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第238話 魔法学校の年末魔法戦 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

3学年の決勝戦に出場するのは、予想通りお兄様とライスベルト様だ。


二人とも、気合は十分、魔力も双方ともに余裕があるようだ。これまで見ていた限り、氷魔法の習熟度ではお兄様の方が上だが、ライスベルト様は魔力量が大きい。お兄様の魔力量も魔導師の条件を満たす程には大きいのだが、それをかなり上回っている。


同属性同士の戦いは、決定打に欠け、消耗戦になることが多いので、そういった意味では、ライスベルト様の方が有利かもしれない。しかしながら、お兄様もこれまで色々努力して来たのだから、勝てる方策はある筈だ。魔法学校学生の最高峰と言えるこの戦いに、皆が注目していた。


審判の合図により、試合が始まった。まずは双方、氷弾を放ったが、中央付近でぶつかり、砕け散った。氷弾の破片が、お兄様の陣の側に多く飛ばされていたので、威力ではライスベルト様の方が上回っていたようだ。ライスベルト様は不敵に微笑んだが、お兄様は悔しそうだった。


続いてお兄様が氷弾を放つが、ライスベルト様は氷壁を作り、防御したためダメージは無い。逆にライスベルト様が氷弾を放ったが、それに対してお兄様は……氷壁を作らなかった。何とお兄様は、水属性エネルギーの障壁を作って防御した。しかも、常時出すのではなく、防御する瞬間だけだ。


そして、障壁については、氷弾の進行方向に対して垂直ではなく、ある程度角度を付け、氷弾の軌道を逸らせるように障壁を構築していた。確かにあれなら魔力を節約できるのだろうけど……氷弾は、基本的に直進するから、視線などから軌道が読みやすく、魔力波を習得して視線などを読む感覚が強くなったお兄様なら、出来ないことはないだろうけれど、それでも相当すごい技術なのではなかろうか?




それから暫くは、双方共に攻撃しつつ、相手の攻撃を防いでいた。ライスベルト様は氷弾でのみ、ただし、連弾や同時多方向などを織り交ぜていたが、お兄様は水属性エネルギー障壁の大きさや強度を変化させて対応し、ダメージは受けていない。


一方お兄様も攻撃をしていたが、こちらは水弾と氷弾を織り交ぜ、氷壁を削ることを重視しているようだ。しかもあの水弾、水を熱湯に変えた上で作っているように見える。そして、お兄様の狙い通り、簡単に氷壁が破壊されていく。


破壊された後は氷弾で攻撃をするから、ライスベルト様は氷壁を再構築しなければならず、その分魔力も失われていく。効率的に氷弾を逸らすお兄様と、壊れた氷壁を逐次補修するライスベルト様では、当初の魔力量に差があっても、最終的にどちらが勝つか、見えなくなって来た。


しかしながら、双方ともに疲労が溜まって来ているようだ。一瞬のミスで勝負が決まってしまうこの状態で、疲労は命取りになりかねない。




ここで、ライスベルト様は魔力に余裕があるうちに勝負をつけようと思ったのか、以前カウンタール領で見た、氷槍を作る態勢に入った。あの威力では……今のお兄様の防御法はもとより、簡易的な氷壁を作ったとしても、恐らく対処出来ず、攻撃を受ける可能性が高い。力で対抗するしかない筈だ。


お兄様もそう判断したのか、同様に氷槍を作る……あれは!


双方、全力を込めて放った氷槍が激突し、砕け散った……のは、ライスベルト様の放った氷槍だけだった。


何と、お兄様の氷槍は、陣前の防御用氷壁すら破壊して、ライスベルト様を陣外に吹き飛ばしたのだ!


この時点でお兄様の勝利が決定し、審判がお兄様の勝利を宣言した。おめでとうございます!


……しかし、お兄様は今の魔法で魔力切れを起こしたらしく、片膝をついた。ライスベルト様も気絶していたので、双方の所に担架を持った職員がやって来て、運んで行く。私も様子を見に行こうと席を立とうとしたところ


「今の判定、お待ち頂きたい!」


と、学校の職員らしき人が試合場に出て叫んだ。誰だろう?


