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第022話 テトラーデ領での滞在 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

あっというまに5日経ち、ハトーク分領に出発した。2日の行程で、特に問題なくハトークに到着した。魔物すら出て来なかったので、やはり王都周辺は治安が安定しているようだ。


こちらでは、太守であるノルディック・アイスロイズ子爵の家にお世話になるそうで、現在、子爵邸に向かっているところだ。ハトークは、うちで言うところのプトラムと同じような位置づけで、領内の主要な港周辺を効率的に統治するため、分領に設定しているのだ。


ということでここは海の近く。こちらの世界の海を見るのは初めてだ。自分の領の海より先にこちらを見るのは何だが、それでも楽しみだ。


子爵邸に到着した。子爵夫妻と挨拶をした後、とりあえず部屋に案内された。今日は歓迎の宴席があるようで、それに参加した後休んで、明日以降叔父様は視察を行い、私達は観光することになる。子爵邸には3泊して帰る予定だ。


アイスロイズ子爵は夫人のレコーナリアさんの他、息子さんが1人、娘さんが1人いるが、どちらも王都の学校に行っていて、今はいないそうだ。宴の際に、明日は港を観に行く予定だとレコーナリアさんに言われた。基本的に、2日間、彼女が案内してくれるそうだ。




次の日、私達はレコーナリアさんの案内で港周辺の施設の観光に向かった。こちらの馬車は少し小さく、全員が一つの馬車に乗れなかったので、母様とレコーナリアさん、キーファナが1台に、兄様、アレクと私が1台に乗っている。その他、レイテア達護衛がかなり窮屈そうにもう1台に乗り、馬に乗ったアイスロイズ家の護衛達に先導されて移動している。


まずは港の魚市場だ。当然魚介類が並んでいる。魚は前世で見たものとあまり変わらないように見えたが、種類が少ない気がした。こちらでは食用にならないのか、それとも獲れないのかはわからないが、エビ、カニ、タコやイカなど、日本ではおなじみの食材が並んでいなかった。兄様とアレクは魚市場を見たのが初めてなのか、非常に楽しそうだった。


魚市場近くの、食事が出来る宿で昼食をとることになった。この宿のオススメである海鮮料理を食べたが、特にフライとスープが美味しかった。ただ、メニューを見せてもらったが、この国は生魚を食べる文化はなさそうだ。あんなに新鮮な魚貝類が並んでいたのにな……元日本人としては、たまには寿司や刺身が食べたいと思うが、色々難しそうだ。


昼食後、この付近で取れる魚介類を紹介している展示場に行った。観光用の施設だそうだが、生きている魚も水槽に入っているので、ちょっとした水族館だ。実際、人気のスポットらしく、賑わっていた。アジやサバ、ブリなどが泳いでいた。また、エビやイカなども展示されてはいたが、説明を読む限り、食用にはなっていないようだ。何と勿体ない。


食い入るように(実際に脳内で調理されていたが)エビなどを見ていた私を不審に思ったのか、レコーナリアさんが話しかけて来た。


「フィリストリア様は、こちらの生き物に興味がおありなのでしょうか?」


「その通りですの。海老は、この部分の肉が美味しいそうですし、烏賊については、この中の内臓を取り出して、固い部分を処理すれば美味しく頂けると、何かの本で読みましたので、それを思い出していたのですわ」


「あら、フィリストリア様は博識ですわね。それらの知識は、地元の漁師たちくらいしか知らない筈なのですが。私も、以前試しにと夫に調理済みのものを食べさせられて、驚きました。ただ、美味しかったのですが、やはり外見が異様なため、一般の食卓には上がっていない様ですのよ」


「それは勿体ないお話ですわね。調理法を確立させて、きちんと宣伝すれば、名物にできそうですのに」


まあ私の様な小娘が突然言い出した戯言が、現実化する筈もなくその日は終わったのだが……。




次の日は、貝、恐らくカキの養殖場を見学に行った。海辺にあるので、行く途中は海の遠くの方を眺めていると、暫くして養殖場についた。現場を見た所、確かに日本のカキの養殖場に似たような風景だった。


