第243話 帰省して色々状況を話し合った
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テルフィを専属護衛として雇用するための最終確認を終了し、アルカドール領に帰る準備中だ。とは言っても、着替えて皆が集まって来るのを待っているだけだが。
暫くすると、パティ、クロティナ、デラーナ、レミファ、ラステナの精霊術士5名が、うちから出した馬車に乗ってやって来た。ルカについても自分の家の馬車でやって来た。皆、結構なお土産を買っていたためか、荷物が多かったので、一旦異空間に収納して、談話室にて待機して貰った。
皆揃ったので、お兄様も呼んで、アルカドール領に同行する使用人や護衛達も含めて、転移門で本邸に転移した。
お兄様と私が本邸の玄関を通ると、屋敷の全員と、お祖父様が迎えてくれた。
挨拶を済ませた後、一緒に帰って来た皆に、荷物を渡した。皆の迎えの人達は既に来ており、私達に礼を言って、それぞれの家に帰って行った。その後、自室に戻り、部屋着に着替えてから、食堂に移動した。
サザーメリドの件があったため、そこまで久しぶりではないが、家族揃っての食事だ。学校や勤務状況に関する簡単な状況報告をしつつ、和やかに昼食を頂いた。
昼食後、談話室に移動し、アルカドール家としての情報共有の場が作られた。まずはテルフィの紹介ということで、一旦レイテアとテルフィにも顔を出して貰う。
「お父様、この者が、レイテアの後任として私の専属護衛を務めて貰う、テルフィ・ドロウズです」
「侯爵閣下、お初にお目にかかります。テルフィ・ドロウズと申します。精霊導師たるお嬢様の専属護衛という大変名誉ある任務でありますが、アルカドール家の名を汚さぬよう、精一杯努めて参ります」
「うむ。君のことは娘から聞いている。騎士学校も優秀な成績で卒業しているし、能力的には申し分ないと私も考えている。それでも、娘の立場上、様々な問題が発生する可能性があるのでな。メリークルス男爵や、当家の護衛達から業務をよく申し受けて、業務を遂行して貰いたい」
「お言葉、しかとこの身に刻み、励ませて頂きます」
そう言った後、レイテアとテルフィは退室した。なお、テルフィは今日の所はこちらで住む部屋に荷物を入れたり、レイテア達に屋敷内の案内をして貰ったりするそうだ。
テルフィの紹介も終わり、情報共有のための家族会議が始まった。
「カイ、フィリス、王都の状況はどうだった。特に、東公に関連した内容について教えてくれ」
「父上、現状としては、例の件で東公側の動きが変化し、特に、一族の者が王都から離脱を始めたため、影響力が低下しています」
「現財務大臣も来年初めには職を辞し、領へ戻ると伺っておりますし、東公夫人については、王妃殿下の年末の茶会にも、体調不良を理由として不参加でしたわ。そのため、各方面も困惑しているようですわ」
「……相当王家からの圧が厳しかったのだろうな。ところでフィリス、来年には王太子殿下の各領視察があると聞いたが、どのような予定になっているだろうか」
帰省前に、一度関連文書が回覧されていたから、概略の内容は覚えている。
「最初は西部、2月上旬から3月中旬にかけて、セントラカレン領から回るそうですわ。最後にウェルスカレン領を通った後、襲爵のために移動される西公、次期西公達と共に王都へ戻るそうですわ。次に東部、4月中旬から6月上旬にかけて、デカントラル領から回るそうですわ。我が領には5月上旬予定で来られるそうです。最後に北部、7月上旬から8月中旬にかけて、エルステッド領から回るそうですわ」
「成程。今から準備しておかねばな。ところで、その予定だと王太子殿下は東公領には5月中旬には入られるのだな」
「はい、その通りですわ」
「その頃までには、東公の去就も定まるということか。その関係上、改革派は、当分の間は活動を控え、ややもすると派閥の鞍替えを検討する可能性がある。カイは領にいるので問題無いだろうが、フィリスについてはそういった者達が、縁を結ぼうとして接触するので、十分気を付けるように」