「ストライント教官、一体何事だ?」


審判をしていた、3学年主任教官が尋ねた。


「今、アルカドール侯爵令息が放った魔法は、明らかに異質だ! 魔力量で上回っていた筈のカウンタール侯爵令息の全力の魔法を遥かに凌ぐ威力を持っていた! 何らかの不正を行っていたとしか思えません! 例えば、魔法強化です!」


……何を言っているんだあの人は! お兄様が不正をするわけないじゃないか。それに王都にいる水の精霊術士は、今日は確か全員魔法省で勤務している筈だから、魔法強化が出来てこの場にいる人間など、私しかいないではないか。……もしかして、私も疑われているのか? というかあの人、魔法強化のことを知らないみたいだし、私から説明させて頂こうか。


歩いて行くのも時間がかかるので、重力魔法で浮かびながら移動し、試合場に私が上がると、流石に皆が注目した。ついでなので、魔法で伝声しつつ、話させて頂こう。


『魔力切れの兄に代わり、釈明に上がらせて頂きましたわ。そこの方、言いがかりはやめて下さらないかしら』


『これは導師様、学校の行事に介入されるとは、いくら何でも困りますな。先程の不正行為、貴女が協力したのでしょう?』


やはりこの人は私も疑っているようだ。こういう時は、きっちりと皆に分かるように、明らかにしておかないと後まで尾を引くから、しっかり論破しないとね……。


『先程の不正行為、とは、一体何のことでしょうか? ご説明頂けませんか?』


『まさか白を切るおつもりか? 貴女の兄君の先程の魔法、魔力量に比して明らかに強化されていたではありませんか! あれが不正行為でなくて何なのですか。大方、貴女若しくは、貴女に依頼された水の精霊術士がどこかに隠れて魔法強化を行っていたのでしょう!』


うーむ、この人、やはり私の講義を理解していないようだ。聞いてなかったのかな。教官みたいだから、私がここで説明してしまうと、立場が悪くなるかもしれないけど……お兄様の名誉にも関わることだし、今一度、講義の内容を皆に思い出して貰おうかな。


『あれは、魔法強化ではございませんわ。本日、王都に所在する水の精霊術士は全員精霊課で勤務しております。精霊課に問い合わせて頂ければ確認出来ると思いますわ。……さて、仮に魔法強化であったならば、どなたが行ったのでしょうか』


『もしそうなら、貴女以外に考えられないのではありませんか?』


『魔法強化が可能な人間、という意味ではその通りです。しかしながら、魔法強化は、古の約定によって定められた文言を唱え、精霊に魔力を与えることで発生する現象です。私はあの、多くの方から見ることが出来る観覧席におりましたのはご存じでしょう? いくら精霊が普通の人の目に見えないといっても、私が魔法強化に必要な動作をあの場所で行えば、必ず誰かに見咎められますわ。皆様方の中で、先程私が魔法強化を行ったところをご覧になった方は、いらっしゃいますか?』


私はこの場にいる全ての人に問うたが、当然のことながら誰も名乗り出なかった。偽りの証言をする者が出るかもしれない……とも思ったが、そこまで画策して起こしたわけではなかったようだ。


『当然、いらっしゃいませんわね。私は魔法強化を行っていないのですから』


『いや、精霊導師である貴女なら、誰にも知られずに行う方法があるのではないですか?』


『そんなものはございません。精霊課や、何でしたらウォールレフテ国大使にご確認されても結構ですわ。そもそも、貴方は魔法強化を誤解されていらっしゃるようですが、特定の個人を指定して強化することは出来ません。魔法強化を願う精霊術士及び精霊を中心とした一定範囲内の、全ての同属性魔法を強化するのですよ。ですので、私があの、双方から概ね等距離にある場所で魔法強化を行えば、兄だけでなく、カウンタール侯爵令息の魔法も強化されていた筈ですわ』


つまり、魔法強化云々と言った時点で、この人が理解不足であると公言しているようなものなのよね……悔しそうな顔をしているが、まだ納得したわけではなさそうだ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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