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第239話 魔法学校の年末魔法戦 4

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

『では、あの現象は一体何なのか、説明して頂きたい!』


まあそう思うよね……本来開発者であるお兄様が説明した方が良いのだけれど、この際仕方ないかな。


『あれは、兄が研究している技術を使用したために起こった事ですわ。仮に『魔力増幅』と呼んでいる技術ですが……未完成で、魔力消費が激しいものの、一瞬ですが魔法の威力を大幅に高めることが出来ますのよ』


そう、魔力波を習得したお兄様が、意識の波が高まる瞬間に魔法を発動させることで、通常より威力のある魔法を放つことが出来るのではないかと、密かに研究していたのだ。私も何度かアドバイスをしたので概要は知っていたが……実戦に等しいこの場で成功させることが出来たのは、驚くべきことだ。


ただ、その分魔力消費も甚大で、お兄様は魔力切れになってしまったが……このお兄様の努力の成果に、不当な言いがかりをつけることは、私が許さない。


『出鱈目だ! やはりあれは何らかの不正だ!』


『では、その証拠を提示して下さるかしら? 証拠もなく、アルカドール家と、精霊導師である私を非難するおつもりでしょうか?』


『そ、それは……』


『それと、魔法強化については、秋口に私が講義させて頂きましたが……成果が出ていらっしゃらないようですので、来年以降の講義の是非を検討させて頂かないといけませんわね』


事と次第によっては魔法学校とも喧嘩をする可能性を示唆した所で、学校長が間に入ってきた。


『導師様、当校の者の非礼、お許し下さい。ストライント教官、君の申し立ては、証拠があって初めて成立する。今証拠を提示できないのであれば、申し立てを取り下げて謝罪しなさい』


『ぐっ……、……申し訳……ございませんでした……』


とりあえずこの場はこれで良いだろう。とは言っても、学校長にはまだ釈明したいことがあるようで、案内されて学校長室に移動した。


「導師様、先程の件、誠に申し訳ありませんでした」


「私としては、兄が不当に貶められることが無いのであれば、宜しいですわ。ただ、私が説明した『魔力増幅』を疑う方が、まだいらっしゃるかもしれませんわね」


「私には、あの瞬間だけ、兄君の魔力が膨れ上がったように感じました。理屈は判りませんが、導師様の説明が真実であると考えた方が、妥当でしょう。ましてや、魔法強化が行われていないことは明らかでした。今後仮に、あの判定に物申す者がいたとしても、こちらで誤解を解消させて頂きます。あと『魔力増幅』と仰いましたか。あの技術についても、是非当校の者にもご教授頂きたいと、考えております」


どうやら学校長は、魔力の感受性が高いようだ。なら理解して貰えただろう。


「学校長にもご理解頂けたようで幸いですわ。『魔力増幅』の件、兄にも伝えておきますわ。ところで、あの教官のように、魔法強化への理解が不十分な方は、他にもいらっしゃるのかしら?もし、私の講義に問題がございましたら、仰って頂ければ有難いですわ」


「とんでもございません! 精霊に関する講義を行うのに、導師様以上に相応しい方はおりません。恐らくあの者は、講義を実際に聴講しておらず、伝聞でのみ把握していたのでしょう。このような事を起こさぬよう、教官達を指導して参りますので、来年以降も臨時講師をお願いします」


最後には、来年以降の講義も懇願されてしまった。あんな教官が多いなら、私が講師をやる必要はないな……と考えていたのを理解されていたようだ。あと、あの教官については、どうやらカウンタール領出身で、ライスベルト様の担当教官でもあったようで、贔屓目で見てしまったかもしれないということだった。


それはある意味仕方ないかもしれないが、不当な評価をされてはかなわないので、その点を再度お願いして、学校長室を出た。室前に待機していたレイテアを伴って、お兄様が休んでいる病室へ向かった。お兄様は、ベッドで休んでいたが、起きていたので話し掛けた。


