第241話 ご婦人方の活動について色々知った
お読み頂き有難うございます。
宜しくお願いします。
今週末から年末年始休暇に入るので、今週で今年の業務は終了だ。ということで長期休暇に入る前の業務納めや御前会議、王妃殿下が主催する恒例の茶会がある。今は御前会議前の省定例会議中だ。
……先日の年末魔法戦の話が結構な大事になってしまった。両方とも、研究中の物だから、そこまで影響は出ないけど、魔法省としては把握しておくことが望ましい案件だからね……。魔法課長が説明していたけど、私も内容を補足しましたよ。皆「またか……」と言わんばかりの生温かい目で私を見ていましたけど。
なお、御前会議の場では、光魔法や魔力増幅については報告されなかった。今のところは陛下に耳打ちする程度にとどめたらしい。ただし、氷魔法や雷魔法、重力魔法が学生の間にも徐々に広まっており、年末魔法戦においても目を瞠る活躍がなされた、という内容で大臣が報告していた。
この際、当然オスクダリウス殿下が重力魔法を使って優勝したことも報告に上がったため、お聞きになっていた陛下が一瞬嬉しそうな表情になった事が、印象に残った。
今日は一日休みを取って、午後からの王妃殿下主催の茶会の準備だ。朝食後からクラリア達によってエステの様に全身磨かれ、準備したドレスを着て、王城に向かった。
王城に到着した後、会場に案内されて着席した。今回の参加者については、大きな変化があった。東公夫人たるセラブリミア様が、体調不良を理由に不参加となっているのだ。神託の件を聞かれるのを避けるためなのだろうけれど……。
ここまで引き籠られると、可哀想にも思えてしまうが……この状態から体裁を整えつつ、イストルカレン家を存続させるには、現東公がクリフノルド様に家督を譲って隠居するしかない、という話だ。ただし、クリフノルド様はまだ成人すらしていないから、その辺りがどう判断されるか、といった所なので、私としては傍観するしかないのだけれど。
その他、昨年まではいなかったレナ様が参加している。まあ、15才になったから成人女性として参加出来るというわけだ。前世の日本と違ってこちらには、成人を自治体で祝う風習などはないけど、貴族社会においては、成人してからは積極的に社交に参加することになる。
だから家が主催して、成人となった子女のお披露目をする目的で、知人を招いてパーティーを開くことが半ば慣例になっているそうだ。私は多分やらないと思うけど、お兄様は次期領主だから必ず開くので、そのお祝いとかもお父様達と手紙などにより検討しているところだ……。
そういった感じで、レナ様も今回の茶会から参加しているわけだ。特にレナ様は、来年エルムハイド様との結婚も控えている筈だし、今のうちから数をこなしておかないと、次期公爵夫人だからね……色々顔繫ぎをしないと、社交が上手くいかないだけならまだしも、変な噂を流されるかもしれないからね。噂は怖い……。
王妃殿下と王太子妃殿下が入場し、全員が礼をして迎え、王妃殿下のお言葉で茶会が開始された。次第については昨年と変わらず、暫くの間は当初の座席で話し合い、頃合いを見て自由に場所を変えて歓談、という流れだ。王妃殿下は、この場では王太子妃殿下の次に序列が高い私から順にお言葉を掛けて行く。
「フィリストリア、今年も大層活躍したようね。おかげで国全体の景気が良くなっていると聞いているわ」
「お褒めに与り、誠に有難く存じます。今後も皆様のご指導を頂きつつ、励みたいと思います」
「貴女の場合、他国も係わる活動が少なくありませんから、特に気を配るのですよ」
今年は下手をすれば国を出て行くことになりかねない事態が起こったからね……。
「ご指導賜ったこと、しかとこの身に刻み、今後活かしたく存じます」
私の言葉を聞いた王妃殿下は頷かれ、他の方々へお言葉を掛けられた。
その後は、近況などを踏まえ、色々な事が話された。
「フィリストリア様に教わった天婦羅、当家の料理人が公府の料理人にも調理法を伝えたようで、主だった料理店でも頂けるようになりましたわ。旬の様々な野菜や山菜を使った天婦羅は、公府の住人はもとより、商会の者などにも好評で、領の新しい名物になるかもしれませんわ」
「それは宜しゅうございました。今度公府へ行く時が楽しみですわ」
「来年、また我が領で精霊術士集中鍛錬が行われますが、フィリストリア様も来られますの?」
