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第226話 サザーメリド国での魔物暴走対応協力 9

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

捕縛された人達の、取り調べの状況を聞いた。大半の人達は、取り調べを受けた際に、異端審問に掛けられるかもしれないと聞いた途端、恐れ慄き懺悔を始めたらしい。そして、私に関する誤った噂については、神託を知らず、軽い気持ちで話していただけで、誰かの指示で行ったものではない、と発言した。


今回の作戦は、神託に関するものであったため、カラートアミ教が全面協力していて、一般人と諜報員の疑いがある者との区別もすぐに出来た。取り調べの際に、嘘を吐いたことが判る恩寵を持つ神官が同席しており、意図的に噂を流していたわけではないことが判ると、その場で1回鞭を打たれて釈放されたそうだ。


殆どの人達はすぐに釈放されたが、中には、神託を知らなかっただけなので解放しろ、とごねていた貴族の女性もいたらしいが……嘘だと判定されたらしく、異端審問にかかることになった。その他、発言に嘘が多い者が12名いて、異端審問行きとなった。


しかし、実際に異端審問を受けたのは、貴族女性1名だけだった。残りの人は12名中、獄中自殺? が9名、脱獄が3名という結果となり、3名については、指名手配をすることとなった。


なお、異端審問を受けた女性については、実際は神託の内容を聞いていたものの、常日頃から私を妬んでいたようで、神託以降も引き続き噂を流していたらしい。ということで、異端ではないと判断されたものの、貴族籍を剥奪され、どこかの修道院行きとなるそうだ。妬みか……立場上どうしようもない所もあるけれど……気を付けよう。




騒動が粗方落ち着いた所で、国王陛下が東公を呼び出した。私やお父様についても、謁見の間に来ておくよう指示を受けたので、謁見の間において、事を見守る。


陛下が来られて玉座に座られた後、暫くして東公が入って来て跪き、通り一遍の挨拶を交わした後、陛下が訪ねた。


「さて、イストルカレン公爵。此度は、相談事があっての」


「如何様にございましょうか」


「先日賜った神託に反する行為を行った者が現れ、異端審問会が行われたのだが、審問予定であった者のうち、9名が自死し、3名が逃亡したのだ。その3名については現在、行方を追っておる」


「伺っております。神託に反するとは、全く愚かしい者どもですな。して、それが何か?」


「どうもその3名は、イストルカレン領内に潜伏しておるようでな」


「……成程、捕縛に協力は致しますが……我が領にそのような者はおらぬでしょう」


「そうか。ちなみに今回、それらの12名は、取り調べ途中に気絶した際、鑑定しておってな。真の名前や出身などを控えておる。……さて、もう一度聞くが、イストルカレン領内には、おらぬのだな? 余は神託を賜ったのだ。国を割くことになろうとも、その責を果たさねばならん!」


私は、神託というものの存在を、甘く考えていたらしい。神の言葉は絶対であって、疑うことすら許されない。知識では知っていても、その重さを、理解していなかったようだ。神託一つで戦争すら許容されるのがこの世界。つまり今、イストルカレン家は、存亡の危機にあるということだ。国軍による討伐をも辞さない陛下の強い意志を感じ取り、東公は状況の悪化を悟ったのか、恭順を示した。


「直ちに領に戻り、領内をくまなく捜索し、発見したならば、捕縛致しましょう」


「必ず、異端審問の場に連行せよ。もし其の者達が無理であるならば、其の者達の主でも良いぞ、公爵」


つまり、東公が雇い主だということは知っている。下手な報告をしたら、東公自身を異端審問に掛けるから、覚悟しておけ、ということだ。


東公には、匿っているであろう3名を引き渡して異端審問に掛けるか、捜索中と言って引き延ばすかの2択があるのだけれど……異端審問に掛けられたら東公が主犯であることが確定するから、引き延ばす以外の選択はない。ただ、捜索中と言っている間は、下手をすると自身が拘束されかねないから、東公が領から出ることは無いだろうし、この話が広まってしまえば国内の影響力も急落するだろうな……。


