたいと思います。また、この魔法の知識は様子を見ながら伝えさせて頂きます」
「通常の光魔法は、むしろ周知した方が宜しいと思いますわ。危険なのは、今の所は収束単色光線魔法くらいですから」
「そ、そうですね。では、今後研究担当者を決め、研究させて頂きます」
それから、一応の理論などを教えて、魔法省に戻った。さて、しっかり光魔法を習得してくれるだろうか……?
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