第248話 ルカとネリスにレーザー魔法を教えた
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今日は午前にルカとネリスがやって来る。もっと早く来て貰おうと思っていたのだが、予定が合わなかったので、この日になったのだ。朝食後、準備をして待っていたところ、二人がやって来たので談話室で話をした。
「お二人とも、光魔法の習熟の具合は如何かしら」
「フィリス様、私については魔法戦でご確認頂いた通りですわ」
「フィリス様、私もこのように、頑張りましたわ!」
ネリスはそう言って、壁に向かって様々な色の光を当てた。なかなか習熟しているようだ。
「実はお二人には、光魔法について、教えていないことがありますの。それを伝えようと思い、来て頂いたのですわ」
「……フィリス様、もしや、光魔法を用いて攻撃を行う方法でしょうか?」
「あら、ルカ様、良くお分かりになりましたわね」
「ええ、何となくですが、光の調子を合わせる方法があれば、火属性の力を集中できるような気がしまして。火属性の力をそのまま放っても威力があるのに、集中させたならば、強力な攻撃手段になり得るのでは……と思い、色々試したのですが、うまくいかなかったのです」
「それに気付くとは、流石ルカ様ですわ。……今からその方法を教えましょう」
まず私は火精霊に姿を見せて貰い、そこからレーザーについて説明した。
「……まさか、その様な方法で力を集中出来るとは……」
「一度外で試してみましょう」
私達は庭に出て、あらかじめ作成していた的用の岩に、まずは私が手本としてレーザーを撃った。
「あの岩に、瞬時に穴が開きましたわ!」
「何と強力な魔法でしょうか! 流石はフィリス様ですわ!」
その後二人にも、火精霊を見せてイメージを持たせながらレーザーを試して貰った。以前に色々試していたらしいルカは、概ね出来たようだが、ネリスはもう少しかな。
「あと、お二人には、この魔法の防御法もお教えいたしますわ。これは、ルカ様の魔法戦を見ていたおかげで考案できましたのよ?」
「まあ、その様に仰って頂けるとは光栄ですわ。しかし……どのように防御するのでしょうか?」
「ええ。光の性質を利用するのですわ」
私はそう言って、対レーザー用の防御壁について説明した。
「成程……単なる属性の力を使用した壁では、収束単色光線に貫かれてしまうところを、色同士の関係を利用して、力を吸収することで防御する……私にも試させて頂けませんか?」
「ええ。ではルカ様、あの的に向けて収束単色光線魔法を撃ってみて下さいな。私が的の前に防御壁を作りましょう。まずは壁が無い状態で行って下さい」
「……フィリス様の魔法に比べると威力はかなり落ちますが、それでも岩を削りますわね」
「では、次に様々な属性の力を使った防御壁を作りましょう。最後に『風精霊の緑』を使った防御壁を作りましょう」
私は各属性のエネルギーを使った防御壁を作ったが、ルカのレーザーに貫かれてしまう。ただし、最後に対レーザー用の防御壁を作ったところ、これまでは貫通していたレーザーが、防御壁に当たると吸い込まれたかのように消えて行った。
「まあ! 確かに他の防御壁とは違い、貫通しませんわ!」
「この収束単色光線魔法は、非常に危険ですから、対抗手段を講じないままで広めてしまうのは、問題があると思っておりました。しかし、このように対抗手段も講じることが出来ましたので、近々魔法研究所に情報提供させて頂こうと考えているのですわ。その他、ルカ様達からも習得に関する情報などがあれば、魔法研究所に提供して頂きたいと思っておりますの」
「フィリス様はそのような考えを持たれていたのですね……流石ですわ……」
「……では、風精霊についても、よくご覧になって下さいな」
私は風精霊にも姿を見せて貰い、ルカとネリスに対レーザー防御壁について練習して貰った。こちらについては、ネリスがあっさりと習得した。ネリスは案外器用なのよね。魔技士を目指しているからかな……?
そんな感じで、ルカとネリスへのレーザー及び防御壁の伝達は終了した。王都に戻ったら、魔法研究所にも情報提供しないとね……。
私が美肌魔法を教えて以来、お母様やメイド達は毎日魔法の習熟に励んでおり、その結果お母様は化粧の必要が無いほどの美しさを保っている。メイド達も自分達の肌が美しくなったのはとても嬉しい様だ。また、このことで密かにお父様も喜んでいるようだ。……まあ夫婦の仲が良いのは望ましいことだ。この分だと、残り塩がいくらあっても足りなくなるかもね。
また、お兄様に贈る鎧のパーツが漸く完成したので、セイクル市内の鍛冶屋に持ち込み、組み立てと最終調整をして貰うことにした。鎧については、下に丈夫な服を着る仕様になっているため、多少のサイズの融通は効くが、動かしやすさは専門の人がやらないといけないからね……。とは言っても、鎧のパーツを持ち込んだ時に
「お嬢様、この金属ではない、軽くて非常に丈夫な素材は一体何なのでしょうか?」
と、鍛冶師に質問されたけれども、そこは秘密にさせて頂いた。一応魔法銀も使っているのだけれどね。特に内側とか肌に接触する所は、アスベストみたいにがんの原因になる可能性もあるから、コーティングしてある。それでも従来の鎧よりは比較にならない程軽いから、大丈夫だと思うけど。
新年まで数日となったある日、コルドリップ先生から、温室の設置場所が決まったという連絡があったので領行政舎に顔を出した。コルドリップ先生が対応してくれて、担当者とともにセイクル市の外れにある空き地に移動した。
「ここに4棟、温室を作るのですか。この線の通りに作るということで宜しいのですね?」
「はい、その通りです。経始だけでもと、先に進めさせて頂いております」
どうやら、柱や枠組みは地魔法で岩化させて造成し、壁や屋根の主要な部分をガラス製にするらしい。なら、組み立ては他の人でも出来るから、私はガラスを必要分作ろうかな。
「では、私は板硝子を作りますわ。数はどの位を用意すれば宜しいのかしら」
「はい、一棟あたり、1トーチ平方のものを170枚準備して頂ければ、後はこちらで組み立てさせて頂きます」
「承りましたわ。ところで、完成した板硝子は、どちらに置けば宜しいかしら?」
「あちらの資材小屋に置いて頂ければ有難いです」
「ではそうさせて頂きましょう。これから作業に入りますわ」
ガラスだから、壊れることも想定して、1棟当たり200枚作っておこうかな。材料のケイ砂は既に準備してあるから、どんどん作っていこう。ちなみに私の場合、魔法で作らなくても、火精霊と地精霊との同化により作ることが出来るので、普通の人が作るよりも格段に簡単に作ることが出来る。
数時間で800枚のガラスを作って小屋に置き、コルドリップ先生に作業完了を伝えた。
「流石はお嬢様です……あの量の板硝子を作るには、何十人もの職人が一月かかって作れるかどうかと見積もっておりましたのに」
「精霊導師としての力を使うと、通常の者が魔法で作成するより簡単に作成出来るのですわ。ですので今後温室の所要が増えた時にも、時間があるならば助力致しますわ」
「有難き幸せでございます。その際は、宜しくお願いします」
これで今後は、いちごショートなども領で食べられるようになるかな?
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※造語
収束単色光線:レーザー
※単位
1トーチ≒0.9m




