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第225話 サザーメリド国での魔物暴走対応協力 8

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

サザーメリド国王が会談に来た日以降、事実とは異なる噂が多くの場所で囁かれ始めた。賠償を受け取っていないのに受け取ったことにされ、やはり何かあったのか、というような感じだった。サザーメリド側の動き自体は事実であったため、信憑性が上がり、尾ひれがついて様々な所で話され始めた。


こうなって来ると、人の口に戸は立てられないので、かなり面倒になる。私が魔法省の庁舎内を歩いていても、好奇の視線に晒されることが増え、生活が息苦しくなった。なまじ感情が読める分だけ、更にダメージを食らうというね……。


流石に精霊課付近ではそういった視線は感じられないが、このままだと、じきにそういった雰囲気に覆われてしまうかもしれない。この状況を挽回するには、東公側の諜報員達を捕らえ、正しい噂を流す必要があるが……王都で噂をしている人を確認するだけであるなら、精霊達に力を借りれば可能だけれど、恐らくは単なる話のネタとして噂をしている一般人が殆どであり、それらの人と見分けが付かないから、拘束する名目が無い。


東公の諜報員達は優秀で、アルカドール家と王家が合同で捜索しても、なかなか尻尾を出さない。長期戦になるだろうと思われていた矢先、執務中に侍従の一人がやって来た。


「導師様、只今より、謁見の間において、神託が開陳されますので、立会をお願いします」


「神託……ということは、神託の内容は、私にも関係するのでしょうか?」


「導師様の立会は指定されましたから、恐らくは。大司教台下も既に来られております」


「それは急がねばなりませんね」


この世界の神様は、カラートアミ教の教主猊下、つまり神子様を通じ、神託を発することがある。この際、特定の国に関する内容であった場合は、当該国の大司教を通じ、国王に伝えることになっているのだ。今回の場合は、うちの国に関する内容で、私も関係しているから呼ばれたようだ。


うちの国では、神託は謁見の間で開陳される。陛下や関係者だけではなく、居合わせた不特定多数の人も聞く事が出来るから、内容をごまかすことが出来ない仕組みになっている。まあ、どのような内容であっても神様の有難い言葉なら、聞きたくなるのが人情なので、通常は多くの人々が集まることになる。


謁見の間に到着すると、既に陛下が来られており、謁見の間の中央にいた。私は謁見の間の所定の場所で待機した。暫くすると、大司教台下が来られたので、陛下が大司教台下の目の前で跪いた。王は神にのみ跪くとされており、今回の様に神託を賜る際も同様だ。


大司教台下は、神託の内容を書いているらしい書簡を開いた。すると、大司教台下の体が仄かに光ったような感じがして、同時に、跪きたくなってしまった。周囲も皆、跪いているので、恐らくは神託の効果に違いない。私も跪き、暫くすると、大司教台下が神託の内容を言葉にした。


【フィリストリア・アルカドールは、今は手入らずの娘なり。また、18となるまで婚姻すること勿れ】


何だそれは! そのまま私個人の内容じゃないか! ……いや、とりあえず落ち着こう……。神託が終了し、陛下が大司教台下に所定の言葉を返していた。いつの間にか、神託の効果も切れていたので立ち上がった。


神託を聞いていた人達は、驚いたり、私の方を見たりしているが、かなり困惑しているのが分かる。大司教台下が謁見の間を去り、陛下も謁見の間から退室された。ただし、私は侍従の一人に案内され、陛下の執務室に入った。


「フィリストリア・アルカドールよ、先程の神託の通り、18才となるまでは婚姻をさせぬ故、そなたも軽挙はせぬことだ」


「フィリストリア・アルカドールは、神の御言葉に従います」


「うむ。また、神託には必ず意味がある。こちらでも検討するが、そなたの方でも内容を吟味せよ」


「承知致しました」


陛下に礼をして、執務室を辞したが……とりあえず私は、神託の内容を考えなければならない。表面的な意味なら、私が現在誰とも関係を持っていないことと、18才になるまでは結婚するな、ということであるのは判るのだが……正直、相談した方がいいな。よし、今日は早退して、お父様達に相談しよう。