そこで、実際にカキを取っている所を見た。やはり今が旬だそうで、粒が大きく、味も濃厚なのだそうだ。案内していた漁師さんが、殻をナイフでこじ開けて、中身を見せてくれた。


「これはこのまま食べられますの?」


「フィリス、はしたないですよ」


あまりに美味しそうなので、ついつい質問してしまったら、母様に笑顔で叱られてしまった。


「これはこれは、お嬢様はお目が高い。実は、今の時期は取れたてを生で食べるのが、一番美味しいのです。ただ、腐ってしまいますので、取れたてでないとお勧めできませんが」


「エヴァンジェラ様、実はこの者の言う通りですのよ。宜しければ昼食の際に準備をいたしましょう」


もしかすると、レコーナリアさんは元々私達に試食させる気だったかもしれない。しかし、母様も知らなかったのなら、本当に地元の漁師くらいしか知らないのだろうな。


ということで、養殖場の食堂で、少し早目の昼食を頂くことになった。カキのスープやフライなどに加え、生ガキも出て来た。生ガキはその場で殻から取り出された。そこで水属性の人が生ガキに軽く魔力を込めていたので聞いてみると、中らなくなるそうだ。カキの免疫力を高めて菌やウイルスの繁殖を抑えているのか、それとも、魔力自体に殺菌・殺ウイルス効果があるのかもしれないな。


その後、軽く水洗いをした後に、レモンらしき果物の果汁をつけて食べた。非常に美味しかった。母様、兄様とアレクは、警戒していたようだが、私とレコーナリアさんが美味しそうに食べるのを見て、恐る恐る食べたところ


「あら、本当に美味しいわ。こんなに美味しいものを知らなかったなんて、勿体ないことをしていたわ」


と、母様は非常に喜んでいた。兄様とアレクは、こういう食べ方もあるのか、程度の反応で、むしろカキフライの方が気に入ったようだが、ここは嗜好の差なのだろう。




その後は砂浜に足を運んだ。流石に今の時期は寒いが、夏はこの辺りで泳ぐ人たちもいるそうだ。泳ぐ際にどんな服を着るのか、気になってみたので聞いてみたところ、肌着に近い感じの服で、透けて見えない様に厚い布を使っているそうだ。まあ、地球の頃の水着をこちらで着たら、痴女認定されることは間違いない。ちなみにアレクは、海の水をなめて、塩辛いことを確認していた。


久し振りの海を満喫して、次の日、私達は子爵邸を出発した。ちなみに、叔父様はテトラーデ領警備隊のうち、海辺周辺の警備を行う部隊を視察に行ったのだそうだ。海にもたまに魔物が出るため、その対処のために編成されているそうだ。


戦い方は、網や魔法を使って誘導し、袋小路のような場所に追い込んで、最後には銛などで倒すらしい。戦闘技術はもとより、操船技術も高いものが要求されるため、厳しい入隊試験があるそうだが、その分、尊敬されているという話だった。海の魔物には魔鮫などがいるそうだが、前世で見た、サメに襲われる映画を思い出し、密かに尊敬の念を抱いたのだった。


その後は特筆すべきイベントは無く、勉強をしたり、本を読んだり、鍛錬に参加したり、叔父様一家と交流したりして過ごした。何度か母様目当てでお茶会が開かれた際に、私も参加したが、特に注意されることはなかった。良かったよ。




そして1か月が過ぎ、我が家に帰る日がやって来た。今度はお祖父様とお祖母様も含め、6人で見送ってくれた。アレクやセディは寂しそうだったが、また会うことを約束して、伯爵邸を出発した。


帰りの行程は、何事もなく順調に進んだ。少しずつ寒くなっていくので多少心配したが、アルカドール領も雪がかなり融けており、馬車も普通に通れたので、安心した。家に到着すると、父様とお祖父様が待っていたので、皆で談話室で色々話した。その際に、二人にお土産を渡したところ、喜ばれたので、任務達成といったところか。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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