第236話 魔法学校の年末魔法戦 1
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今日は魔法学校で、年末試験の一部として、学生による魔法戦闘、通称「年末魔法戦」が行われる日だ。お兄様は日頃から熱心に魔法の練習をしているが、その成果が発揮される所を実際に見てみたかったので、視察という形で見学の許可を頂いている。
この年末魔法戦は、本科の各学年から魔法実技成績上位者を32名ずつ選出し、魔法戦闘の勝ち抜き戦を行うというもので、この内容によって最終的な魔法実技の成績を決定するらしい。勿論、魔法戦の結果のみで成績が決まるわけではないが、基本的に1位から4位は、魔法戦の結果と同じだそうだ。まあ、成績上位者は上級貴族子女が多いから、成績に文句を付けられないような処置を行っているということかな。
魔法学校内に設置された会場に到着し、観覧席にやって来た。視察名目なので、私の席が準備してあり、各学年の対戦表が置いてあった。
3学年は、お兄様とライスベルト様は当然いるとして……他に知人はいなかった。
2学年は……オスクダリウス殿下がいるな。
1学年は……ミリナ、ティーナ、ルカ、ダリムハイト様が出場していた。
しかし……今回来てみて分かったが、これ、学校行事で、非公開という割に、学生や職員以外にも結構部外者が観に来ているよね……私が言うのも何だけど。特に、魔法省や魔法兵団の人が結構いる。確かに、優秀な人材を見るにはいい機会だからね……。貴族も結構いるけど、私の様に身内の応援なのか、学生の魔法の能力を把握するためなのかは、判断し難い所だ。
3つの試合場があり、学年毎に使用するようだ。魔法戦闘用の試合場は初めて見たが、それぞれの試合場の脇に、魔法に使用するためか、水を入れた大きな水槽や、結構な量の盛土や石炭が置いてあった。攻撃だけでなく、防御をするためにも使う筈だし、大量に必要となるのだろうな……。
試合方式は、1対1で、審判の合図により開始され、基本的には魔法を使用して対戦相手を戦闘不能にするか、対戦相手が陣の外に出るか、対戦相手が降参すれば勝ちとなる。魔法は、半径3クールの円形の自陣内でのみ使用が可能で、対戦相手の陣との間は20クール離隔している。
試合開始時には、陣の間に障害物は存在しないが、魔法により障害物等を作成することは自由。試合時には双方、魔法銀などで作成した特殊な防具を装着し、可能な限り重傷を負わないようにしているようだが、対戦相手が重傷を負ったりした場合は反則負けとなる。
その他、審判の指示に従うことが、大まかなルールだ。
試合場には神官が複数待機していて、負傷者は試合後に治療を受けることが出来るようだ。それと、通常なら魔法行使の都度、活性化を解くけれど、魔法戦においては魔法を連続使用するために活性化を維持することも多いそうで、通常より魔力の消耗が段違いに激しくなり、魔力切れになる学生も多いそうで、救護室も準備されている。
魔法での戦いにおいては、属性ごとに相性があり、概ね、火は風に強く、風は地に強く、地は水に強く、水は火に強い、といった相克の関係があり、同程度の魔力で属性エネルギー弾をぶつけると、相性の良い方が勝つことになる。
また、エネルギーを主体にするか、物質を主体とするかといった属性ごとの特徴のため、火は攻撃主体、風はやや攻撃主体、水はやや防御主体、地は防御主体という感じの運用になるそうだ。勿論、魔力量や魔力操作・魔法の習熟度などが大前提になっているのだが。
しかしながら、お兄様に聞いた話では、最近では氷魔法や雷魔法、重力魔法などが開発されたため、基本的な性質のみで試合の展開を予想するのは、難しくなって来ているらしい。
対戦表自体は、参加者自身がくじを引いて決定するそうなので、試合の組み合わせには恣意的なものは無いそうだが……さて、今回はどのような戦いが見られるのだろうか?