なお、12名の鑑定結果の概要は聞いている。全員イストルカレン領出身で、その多くは名字からすると孤児であり、専門の訓練を受けた諜報員の可能性が高いそうだ。逃げた3名は、イストルカレン領の貴族に連なる者らしい。変装していたらしいが、出自を活かして貴族として活動を行っていた可能性もあり、下手に自死させてしまうと、諜報活動の証拠となりかねないことから、やむなく自領まで逃したのではないか、という話だった。


今回の一件、神託という、前世で喩えるなら錦の御旗を掲げることが出来た時点で、こちら側の勝利は確定したのだろう。




その後は、幾つか言葉を交わして、東公の謁見は終了した。私はその後、お父様とともに陛下の執務室に呼び出された。


「さて、此度はこれで幕が引けそうだが、今後の話については、再調整せねばな」


「娘の婚姻に関しては、18才以降に検討せねば、神託に反することとなりかねませんからな」


お父様……そんなに嬉しそうにされても困るのだけれど……。


「以前から計画していた、婚姻を打診する者達との茶会や舞踏会なども、当分の間延期となった」


そんなことが計画されていたのか……延期とは言わず、無くして欲しい。


「それに今後は、災害等の対処協力を名目にした、そなたを取り込もうとする画策は、表面的には無くなるだろう。どこの国も、精霊と敵対したくはないだろうからな。余も、精霊女王から直に警告を受けたため、不審な協力を断る口実が出来た」


「そうなって頂けると有難いものです。精霊女王様は、各国の政治的な思惑で、本来の活動が阻害されることを、懸念されておりましたので」


あの後、女王様に念話でお礼を言ったところ、その様に言われたのだ。それに、最近精霊を軽んじる傾向が、人間の一部に見られていたらしく、その対策でもあったようだ。通常の人間には精霊が見えないから、その分私が色々活動することが、精霊の存在を感じさせることに繋がるらしい。普段から接している者としては、精霊を軽んじることなどありえないが……その辺りは、前世で合気道が胡散臭い目で見られたこともあったから、分からないでもない。


その後、幾つか今後の方針を話し合い、私達は陛下の元を辞した。


今回の件に関し、色々考えることはあるが、特に気になっているのが神託についてだ。恐らくは神様が私の事を助けてくれたのだろうとは思うが……それだけではなく、結婚時期にまで言及するのには、何か理由があるに違いないと考えている。


結婚が何に影響するかというと、まずは私の帰属を左右するという点だ。嫁ぎ先の家の人間となり、それがロイドステア以外の国であれば、そこの国民になるわけだ。当面の間は他国による取り込みの画策を禁止する、という意味なのかもしれないが、そうであれば期間を限定する理由が不明だ。それに現状でも、国内法では25才まで結婚できないから、今回の様な悪質な手段でなければ、18才までに結婚することは無いわけだから、結婚自体の話ではないかもしれない。


結婚が何に影響するのか、もう一つ考えたのが……子供を作るという点だ。色々変な妄想をしてしまったのだけれど、現実に考えると、そうなるわけだが……つまりは、身も蓋もない言い方をすると、18才まで子作りをするな、ということだ。


ここまで考えた所で、以前女王様に確認した件が思い出された。妊娠していた場合、和合を行うと胎児に悪影響がある、と。


仮に、和合が行えない状況を避けるために神託で結婚時期を示した、とした場合、逆に考えれば、和合しないと解決出来ない問題がその期間内に発生する、という言い方も出来るわけだ。現在、そのような事態は思い付かないが、そちらの方が正鵠のような気がする。


つまり、今後7年くらいの間に、私が和合しなければ解決出来ない何らかの非常事態が発生する可能性が高い、ということだ。


今後の生活に言い知れぬ不安を感じつつも、現状出ない結論を追うのは無駄であると判断し、思考を中断したのだった。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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