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第224話 サザーメリド国での魔物暴走対応協力 7

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

会談は、暫くの間、対話になっていない状態が続いたが、陛下が頃合いと判断したのか、私の方を見て


「精霊導師よ、どう思う」


と仰った。ちなみに私は会談の前に、簡単な指示を受けている。サザーメリドが私個人に謝罪する方向に話を進めない、というものだ。ということでお呼びがかかったので、皆の前に出て一礼した後、陛下の近くに行き、跪いた。


「恐れながら陛下、かの国の件は、既に私の関与できるところではございません。精霊女王様より『見ておれ』と告げられておりますので」


まあ、あの時の念話を考えると、今の王家を潰すまで続けるような雰囲気だったけど、今言う話ではないので省略した。


陛下は頷かれ、私に席に座るよう指で指示された。私は、再度礼をして、準備された席へ移動した。


「……ということだ、サザーメリド王よ。貴国の国内問題には関れんよ」


「そんな! 精霊導師よ、頼む! 精霊女王に取り成してくれ! 息子の無礼は謝罪する!」


「……確かに、故意に精霊が入れない部屋を宛がわれて精霊と分断される、食事に媚薬を混入される、部屋に眠りの香を仕掛けられる、等はございましたが、それらは全て王太子殿下ではなく、下々の者が行ったことのようですし、全て問題なく阻止致しましたので、サザーメリド国王陛下が私に謝罪される謂れは、微塵もございませんわ」


私がされたことを初めて聞いたロイドステア側の人達は、冷たい視線をサザーメリド側に向けた。お父様は、怒りが再燃しているようだ……これ以上この話題はやめよう。


「……そ、そうだ! おい、あれをここへ!」


何やらサザーメリド国王が指示して、誰かが部屋の外に走って行った。暫くすると、10人くらいで、大きな箱を持って来た。何だろう?


「これは詫びの品だ!」


箱が開けられた。中には、魔石が沢山入っていた。周囲が驚いているので、結構な量なのかもしれない。


「どうか、謝罪を受け入れて貰いたい」


「……この程度で、謝罪と仰るのでしょうか?」


「なっ! ……そうか、精霊導師は魔石の価値を知らぬと見える。これは、ロイドステア国の年間輸入量に等しい量。これだけあれば、数千の魔道具が作れるのだぞ!」


とは言ってもね……地龍様から大量に頂いているし、受け取る気が起きるわけがない。よし、実際に見て貰おう。地龍様から頂いた大量の魔石を異空間から取り出し、双方の席の間にある、空いた場所に置いた。軽く見積もって10倍以上の量の魔石が突然現れたことで、皆が驚く。


「これらは、今回さる御方から賜った品ですわ。貴国は、謝罪したいと仰るならば、如何程の魔石を、下さるのかしら?」


「こ、この大量の魔石は……我が国であっても準備が容易では……」


「その方は、釈明をするためわざわざ眷属をこちらに遣わしたのだ。全くもって律儀な方よの」


「はっ! ま、まさか……地龍殿が……」


サザーメリド側の人達の顔色が変わった。どうやら地龍様は、彼らにとって大きな影響力を持つようだ。そして、地龍様が既に私の側にいることを察したのか、かなり気落ちしたようだ。魔石を収納しよう。


「ですので、貴国からの謝罪を受ける理由も、受ける気も、毛頭ございませんわ」


「そ、そんな……」


サザーメリド国王も、かなりショックを受けたようだ。さて、どうしようかと思った時に


『フィリストリア、丁度関係者が揃って居るようじゃし、今からそこへ行く』


という念話が届いた。まずい! 注意喚起しないと!


「皆様! 精霊女王様が、今から臨場されますわ!」


と言ってから、とりあえず跪く。他の人は戸惑っていたが、程無くこの場に現れた強大な威圧感に、事態を悟って、両国王以外は、全員跪いた。女王様は通常の精霊とは違い、精霊視を持たない者にも、見えるようだ。


女王様は、会議場の中央付近に浮遊しながら、サザーメリド国王に告げた。


『サザーメリド王よ、汝等は、使命に基づき魔物暴走対処に協力した我が愛し子に対し、感謝するどころか、謀った上、数々の仕打ちを行った。我が愛し子は無事であったが、我は許さん。故に、我が敵と見做す。申し開きはあるか』


女王様の強烈な威圧に何とか対抗出来たようで、サザーメリド国王は、たどたどしく口を開いた。


「せ、精霊女王よ……あれらは……我が息子が……仕出かした事……処罰する故……怒りを……」


『この期に及んで、偽りを申すとは……汝が息子に命じていた事、知らぬと思うたか?』


どうやら女王様は、全てを知っているようだ。もう、終わったな……。


「あ、ああっ……許して……」


『見苦しい。喋るな』


女王様はそう言うと、威圧を強めた。サザーメリド国王は震え出し、話すことすらままならなくなった。


『ロイドステア王よ、今後はこの者の様な、道理を弁えぬ輩の元に、我が愛し子を遣わしてはならぬ』


「……精霊女王よ、心得た」


『フィリストリア、ではな』


女王様はそう私に伝えると、精霊界へ転移した。一応皆に伝えておこう。


「皆様、精霊女王様は、精霊界へお帰りになられましたわ」


私がそう言うと、跪いていた人達は、席に戻ったが……既にサザーメリド側は、国王以下、会談が出来る状態ではない様だ。陛下達もそう判断したらしく、陛下が宰相閣下に何かを指示された後


「これ以上の会談は無意味故、協定違約金に関する担当者を残し、終了させて頂く」


と宣言し、ロイドステア側は、宰相閣下と数名の補佐官、外務省の担当課長を残し、退室することになった。サザーメリド側も、大使と数名の文官を残し、王城を去って行った。その姿は哀愁を誘うものではあったが、正直、あの国とはもう関わりたくない。ついでに、証拠品として持っていた眠りの香や、食事を提出しておいた。




私が王都に戻って以降、家でも毎夜対策会議を行い、その日の噂の状況や活動内容、変化事項などを話し合っているのだが、今日については、お父様が会談の件で怒っていた。


「自ら命じて起こしたことを、平然と息子に責任を擦り付けるような輩など、王としても親としても言語道断だ!」


「……そのような国に、フィリスを嫁がせるような事態にならなくて、本当に良かったわ」


「全くです! フィリス、今後は相手を選んで協力をしないといけないよ?」


「お兄様……心配して下さるのは有難いのですが……流石に国際情勢も絡むと、如何ともし難いですわ」


といった感じで話し合ったが、噂や活動状況については、殆ど変化が無かった。東公の動きはまだ掴み切れていない。会談の場でも東公との関係が出ることは無かったからね……。


まあ、サザーメリド側としては、公爵とは言え、他国の者に唆されたなんて恥以外の何物でもないし、外患誘致に乗ったようなものなので、自分達の立場が更に悪くなるだけだから、口に出来なかったのかもしれないけれども。


なお、あれから担当者間の話し合いで、協定違約料として、魔石半年分をステア政府が受け取ったそうだ。


その他、女王様の仕置が終了するまでの間、ロイドステア国とサザーメリド国は国交停止状態になる。まあ、元々騙すつもりで協力を申し込んだ結果だし、現在のサザーメリド国と国交を開いていると、こちらが許したと思われかねないから、当然だとは思うが……同時に、その間は魔石の輸入も出来なくなる。今後困るようなら、地龍様から頂いた魔石を放出しよう。恐らく地龍様は、それを見越していたのだろうから……有難く、使わせて貰おう。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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