早速早退して王都邸に戻り、お父様達に神託の内容を相談した。


「なるほど……神託の前半部分は、フィリスの身を、神が保証して下さっているわけだから良い事なのだろうが……後半部分は、その通りにします、としか言えんな」


「ええ。この時期に賜った神託ですから、それ以上の意味があるかも、と思いまして、取り急ぎ、報告させて頂いたのですわ」


私とお父様がそう話していると、お母様が何かを気付いたらしく、発言した。


「恐らく後半部分は、18才になって振り返ってみないと意味が解らないのではないかしら。ですから現段階では、神託の前半部分だけ考えましょう。そして、この神託は、神が私達をお助け下さっているのだわ!神よ、感謝致します」


「む? エヴァ、それはどういうことだ?」


「現在私達は、意図的に誤った噂を流す者達への対処に手を焼いているわ。でもそれは、拘束する法的根拠が無い、ということが問題となっていただけのこと。ですが、神託を賜った今、『神託に反する』誤った噂を流すことは、異端審問に掛けることも考えなくてはいけない所業。つまり、それを名目とすれば、噂を流す全ての者を拘束出来るわ!」


「成程! それならば明確な根拠となる! では、直ちに政府と調整して、対処しよう! やはり神は正しき者を救われるのだ! 神よ、感謝致します」


「そのような御心が……神よ、感謝致します。しかしながらお母様……神託の内容を知らずに噂した者達も捕らえてしまうことになるのでは?」


「当然、そうなるわね。ですが、神託に反する行為となってしまったのは事実。それは罰されても仕方のない事よ。でも、不幸にして神託を知らなかっただけの者は、今後は神の御言葉に従うのであれば、大した刑罰にはならず、すぐに釈放される筈よ。それと、異端審問であれば、嘘を吐くことは出来ませんから、確実に東公の手の者が炙り出されると思うわ」


この辺りは、前世とは感覚が違うのかもしれない。神の言葉は絶対で、従わない者は異端者であり、許されない存在なのだ。そういった意味では、こちらの世界の常識の範疇……だと思う。仕方ない。


「……確かに、その通りですわね。では、私は噂を流している者を、拘束担当者に伝える役、ということですわね」


「ええ。あと、カイにも頼んだ方がいいわね」


こうして、神託を活用した諜報員捕縛作戦が行われることになった。




当初、お父様が宰相府へ向かい、宰相閣下に作戦の概要を伝えて承認を得ると、早速法務省と調整を始め、併せて捕縛の為に、国軍総司令部憲兵隊の一部が動員されることになった。私とお兄様は、宰相府の会議室に向かい、夕方から夜にかけて、王都内の盛り場などを中心に、私に関する噂を話している者を捜索していった。


近場については、お兄様が捜索し、見つけ次第憲兵隊に通報し、私については、近場以外のあらゆる場所に精霊を飛ばして捜索し、該当者を見つけ次第、憲兵隊に通報することになった。


風精霊達を呼び出して、人の噂話の中で、私に関する内容を話している人達がいれば、私に伝える様指示を出し、暫く待っていた所、早速見つけたようだ。別の風精霊と感覚共有し、現地へ向かう。王都内の平民が利用する食堂の様だ。現在は夜なので酒場になっている。……あの2人か、話を聞いてみよう。


「それでさ、サザーメリドって国の王子様が、導師様と懇ろになったらしいぜ」


「本当かよ……だって魔物暴走を鎮めるために行ったって話だろ?」


「そんなわけあるかよ。こないだあっちの王様が来てただろ。婚約するって話だぜ」


……これは駄目だな。申し訳ないが、拘束させて貰おう。小威力の雷魔法で……えいっ。


「ぎゃっ!」


「うわっ、なんだ? こいついきなり倒れやがった。飲み過ぎか?」


よし、この人とこの場所を覚えて……通報するか。




このような感じで3日間ほど捕縛作戦を続けたところ、神託の内容が王都中に伝わったこともあり、私に関する誤った噂をする者は、いなくなった。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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