なるほど、そういう見方があるわけか。接触と言っても、単に仲良くなるだけなら警戒する必要は無いけど、こちらの弱みを握ろうとしたりする輩もいるかもしれないからね……。
「承知致しましたわ」
「その他、私が王都にいる間に聞いた話だが、外国の間諜のうち、帝国とウェルスーラの手の者達の活動が王都で目立って来ているらしい。目的は不明だが、警戒する必要はあるだろう」
「承知致しましたわ」
「それとカイ、お前の婚約に関してだが……チェルシアーナ嬢との婚姻の話を進めている。決定次第発表するので、そのつもりでいるように」
「……っ、承知致しました……」
「お前にも考えはあるだろうが、婚姻自体は彼女の成人以降となる筈だから、まだ先になる。婚約以降は、可能な限り良好な関係を作って貰いたい」
お兄様は、承知はしているが、微妙な反応だ。もしかすると、気になる女性でもいたのだろうか……? でも、在学間にも浮いた話が無かったから何とも言えないな……私が知らなかっただけかな?
「ところで、王都での魔法の状況、特に重力魔法については、どのような状況なのかしら?」
「魔法学校では、オスクダリウス殿下や一部の教官以外は、まだ習得した者はおりませんでしたが、来年には、その有用性から多くの者が習得すると思われます」
まあ、年末魔法戦を観たならば、地属性の者なら絶対習得しようと思うよね……。あとは魔道具とかかな。
「重力魔法を使用する魔道具も出来ましたし、空動車の試作品も作られましたわ。こちらにも持ってきておりますので、後でお母様も試乗されてみては如何でしょうか」
「それは楽しみね。ところで、うちから研修に行かせている魔技士はどうかしら?」
「はい、王都の魔技士と一緒に研究に励んでおりましたわ。また、独自に空動車の研究を進めるなど、意欲もあり、期待できると思いますわ」
「それは良かったわ。領にいた時は、魔石が貴重なために魔道具を作成する機会が少ないと嘆いていたそうですから」
なるほど、貴重な魔技士を研修に出せた理由は、そういう所にもあったのか……魔石がもっと簡単かつ継続的に入手できればね……。無い物ねだりではあるけれども。
「とりあえず、魔石については地龍様から賜ったものを幾らかこちらに都合致しますわ。当面は、氷魔法を使用する魔道具などの需要は高いと思いますし、足しにして頂きたいと思います」
「おお、それは助かる。ビースレクナも融通してくれているが、それでも不足していたのだ。……とは言え、無償というわけにはいかぬ、お前の口座に相応額を振り込んでおこう」
「お心遣いは不要ですが……有難く頂戴します」
「領外の変化事項はそのくらいか。では、現在の領の状況について話しておこう」
領の状況、特に各種新規事業の進捗などについてお父様から、主要な人物達の状況についてお母様から、その他領内での民衆の動向についてお祖父様から話があった。私に関係する内容も多かったが、どちらかというとお兄様に話しておきたい内容だったのだろう。今後お兄様は次期領主としての仕事があるし、今度行われる誕生パーティー以降は、社交にも力を入れないといけないからね……。
私に関係する所では、新規事業関連で、工事支援や品種改良の話などがあるそうなので、領行政舎に顔を出して、担当者と話をしておかないといけないかな……。
なお、巡回助言と精霊術士候補の確認については、今回も行うことになっている。精霊術士候補の確認については3日後、巡回助言については、年が明けてからだそうだ。しっかりやらないとね。
そういった感じで、家族会議は終了となった。ちなみにその後、お母様が庭で空動車に試乗したのだが、大層気に入った様子だった。余裕があれば、お母様の分を作って貰ってもいいかもしれないね……。
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