「お兄様、優勝おめでとうございます。お疲れ様でした」


「フィリス、有難う。……でも、今回は運良く『魔力増幅』を成功させることが出来たけれど……結局魔力切れを起こしてしまったから……もう少し研究しないとね」


「そちらは追々頑張って下さいませ。それと……『魔力増幅』については、初の披露ということもあり、少々誤解がございましたが、僭越ながら私が説明させて頂いて、皆様にご理解頂けましたので、ご安心下さいませ。学校長も、是非ご教授頂きたいと、仰っていましたわよ」


「……そうか……フィリス、迷惑をかけたね……有難う」


「どういたしまして。お兄様、お疲れなのですから、もう少しお休み下さい」


お兄様は、魔力切れのためにまだ辛そうだったので、まだ休んで貰った。あと、カウンタール領での話があったので、私はライスベルト様の所にも挨拶に行った。ライスベルト様は、別室で休んでいた。幸い、怪我は大したことはなく、神官の治療で回復したようだ。


「ライスベルト様、お見舞いに参りました。お疲れ様でした」


「来て頂き……有難うございます……」


ライスベルト様が何か言いたそうだったので、暫く待っていると、話し始めた。


「……私は精一杯やったのですが……今年も貴女の兄君に勝てませんでした……残念ではありますが、文句を言っても結果が覆るわけではありませんからね……。ただ、最後のあれは、一体何だったのでしょうか?魔法強化が行われたわけでもありませんでしたし」


「あれは、兄が研究している技術で、一時的に魔力を高める効果がございますの。ただ、今の所未完成でして……魔力を大量に消費してしまうため、兄は今、魔力切れで休んでいるところですわ」


「そうでしたか。そのような奥の手があったとは……。私は氷魔法を習得した今回なら彼に勝てると思っていましたが、彼は私より精緻な魔法で対抗し……それならば、と魔力勝負に持ち込もうとしましたが……まだ至らなかったようです」


「今回、結果こそ兄の勝利でしたが、貴方が大変な努力を積み重ねた結果、兄と互角以上の戦いをしたことは、誰の目にも明らかですわ。いずれ侯爵家を継がれる方に相応しい、立派な戦いでした」


「貴女にそう言って頂けただけで、今回の魔法戦の価値はありました」


「では、お疲れのようですし、この辺りで失礼致しますわ」


やはり負けたことは悔しいだろうし、あまり長くいても話す事が無いので、お暇させて貰った。


他にも友人達を訪ねたいところだったが、一応視察の名目で来ているので遠慮した。まあ、帰省前に茶会を開いたり、一緒に帰省することになるから、その時にでも話をさせて貰うことにして、私は魔法省に戻った。戻るついでに、家の方にも連絡して、今日は簡単にお祝いが出来るよう、頼んでおいた。




執務室に戻ると、何故か魔法課長がこちらに来ていた。魔法への感受性が非常に高い彼は、以前は私の魔力に怯え、かなり挙動不審だったのだが、最近は慣れたのか、省定例会議の場などでも普通に話が出来るようになった。


「導師様……本日魔法学校において行われた年末魔法戦について、2点伺いたいことがございまして、参りました次第です」


そういえば、魔法課長も試合場に来てたよね……なら、聞いておきたいこともあるだろうね。


「2点……ですか。では、魔力増幅と光魔法の件でしょうか?」


「ええ、その通りです! 魔力増幅については、兄君が開発されたという話でしたが……是非、兄君にお取次ぎをお願いします! あと、光魔法については……使用者のオペラミナー子爵令嬢に確認したところ、導師様にご教授頂いた、とのことでしたので、是非詳細をお伺いしたく!」


……かなり勢い良く問い詰められた。そういえば、魔法がとても好きだという話だったっけ……?


とりあえず、お兄様に取り次ぐ件は、帰ってから調整させて貰うことにして、光魔法については、まだ開発途中であることを前置きして、ルカにはテスターをやって貰っていることと、簡単な原理について話し、安全面についての懸念が解決出来たなら、魔法研究所に持ち込もうと考えている旨を話して、納得してもらった。


さて、早い所レーザー対策を確立しないとね……とりあえずは今回思いついたことを茶会までに試しておこう。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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