第240話 王都の友人達を招いて茶会を行った
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年末魔法戦が終了して次の日となった。出勤して、暫くは書類業務を行っていたが程無くして終了したので、昨日ヒントを得た、レーザー対策について検討することにした。人が来て怪我をされても困るから、誰もいない庁舎の屋上でやろうかな。
とりあえずは木材を石で支えて柱の様に立てて、的にした。さて、まずは属性エネルギーの障壁でレーザーを止められるか、試してみよう。柱の前に、それぞれの属性エネルギーの障壁を作って、様々な強さのレーザーを撃ってみた。
結果は……小威力のものなら防ぐことは出来たが、威力を強めると、障壁をかなり厚くしても貫通してしまった。ただし、相性的に水属性が結構防げたのは予想出来ていたのだが、意外な事に、相性の悪い筈の風属性の効果も高かった。これはもしかすると、もう一つの案が正解かもしれない。
今度は、火属性エネルギーで障壁を作った。ただし、色を変化させてみた。様々な色でやってみた所……緑系列が、最もレーザーを防ぐことが出来た。これは恐らく、レーザーは止めるというより、障壁に吸収させた方が進行を防ぐことが出来るのだろう。
そして、赤色光を吸収するなら、反射光が赤色と補色の関係にある色、つまりは緑色に見える状態であれば効果が高い、ということなのだろう。で、緑色の中では、偶然なのか、波長を揃えることが出来るからなのかは分からないが「風精霊の緑色」の効果が一番高く、薄い障壁でも強いレーザーを防ぐことが出来た。これなら対策として教えることが出来そうだ。
休日になった。今日の午後には魔法学校に通っている友人達とパティを招いて茶会を行うことになっている。幸い皆、参加してくれるようだし、先日の魔法戦を観ていた限りでは、試合後に険悪な雰囲気になった様子も無かったから、ここで喧嘩をすることも無いだろう。
午前中にいつもの鍛錬をした後、茶会の準備を始めた。午後になり、皆が集まったので、始めさせて貰った。
「皆様お集まり頂き有難うございますわ。今日は皆様が一年間魔法学校で学んだことや、ご活躍などを伺いたいと思っておりますの。宜しくお願いしますわ」
「フィリスは今年も色々活躍してましたわね……特に、ビースレクナ領の魔物暴走に対処して頂けたのは今でも大変感謝しておりますが……でも、サザーメリドの一件はここにいる皆、心配しておりましたのよ?」
ミリナがそう言うと、他の皆も頷いている。改めてお礼を言っておこう。
「皆様にはご心配をかけましたが、無事に過ごせておりますわ。有難うございます。今後も難しい業務があると思いますが、精一杯励みますわ」
「まあ、フィリスの場合、立場上仕方ない所もありますわね……あら、この甘味、凄く美味しいですわ。最近は王都でも甘味の種類が増えましたが、これは初めてですわね」
「ミリナ、これはアルカドール領の甘味ですのよ。アルカドール領では美味しい牛乳を生産しておりますから、牛乳を活用した甘味も研究しておりますの」
ちなみに今出ているのは、前世で言うならパンナコッタのようなものだ。
「王都に来て思いましたが、アルカドール領の甘味は王都とは結構違っておりますわね。例えば卵蒸しは王都では卵と南瓜ですが、アルカドール領では卵と牛乳で作りますし、アルカドール領で見た、台粉卵の乳糖泡和えは、王都にはございませんもの。早く帰って頂きたいものですわ」
「ルカ様、来週末には帰れますから、楽しみになさって下さいな。甘味研究所の者達も、更に腕を上げている筈ですわ」
「ああっ、食べ過ぎないように気をつけないと、また食事制限をすることになってしまいますわ!」
パティがそう言うと、皆が同情しつつも、苦笑いをしていた。スイーツの魅力は抗い難いからね……。
暫くはお菓子の話や近況で盛り上がったが、話題が魔法戦の時のものになった。
「正直、ティーナ様に勝てなかったのは残念ですが、それ以前に魔力をかなり消耗していましたから……まあ、あの馬……イクスルード侯爵令息に勝てましたので、今年の目標は達成できましたわ!」
「もう……ミリナは……でも、ティーナ様は本当に凄かったわ。魔法省や魔法兵団の方も注目していましたもの」
「あ、有難うございます~。これもフィリス様に雷魔法を教えて頂いたおかげですわ~」
「正直な所、雷魔法の熟練度は、ティーナ様は既に私以上だと思いますわ」
「そんなことは~。でも、雷魔法が凄く気に入ってしまいまして、沢山練習しましたわ~」
「そう仰って頂けると、教えた甲斐がございますわ。それと、ルカ様についても、着々と光魔法を習得されておりましたわね。私も観させて頂き、感銘を受けましたのよ」
