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第221話 サザーメリド国での魔物暴走対応協力 4

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

私は、近くにいる精霊達に魔力を与え、姿を見せるよう言った。王太子が驚いているので、精霊の姿が見えたのだろう。さて、質問するか。


「私には、このように、常に精霊達が力を貸してくれますのよ?精霊達は、世界の流転を管理するほか、人の悪意や嘘に敏感なのですわ。当然、食事に何かを入れられていたことも、この部屋に怪しげな魔道具が設置されていたことも、承知しております。何故、このような所業を行いましたの?」


「そ、それは、あ、貴女を、手に入れ、ようと……」


「それは、何故?」


「あ、貴女の、ことが、す、好きになって……」


『嘘だよ』


「なっ!」


「精霊には、嘘は通じませんわ。さて、本当の事を言わなければ……」


王太子の顔の近くに、火属性のエネルギーを集めると、王太子は後ずさろうとしたが、ベッドが邪魔で下がれない。更にエネルギーを近づけようとしたところ


「わ、私には、防護の、ま、魔道具が、あるからな! ま、魔法、攻撃は、通じないぞ!」


「……王太子殿下、魔道具も魔法も、ここにいる精霊達が動かしているのですよ? 私に敵対した貴方の魔道具が、作動する道理はありませんわ」


火属性のエネルギーの塊を、王太子の前髪に触れさせると、前髪の一部が一瞬にして燃え尽きた。


「ひいぃぃぃ~~~~っ!」


「さあ、全て、正直に、お話し下さいな」


「は、は、話す! 話すから! 助けてくれ!」


こうして、王太子達の企みを確認することが出来た。要約すると、私を手籠めにして、サザーメリド国に取り込んでしまおうという話だった。既成事実を作ってしまえば、後はどうにでもなると考えていたようだ。これでも私はまだ11才なのだけれど、外見だけなら、背もお母様と殆ど変わらないし、14~5才くらいに見えるから、既に女扱いされているようだ。


正直、怒る気持ちもあるが、それ以上に呆れてしまった。それでどうやって私が、サザーメリドの為に働くのだろうか? ちなみにそこの所も聞いてみたが……直接的な言葉は出なかったが、言うことを聞かなければ、拷問などにより従属させようとした可能性が高いだろう。


で、やはり東公も一枚嚙んでいたらしい。魔物暴走が発生しそうだという警告があった時に、その話をどこからか仕入れた東公が、魔物暴走を口実としてサザーメリド国に私を呼び寄せる計略を国王に持ち込み、国王もその話に乗り、一連の計画を立てたそうだ。食事には、媚薬のような効果を持つ薬を混ぜ、寝込みを襲えば、いくら精霊導師だろうと抵抗出来ないと考えられていたそうだ。


昨日、私の部屋に魔法禁止の処置を施していたのは、私と精霊との分断を狙っていたからだそうで、それが失敗し、今日は眠りの香の作戦を立てたということだった。魔物暴走対処自体は、元々私の参加を当てにしておらず、被害は出るが、更に増援を呼んで対処する予定だったそうだ。


その他、護衛が来ていれば、先に始末したり、人質として使うという話もあったそうだが……一人で来ることにして良かったよ。


さて、国ぐるみの明確な協定違反である上、私の方はきちんと協力を完遂しているわけだから、もうここにいる必要は無い。


「では、お暇させて頂きますわ!」


最大限の威圧を放つと、王太子は気絶してその場に倒れた。自分の小水まみれになってしまったが、自業自得だ。扉の鍵を開けて外へ出たところ、事態を察したらしい衛兵達が私に襲い掛かって来たが、攻撃を躱しつつ、相手の力を利用して、床に叩きつけていった。全員倒した後、近くにあった窓から、重力魔法を使って飛び出し、砦の外に出た。


ただ、深夜ということもあり、ここがどの辺りなのかが全く判らない。全面戦争をする勢いで突撃すれば、来る際に使用した転移門で、王都まで帰ることは可能なのだけれど、その後も大聖堂まで行く必要があるし、不確定要素が多いから、かなり危険な賭けになる。ここは、当初の想定通り、精霊界に一度連れて行って貰おうかな……と考えていた所


『愛し子よ、宜しいか』


と、……豹っぽい生き物が、念話で話し掛けて来た……ということは、神獣か?