「全ての期間を通じてではございませんが、何度かお世話になる予定ですので、その際は宜しくお願いしますわ」
「それは楽しみですわ。もしかすると、その際にこちらからもご相談させて頂くかもしれませんので、こちらこそ宜しくお願いしますわ」
「フィリストリアが、甘味に使えるように多くの果物を品種改良してくれたと聞いたわ。どのような甘味が作れるのか、今から楽しみにしているのよ」
「王太子妃殿下にお喜び頂けたのであれば、誠に光栄ですわ」
そのような感じで、和やかに会話をしていた。
暫くすると、自由に歓談する時間となり、それぞれ分かれていった。私もどこかに混ざろうとしたのだが……今回は多くのご婦人方に捕まってしまった。
「導師様、兄君が3年連続で魔法学校首席を取られて、卒業されたそうですわね。そのような優秀な方が次期侯爵ですもの。アルカドール領は益々発展されるでしょうね。羨ましいですわ」
「ところで兄君は、婚約者がいらっしゃいませんが、どのようなお話となっておりますの?」
……どうやら先日魔法学校を卒業したお兄様の話を聞きたい方々のようだ。確かに有望株のお兄様に、未だに婚約者がいないというのは、貴族の常識的にはおかしい話なので、その実情を確認したくなるのは、人の性というものなのかもしれない。とは言っても、今私が話せることなど殆ど無いのよね……恐らくは領に戻ってから、チェルシー様と婚約する方向で調整している筈だけれども。
「その辺りは、私も詳細を伺っておりませんので、帰省した際に確認させて頂こうと思っておりますわ」
とりあえずそう言うしかない。他の方々もまあ、色々聞こうとしてきたけれど、知らないで通した。
ちなみに、私本人の事については誰も何も言ってこなかった。まあ、神託の話があるからね……。
その他、精霊関係の話、特に美容に関しての話が話題になった。
精霊術士に美人が多いというのは事実で、その理由は寝ている間などに、精霊が気まぐれに髪や肌を整えてくれるからなのだが……実際の所、私も鍛錬などでよく外にいる割に、何もせずとも肌に日焼けの跡が残ることは無く、白く滑らかだし、髪もツヤツヤサラサラだ。
今日もエステさながらの手入れを受けた割に、大して変わらないので、クラリア達が少々不満を漏らしていた。その辺りを話したところ
「導師様、その辺りの事象を魔法で再現することは、可能でしょうか?」
と質問する方がいた。何でも、魔法学校時代に入っていた研究会が、そういったことを研究する所だったそうだ。王都の貴族のご婦人達の中でも、表立ってはいないが、個人的に研究している人が結構いるらしい。なるほど……。
「そうですわね……属性によって精霊の得意分野が違うため、あまり総合的な要望を実現する魔法には向かないという事は伺っておりますが……単純に肌の保湿であれば水属性の方なら可能でしょうし、肌荒れは地属性や風属性の方でも対応可能ですし、若々しい肌を作るのであれば、火属性の方でも概ね可能の筈ですわ」
「やはり機能別に分けるのが肝要という事ですわね……その他には何か特性はございますか?」
「美しい肌や髪を保つ物には、様々なものがございますが……精霊は、それらを使用した時の効果を高めてくれると思いますわ」
「まあ! その辺りは、研究の価値がございますわね! 良い話を伺いましたわ、有難うございます! 早速帰って試さなくては……」
と、そのご婦人は思索を始めたが、他のご婦人達の視線がその方に向かっていたので、かなり興味深い話だったのだろう。それを切っ掛けにして、この話の輪から離脱して、別の話の輪に入ってみた。
とりあえず、ペルシャ様とレナ様がいる所に行ってみたが、やはり新婚のペルシャ様と、来年結婚するレナ様については注目度が高いのか、周囲の方々も耳聡くなっている感じで、一種異様な雰囲気だった。とりあえず挨拶と、現況を幾つかお話しして、その場を離脱した。
後はお菓子を置いている辺りで屯している王太子妃殿下達の所に顔を出した。どうやら、ご婦人達の間で甘味研究会なる団体が出来たそうで、今回作られたお菓子の出来について、熱く語っていた。
ちなみに今回のお菓子は、ドライフルーツや砂糖漬けの果物を使っていることが特徴で、見た目も結構華やかだ。様子を見ていると、王太子妃殿下に捕まって色々話をしているうちに時間が過ぎ、茶会が終了した。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。
宜しくお願いします。