「フィリス様、お褒め頂き有難うございます。そういえば、魔法戦の後、魔法課長と仰る方が私の所に来られて、光魔法について教えて欲しいと言われたのですが、フィリス様に教えて頂いたので、とお断りさせて頂いたのですが……問題無かったでしょうか?」
「ええ、そちらは私から説明させて頂きましたわ。それと、ルカ様の試合を観ていて、改善しようとしていた点の手がかりを得られましたので、来年からは魔法研究所にも光魔法を教えようと思っておりますの」
「そのようなことがございますの? 出来れば教えて頂きたいのですが……」
「領に帰った際に、ネリス様と一緒にお教え致しますわ」
「そうですわね。では、帰省後お時間を頂きたいと思います」
「そうさせて下さいな。そういえば、他の学年の試合ですが……オスクダリウス殿下が重力魔法を使いこなして堂々と優勝されておりましたわね……」
「重力魔法はあの試合方式では、非常に有利ですわね……正直、私ではどうやっても勝てそうにありませんわね……氷魔法も防がれてしまいますし。ティーナ様は如何でしょうか?」
「私も~難しいとは思いますが、最初から同時多方向の稲妻で攻撃して、重力魔法を使わせる前に勝負を決めることが出来れば、何とかなるかもしれませんわ~」
「火魔法は雷のように一瞬で攻撃出来るわけではありませんから、私も難しいでしょうね……」
「そういえば、精霊課でも話題になっていたのですが、3学年の決勝戦は、物凄い試合だったそうですわね。結局カイダリード様が勝利されたそうですが、どのような様子だったのでしょうか?」
「そうそう、フィリス、私も聞きたかったのよ。カイ兄様が使われた『魔力増幅』という技術、あれは一体何なのかしら?」
「もう、ミリナったら……そうですわね。パティ様にも試合の概要を説明しつつ『魔力増幅』についても簡単に説明しましょう」
そうして、試合の概要と「魔力増幅」についても皆に簡単に説明した。
「……ということは『魔力増幅』は、魔力波を魔法に応用した技術ということなの?」
「ええ、ミリナ。その通りよ。お兄様は、魔力波を習得された後、魔法にも利用できるのではとお考えになり、忙しい中、研究されていたの。技術自体は殆ど完成していて、後は魔力消費を抑えれば、実用に足るものになると思いますわ」
「では、私も『魔力増幅』を使えるようになるかもしれませんわね。あれが使えれば、来年もあの馬……イクスルード侯爵令息に負けることはありませんわね!」
「ミリナ……まあ、そちらは頑張って下さいませ……。そのうち魔法学校にはお兄様から知識の供与がなされることでしょうから」
「……その『魔力増幅』が実用化されれば、精霊術士の『魔法強化』は不要になるのでしょうか?」
「いえ、パティ様。『魔力増幅』が使えるのは、せいぜい数回。奥の手として使う程度ではないかしら。魔法士への負担が無く、複数の魔法を何度も強化出来る『魔法強化』は、今後も有用な技術ですわ」
「では~、『魔力増幅』を行った上で『魔法強化』を行えば、恐ろしい威力の魔法が使えそうですわね~」
「……理論上は可能だと思いますが……そのような強力な魔法を誰に使用するのかは、考えたくありませんわね……」
私がそう言うと、皆苦笑いしながら同意した。
その他、様々な話題を話していたのだが、ミリナから私の護衛に関する質問があった。
「ところで、レイテアさんが婚姻のためにフィリスの専属護衛をお辞めになるそうだけれど、次はどのような方なの?」
「レイテアからは、今年で騎士学校を卒業する女子学生から選定していると伺っていますの。来週面接をする予定ですわ」
「では、レイテアーナ様のように、武術大会で優勝されるような凄い方なのでしょうか?」
「レイテアは、男性向けの剣術が合わなかったために成果が出ていなかっただけで、非凡な才能を持っていましたから……それを次の方に押し付けるのも宜しくありませんわね。ただ、私も一時期は教える側にいましたから、そういった意味では、伸び伸びと育って貰いたいものですわね」
「フィリス様がそう仰るのであれば、その方もいずれは有名になりそうですわね……」
ルカがそう言うと、他の人も何故か頷いていたが……そこは本人次第というところかな……。
色々話が出来て楽しかったが、時間となったので、茶会を締めさせて貰った。本当、こういう茶会なら気負わなくていいんだけれどね……来週には王妃殿下が恒例の茶会を行うからね……準備はしているから問題ないのだけれど、立場に伴うものだから、仕方ないが……面倒だな……。
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※ 造語
卵蒸し:プリン 台粉卵:スポンジケーキ 乳糖泡:生クリーム 台粉卵の乳糖泡和え:ショートケーキ




