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第234話 空動車で緊急出動してみた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

サウスエッド国との共同指揮所演習が終了して、ロイドステアに帰って来たのだが、ある出来事が起こっていた。現在ステア政府は、11月末に行われる予算審議の準備でどこも忙しい状況なのだが、その予算審議の主役とも言うべき財務省のトップ、財務大臣が辞意を表明したそうだ。


当然今辞められても困るので、辞任自体は年明けとなるらしいが……なお、辞任の理由だが、現在の財務大臣は前東公、つまり現在の東公の父親なのだが、このところ、陛下と会う度に、領地の事を聞かれていたそうだ。つまりは領地で匿っているであろう諜報員を引き渡せ、と催促されていたのだ。


何度も催促され、前東公は身の危険を感じたのか、辞職して領に引き籠ることにしたようだ。その他、噂では、クリフノルド様も王都魔法学校から、東公府にある高等学校に転校するという話だ。少々可哀そうにも感じるが、私をこの国から排除しようとした結果であることを考えると、何とも言えないところである。




休日も終わり、通常の日々だ。予算審議準備の最中ではあるが、重力魔法活用会議や魔法教育検討会議が実施された。当然会議の目的は、これまでの会議の結果を踏まえて来年の事業、つまり予算審議にどう反映させるかを話し合ったわけだ。まあ、先立つものが無いと何も出来ないのは、どこの世界でも変わらないよね……。


この内容は、省定例会議でも周知され、省内の予算審議の準備もいっそう進んだ。




次の週となった。予算審議関連の調整が主体だったが、重力魔法関連で、1つの大きな成果が出来た。空動車の実用試験(前段)が終了したのだ。このため、国防省の庁舎前で、水上バイクが殻を被ったような二人乗り空動車と、軽自動車型の四人乗り空動車各3台が展示され、多くの人々が見学に来た。予算獲得の大きなアピールにもなるね、これは。


地属性の人達のうち、重力魔法が使える人達は、実際に試乗したりもした。本来は魔道具なので、一定の魔力があれば誰でも使えるのだが、まだ実用試験が全て終了したわけではないので、念の為の処置だそうだ。


私も実際に試乗したりして、その場を立ち去ろうとしたところ


「導師様、お待ち下さい」


と、誰かが声を掛けて来た。この方は確か、実用試験の責任者だったかな。


「何用でしょうか」


「お呼び止めしてしまい、誠に申し訳ございません。実は、実用試験にご協力頂きたいのです」


と言われた。理由を聞いてみたところ、残りの実用試験というのは、様々な魔力量の人間に使用して貰って問題が発生しないか検証するというものだそうだ。で、魔力お化けの私にも使って頂きたい、ということだった。なるほど、実用試験への協力は、やぶさかではない。


「宜しいですわよ。では、毎日の登退庁を空動車で行いましょう。出勤した後はこちらに置けば、他の方が試験されるということも出来ますわね」


「有難うございます!」


こうして今後1か月の間、通勤には軽自動車型の空動車を使うことになった。




登退庁時に空動車を使い始めて、当初は後部座席に座ったレイテアが、私が操縦しているために居心地が悪そうな感じだったが、それ以外は特に問題なく、基本的に馬車よりも短時間でスイスイ移動出来る上、殆ど揺れないので、前より快適になったくらいだと感じている。機能上も全く問題無く、最高速度で動かしてみても、普通に動いている。


私が使っている空動車の前面、前世の車で例えるとナンバープレートの位置には、魔法省の紋章が取り付けられているので、公式の使用も可能だ。


ちなみに、二人用空動車のうち1台は、何とオスクダリウス殿下が通学に使っている。魔法学校に到着後は、地属性の職員や学生が交代で試乗しているそうだ。まあ、安全上問題無さそうだからいいけれど。




予算審議の準備も終わろうとしていた矢先に


『愛し子~、大変だよ~』


と、風精霊が私に話し掛けて来た。緊急の案件のようだ。


「どうしましたの?」


『魔素溜まりがあるんだ。疫病になるかも?!』


詳しく話を聞いた所、王都の東隣にあるデカントラル領の森林に、魔素溜まりが発生しているということだ。ここからなら空動車で移動すればすぐだし、宰相閣下に報告して、すぐに対処しよう。


私は宰相府に行き、宰相閣下に報告し、直接空動車で現場に向かうことを進言した。


「成程。して、どの程度の時間で到達出来るのじゃ?」


「距離だけで考えますと、概ね四半刻、現場を探し当てることを考慮しても、半刻程度でしょう」


概ね東に100キート程度だから、最高速度が体感で時速200キートくらい出ることを考えると、その位の計算になる。何せ低空とは言え空を飛べるから、地形や建物を殆ど無視して移動出来るし、こういう緊急時の使用には持ってこいだ。


「ほう……良し、今回はそれで進めよ。連絡はこちらで行う。直ちに対処せよ。それと念の為、補佐官を1名同行させるように」


「拝命致しました」


こうして私は導師服に着替え、他の方が試乗していたところを中断して貰い、レイテアを助手席に、宰相補佐官1名を後部座席に乗せて、空動車で現場に直行した。


風精霊に案内して貰い、現場に到着すると、確かに怪しい雰囲気がある。案内して貰った風精霊と感覚共有し、周囲を探索すると、1キートほど先に魔素溜まりの中心部を発見した。周辺に人はいないようだ。周辺100クールくらいは汚染されているかな。


これなら今から浄化すれば、森林への被害も少なくなるだろう。レイテアと宰相補佐官をこの場に待機させ、風精霊と感覚共有を解いて、私は中心部へ向かい、火精霊と和合する。


【我が魂の同胞たる火精霊よ。我と共に在れ】


念のため半径200クール位の範囲で浄化しよう。周辺の火属性のエネルギーを活性化させるとともに、火精霊を呼び寄せ、最大火力で一気に燃やし尽す!


【躍れ! 同胞達よ】


雪も多少積もっていたが全く関係なく、森の汚染地域は、数分で灰と化した。




和合を解き、火種が残っていないかを確認して待機していると、デカントラル領の人達が急いでやって来た。


「導師様でいらっしゃいますか? 私は近傍の町の町長です。領主様から緊急の命令を頂き、こちらに参りました」


「精霊導師のフィリストリア・アルカドールです。先程この先に魔素溜まりを発見し、浄化したところですわ」


「何と! 既に対処して頂いたのですか。迅速な対応、誠に感謝致します」


「町長殿。私は宰相補佐官だが……念の為、この付近への立ち入りを暫く禁止して貰えないだろうか?」


「承知致しました。……おい、近くの村に連絡だ! それと、目立つ所に看板を立てておけ!」


町長はすぐに部下らしき人達に今後の指示を行った。私達は暫くその様子を見た後、問題無さそうだということで、王都に戻り、宰相閣下の所に向かった。何と日中に帰って来られたよ。


「導師殿、今回も御苦労じゃった。それに、これまで以上に迅速な対応じゃ。空動車は誠に便利じゃのう」


「はい、宰相閣下。近場であれば今回の様に使用出来ますし、遠方においても異空間収納しておき、転移門使用後に使用すれば、従前より短時間で現場に到着出来ますわ」


「宰相府にも是非欲しいものじゃのう。補佐官、予算審議の際に、登庁用と緊急用として空動車取得の項目を追加せよ」


「承知致しました」


偶然だが、予算審議前に空動車の有用性を改めて確認出来た。今後はこういう流れになっていくのだろうなあ……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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