学校長の訓示、3学年主任教官からの魔法戦出場者達へのルールの説明が終了し、各試合場に分かれて試合が始まった。早速ティーナが戦うようだ。相手は水属性の男子学生か……。
双方、自陣に位置し、審判が開始の合図をした。男子学生は水槽から水を移動させ、壁にするとともに、水球をティーナに向けて放った。
一方、ティーナは……その水球に小さい稲妻を当てて破裂させ、更に男子学生に向けて短間隔で2回、稲妻を放った。最初の稲妻は水壁の一部を破壊して、次の稲妻がその穴を通過し、男子学生の頭の近くを通って、試合場外の観覧席前防壁に当たり、焦げを作った。あれは、わざと対戦者から外したな……。
その攻撃で恐怖した男子学生は降参し、ティーナの勝利となった。ティーナの実力は非常に高いらしく、魔法省や魔法兵団の関係者が、かなり興味を示しているようだ。まあ、今の男子学生は、全く相手になっていなかったからね……。
次は……3学年の所で、ライスベルト様が試合をするようだ。対戦相手は……火属性の男子学生の様だが……ライスベルト様が氷弾で一蹴して終わった。まあ、あれは実力や属性の相性を考えると、仕方がないだろう……。
暫くして、2学年の所で、オスクダリウス殿下の試合が始まった。相手は火属性の女子学生か……。
女子学生が、火属性弾を放ったが、オスクダリウス殿下は土壁を作って防いだ。その後、オスクダリウス殿下が重力魔法で女子学生を浮かせて陣外に出し、勝利した。うーむ、あの重力魔法の使い方は、このルールだと、かなり強力な攻撃方法だな……。
相手の魔法自体をキャンセルするには、相手と同属性の場合は、相手の魔法を認識した上で、解除をイメージすることで可能だが、他属性の場合は、そこに精霊同士の話合いが加わる。なので、地属性以外の人が重力魔法を解除するには、時間がかかるのだ。
魔法を解除したところで、魔法によって変化した事象が無い事になるわけではないから、一旦自陣から出てしまったら試合は終わりだ。相手次第だろうが、オスクダリウス殿下はかなりいい成績を残すだろうな……。
次の1学年の試合には、ルカが出るようだ。相手は水属性の男子学生か。苦手属性にあたるわけだけれど……どう戦うのかな……?
試合が始まり、ルカは火属性弾を放った。男子学生は、水壁を作って防御した。属性が不利だから、ティーナの雷のように、複数回当てて穴を通すようなことは出来ないだろうな……と思っていたのだが、水壁に当たる寸前、火属性弾は光の玉と化した。
突然強い光が発生し、周囲は皆驚いたようだが、一番意表を突かれたのは男子学生だったようだ。光の向きが対戦者側に集中していたこともあり、水壁では防御できずにかなりダメージを受けたようで、目を押さえて蹲っていた。
水壁も維持できずに無くなってしまい、ルカが次の火属性弾を準備した所で、審判がルカの勝利を宣言した。審判も驚いてはいただろうが、その辺りは流石と言えるだろう。
この試合を見て、魔法省と魔法兵団の関係者がまた騒ぎ出した。まあ、光魔法はあちらには教えていないからね……。
この調子で勝ち進めば、準決勝でティーナとルカの試合が見られるかもしれない。
引き続き、ダリムハイト様が試合だな。対戦相手は……風属性の女子学生か。
こちらも苦手属性だけれど……試合が始まり、女子学生は、突風でダリムハイト様を陣外に押し出そうとした。ダリムハイト様は、当初は土壁で防御しようとしていたが、突風は複数方向から生き物の様に襲い掛かり、土壁では対応できなくなった。
吹き飛ばされそうになった瞬間、ダリムハイト様は自身の下半身を土で固め、飛ばされないようにした。そこを、女子学生が風属性弾で攻撃するも、ダリムハイト様は更に土壁を作って耐える。しかし、このままでは勝ち目がないな……と思っていると、女子学生が降参した。どうやら魔力切れの様だ。
魔力量はダリムハイト様の方がかなり多かったようだから力技で勝てたのだろうけど、同等だったら負けていたかもね。
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