第222話 サザーメリド国での魔物暴走対応協力 5
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女王様は念話の回線を切ったが、地龍様は私に尋ねた。
『さて、愛し子よ。汝はこれから、どうするのだ』
「差し当たり、自国へ戻らねばなりませんが……手段に悩んでおります」
『そうか。では、そこの転移門が、水龍の棲処に繋がっておる故、それで戻るが良かろう』
おお!それは良いかもしれない。あそこからなら帰れるし、是非利用させて貰おう。
「何と有難きことでしょう! 謹んで、使用させて頂きますわ」
『それから、汝の仕える王にも、我から話したい故、眷属を同行させて貰えぬか』
「承知致しました。ご配慮、誠に有難く存じますわ」
『それと、我からの詫びとして、この洞窟の魔石を、好きなだけ持って行くが良い』
「それは……誠に有難い申し出でありますが……本当に宜しいのでしょうか?」
『なに、どうせ我等は使わん』
「では、有り難く賜ります」
良く見れば、確かに大きな魔石がゴロゴロしていた。今後たくさん必要になるかもしれないし、貰えるだけ貰っておこう……。
付近の魔石を取り終わり、地龍様にお礼を言って、豹神獣と一緒に水龍様の棲処へ転移した。水龍様にも会って話をしたところ、以前も乗せて貰った鳥神獣で送ってくれることになった。感謝だ。
ただ、行先については、王都まで行くとかなりの長距離になることもあり、比較的近い、セイクル市のアルカドール本邸の方に向かって貰うことにした。それに、今回の案件は、お父様達にも一度相談した方が良いだろうし。セイクル市までは、そんなに速く飛ばなくても、1時間程で着くそうだ。夜も明けたので、これだけなら、空の旅っぽいんだけどね……。
アルカドール本邸に到着した。庭に着陸すると、警備に就いていた護衛達がやって来た。
「お嬢様ではございませんか! どうしてこちらに?」
「お父様達の所に、案内して頂戴。至急お話したいことがありますの」
お父様もお母様も、丁度邸内にいた様だ。とりあえずお父様の執務室に向かう。
「フィリス、一体何があった?」
「お父様、私は先程まで、サザーメリド国に行っておりましたの」
「何と。災害でも発生したのか?」
「はい、その件について至急相談したいことがございまして……宜しいでしょうか」
「勿論だ。それよりも、疲れているのではないか?」
「いいえ、大丈夫ですわ。それと、お母様にも話を聞いて頂きたいのですが……」
「そうだな。では、談話室で話を聞こう」
お父様と私は、談話室へ移動し、お母様にも来て貰った。ついでに、豹神獣にも同席して貰った。
「フィリス、急に帰って来てどうしたの? それと、そちらにいらっしゃるのは、神獣様では?」
「ええ、お母様。先程まで私は、魔物暴走対応への協力の為、サザーメリド国にいたのですが……」
それから私は、これまでの事を話した。時々、豹神獣にも補足して貰った。まあ、話の途中でお父様が怒り出して、何度も宥める羽目になったけれど、漸く説明を終えた。
「……それで、今後は、どうするのだ?」
「これから陛下に報告し、指示を仰ぎますが、基本的にはサザーメリド国の協定違反を責める形になるでしょう。また、精霊女王様が何かを行われるようですので、そちらも確認する必要がございますわ」
「奴らはお前を陥れ、我が物にしようとしたのだ! 断じてその程度で許すものか!」
「お父様、落ち着いて下さいませ」
「ぐぐぐ……大変だったのはお前なのに、すまん。だが……腸が煮えくり返る様だ!」
お父様は怒りが全く収まらない様子だ。一方、お母様は……何か、心配な事があるようだ。
「お母様、何かを懸念されているのでしょうか?」
「……私も怒りたい所なのだけれど……それより今は、東公の動きが気になるわ」
「東公の? どういうことでしょうか」
「私が東公の立場であれば、ここから更に、仕掛けるわね。特にこの場合、フィリスに関して、様々な噂を流すでしょうね。フィリスがこの国に居られなくなる様な」
それを聞いた途端、お父様が我に返った。何かに気付いたようだ。
「東公の狙いはそれか! エヴァ、良くぞ気付いた! 流石は我が伴侶だ」
「ええ。貞操を疑われるような噂を流されると、下手をすれば取り返しがつかないことになるわ」
「そうなると……正直、現状の態勢では、対応が追い付かん。エヴァ、私達も王都に行くぞ」
「それが良いわね。フィリス、大丈夫よ。私達が付いているわ」
なるほど、そういう攻撃方法もあるということか……。お父様、お母様、心配してくれて有難う。
湯治に行っていたお祖父様に、お父様が当座の領政を頼む手紙を書いたりした後、王都のアルカドール邸に転移した私達は、すぐに王城へ向かった。一応先に連絡は入れたが、直後に会うことになるので、あまり変わらないけれども。その際、レイテアも王都邸に待機していたので、無事を喜んだのもそこそこに、護衛として同行して貰った。
王城に到着し、報告の為陛下に取り次いで欲しいと侍従の一人に頼んだところ、その話を聞いた他の侍従から
「おお、導師様、戻られましたか!御無事で何よりです。ですが、実は今、サザーメリド国大使が来られておりまして、大変なのです」
と言って、謁見の間に案内された。どうやら、私は協力任務を放り出し、逃げ出したことになっているらしい。
「陛下、只今精霊導師様が戻られました!」
「……復命せよ」
どうやら、謁見の間に入って良いようだ。とりあえずは私だけが入ったが……私が現れたことに驚いている大使の左に位置し、跪いた。
「陛下、御前への拝謁賜り誠に有難き幸せに存じます」
「精霊導師よ、まずは大儀であった。して、余が命じた魔物暴走対応への協力は?」
「完了に御座います。こちらに、サザーメリド国王太子殿下の署名を頂いてございます」
そう言って、異空間から証明書を取り出し、近付いて来た侍従に渡すと、侍従は陛下の所へ持って行った。陛下は王太子の署名を確認すると
「しかと確認した。そなたは我が国の誇りである。……さて、大使殿、先程の話とは異なっておるが……子細を所望する」
私が現れたことで慌てていた大使は、陛下のご下問に、とりあえず答えた。
「わ、私は本国からの指示を受け、直ちに参った次第でございます。故に、本国での出来事について、詳らかに出来るわけではございませぬ」
「では、本件に関して責任ある対応を取れる者が、必要よの」
「誠にその通りでございます。本件につきましては、本国と調整し、後日改めてご説明させて頂きます」
「そうされるが良かろう」
陛下はそう言って、手で払う動作をすると
「サザーメリド国大使、謁見終了」
と、謁見を統制する侍従の声が響き、大使は逃げる様に謁見の間を出て行った。また
「精霊導師よ、この後、子細を申せ」
と陛下が仰ったので、私も復命のための謁見を終了し、陛下の執務室へ、お父様とお母様、豹神獣も一緒に移動した。謁見の間にいた宰相閣下も、同席するためやって来た。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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