「神獣様、何用でしょうか?」


『我が主、地龍様が、愛し子を招きたいと仰っている』


そうか、この付近には、地龍様がいるとは聞いていたし、先程の王太子の話にもあったけれど……このタイミングで呼ばれるということは……今回の件についての話もあるかもしれないので、当座のあてもないから、行ってみようか。


「承知致しました。ご案内をお願いします」


『では、この者にお乗り下され』


豹神獣がそう言うと、空から大きな鳥の神獣が降りて来た。この辺りは、水龍様の所と同様らしい。豹神獣と一緒に鳥神獣に乗ると、鳥神獣は翼を広げ、飛び立った。


「神獣様、地龍様は、どちらにいらっしゃるのでしょうか」


『主は、森の中央にある大洞窟におられる。入口までは飛んで移動するが、洞窟に入ってからは歩きとなる。我が先導するが、道中暗いため、気を付けられよ』


「承知致しました」




豹神獣と話しているうちに、洞窟の入口に到着し、豹神獣の案内で、中に入った。光魔法で明かりを作ると、驚かれはしたが、そのまま進んで行った。


地面が舗装道路の様になっていて、案外歩き易かったためスムーズに奥に進んで行くと、暫くして、膨大な魔力を感じた。先には、広間があり、明かりも灯っているようだったので、光魔法を解除し、広間に入って行った。そこには、地龍様がいた。


豹神獣に続いて前に進み、豹神獣が止まって頭を垂れた所の左に位置し、跪いた。


『主よ、愛し子をお連れしました』


『うむ、大儀であった。下がれ。……さて、愛し子よ。我は地龍。神よりこの地の監視の任を賜りし者だ』


「地龍様、お初にお目にかかります。精霊女王様より加護を賜りました、フィリストリア・アルカドールと申します」


『うむ、汝の事は、精霊女王と水龍から聞いておる。此度の件、汝には申し訳ないと思うておる』


「此度の件と申しますと、サザーメリド国の私に対する企ての件でしょうか?」


『そうだ。此度我は、一月ほど前に、奴らに魔物暴走の兆候があることを伝えたのだ。これまでは直ちに対応しておったが、今回は何故か対応せず、魔物の群れの規模が増大しておったので、不審に思うておったのだが……よもや汝を呼び寄せる口実にするとは……見下げた奴らよ』


「地龍様がお気になさる必要はございませんわ。私も、良からぬ企てがあることを予想しつつも、さりとて放置することも出来ずにサザーメリド国へ参りましたから。地龍様におかれましては、世の些事など気にされず、大いなる任を全うされますれば、この地にとりましても、安寧となりましょう」


『汝の言葉、有り難く思うが……此度の件、精霊女王が激怒しておってな……我も当たられたわ』


「それは……申し訳ございません」


『いや、汝は自身の任を果たしたのだ。何も悪くは無い。だが……この国の指導者達には……報いがあるだろう』


どうやら、女王様も、既にこの件は知っているようだが……サザーメリドに対して怒っているのか。大事にならなければいいけど……。


『フィリストリア。奴等は我が加護を持つお主に、不埒な事を為そうとした。精霊への敵対とみなす』


そこに、女王様が念話で話し掛けて来た。どうやら、地龍様と話していたことも、知っているようだ。


『女王様! ……お気持ちは誠に有難く存じますが、大事にはなさらないで下さいませ』


『いや、人は、痛い目を見なければ解らぬ。エスメターナの時もそうであったわ。此度は、指導者達への仕置とする故、見ておれ。それと、地龍よ』


『……な、何だ』


『次代の王が立ったならば、次は無い、と伝えよ』


『……承った』


そう念話で言った後、女王様は回線を切ったようだ。何をするのかは判らないが、取り付く島は、無さそうだ。あまり血を見ない方向で、終わって欲しいものだ……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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