第217話 ヴェルドレイク様の叙爵の儀に陪席した
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収穫祭3日目、最終日だ。私とレイテアは、報告の後、トンボ帰りで王都に戻って来ている。
今日は広場やら王都多目的催事場などで、踊ったり演劇などを行ったりするのがメインだが、王城では午前中に各種行事、夕方からは祝宴が行われる。私については、祝宴は参加することになっており、当然準備しているのだが、今回については気が向いたので、午前中に一度、王城に行くことにした。
行事の内容は、国の為に尽くした先人達の慰霊や、叙爵、陞爵、叙勲などだが、今回は、ヴェルドレイク様が男爵に叙爵されるので、陪席させて貰おうと思ったのだ。その後、祝宴の準備の為に、王都邸に一度戻らなければならないのは面倒なのだけれど、まあ、晴れ舞台だしね。
ということで制服で登城し、叙爵の儀に陪席させて貰った。式は当然、謁見の間で行われる。玉座の前には今回叙爵される5名が跪いていて、そのうちの1名がヴェルドレイク様だ。魔法省の制服を着ている。
陛下が臨場され、玉座に座り、叙爵の儀が始まった。1名ずつ名前を呼ばれて陛下の御前に出たところで、陛下が御声を掛け、叙爵者が返答する。そして陛下が玉座から立ち、叙爵者のそばにお出でになる。そこで陛下が叙爵の証となる品を御下賜され、叙爵者が陛下に宣誓する、という流れだ。
儀は厳かに進行し、最後のヴェルドレイク様の番となった。
「ヴェルドレイク・セントラーク、前へ」「はっ!」
ヴェルドレイク様は陛下の御前に出て、跪いた。
「ヴェルドレイク・セントラーク。そなたの働きは見事である。今後とも、余とロイドステアの為に在ることを許す」
「偉大なる我が王よ! 御寛恕、浅学菲才のこの身に有り余る幸せでございます。この身が朽ち果てるまで、偉大なる王の為に在りましょう!」
陛下がヴェルドレイク様の前にお出でになり、法服男爵の証である、小冠をヴェルドレイク様の頭に乗せ、ヴェルドレイク様が宣誓した。
「偉大なる我が王よ。私ヴェルドレイク・セントラークは、偉大なる王より賜りし小冠の輝きに導かれ、命ある限り御代を讃え、務めを奉ずることを、御前にて誓います」
陛下は頷かれて、玉座に戻られた。新たな男爵達を祝い、盛大な拍手が起こった。
叙爵の儀が終了したので、私は準備もあるので帰らせて貰った。今回、ヴェルドレイク様は文官だったから、小冠が証となったのだけれど、これが武官である帯剣男爵の場合だと、儀礼用の剣が証となる。
例えばレイテアについては、去年の表彰式の際に、併せて儀礼用の剣が手渡されたのだけれど、そこまで礼式に厳しくなく、どちらかというと流れと勢いで渡した感じだった。まあ、平民出身だから、その辺りも配慮されているのだろう。
しかしながら、今日の陞爵の儀には、昨日優勝したシンスグリム男爵も来ている筈だ。恐らくは、正式な儀礼が見られたとは思うが、レイテアも見たいと言わなかったこともあり、そのまま帰ったわけだ。どうやら、少々照れ臭かったようだ。
王都邸に戻って、軽食を取った後、化粧やドレスの着付けなどを行い、再度登城した。去年同様、公爵と同等の扱いということで、単独での参加だ。
ということで、陛下の開催のお言葉で宴は始まり、挨拶回りを順調にこなしていった。その他、多くの方々から話し掛けられたが、やはり軍関係の主要な役職の方が多かった。当然話題は、シンスグリム……子爵とレイテアの結婚の件だ。結構注目されていたようで、祝いの言葉を掛けてくれた。
特に騎士団長については、当のシンスグリム子爵を連れて挨拶に来た。手間のかかる息子がやっと身を固めてくれた、と表現するのがしっくり来る様な感じだった。
後は昨年同様、各国大使から色々話し掛けられた。パットテルルロース様は裏表無しに友好的だから嬉しいのだけれど、他の方々は、面倒なのよね……。しかも、レイテアが結婚を決めた事を聞きつけて、そこから私の結婚の話に絡めようとするし……必死なのは判るのだけれど。
あと……昨年と同様、いや、それ以上に、お菓子の種類が豪華になっていた。どうやらサウスエッドから来た菓子職人達が、ロイドステアの食材などに合わせてアレンジしたもののようだ。また、サウスエッドはサトウキビから砂糖を作るが、うちは甜菜から砂糖を作っているから、そういった面も違っているようだ。そもそも、あちらは黒砂糖だったからね……。
うちも最初の頃は結構茶色かったのだけれど、製造工程に、製塩の工程を参考にして魔法を取り入れてみたら、白い砂糖が出来てしまったのだ。故にうちの砂糖は、今では「白砂糖」とも呼ばれている。まあ、こちらの方が扱いが楽だから、今ではサウスエッドの菓子職人達も結構気に入っていると、スイーツ交流で着々と地盤を強化している王太子妃殿下が、先程言っていた。
さて、後は……あ、いたいた。本日男爵となったヴェルドレイク様だ。家名は、セントラカレン家の傍流である、セントラークを名乗るようになったわけだが、基本的には変わらないか。
「セントラーク男爵、本日は誠におめでとうございます」
「これは導師様、貴女の美しさの前には、全てが霞んでしまいそうなところですのに、私などのことを気にかけて下さり、有難うございます。今後も一層、励みましょう」
「ふふ、有難うございます。最近は計算具の量産で、大変忙しくされておりますものね」
「評価して頂けるのは嬉しいのですが、研究の時間がなかなか取れないのは残念です。貴女にも助言を頂きたい内容があるのですが……」
「まあ、次の魔道具の構想がございますの?」
「はい。落ち着きましたら、伺わせて頂きます」
「それは楽しみですわ。是非いらして下さいな」
……おっと、これ以上は耳目を集めてしまうかな。ということで、ヴェルドレイク様の所をお暇した。
そのような感じで、今年の収穫祭と、関連行事も恙なく終了した。
それから月末までは、特に大きな問題なく、過ごしていた。魔法教育検討会議や、精霊課と魔法兵団との協同訓練も行われ、参加したり、視察に行ったりした。その様子は、全体定例会議でも報告されていた。それと、私付のメイドだったメイリースが、先日第2子を無事出産したという手紙が届いたので、出産祝いを手配した。年末に帰省した時にでも、会いに行こうかな。
レイテアについては、シンスグリム子爵のご両親に会いに行ったりもした。お父さんは商務省の商業課に勤めているらしい。息子であるシンスグリム子爵が、やっと身を固めてくれるということで、レイテアに大変感謝していたそうだ。
また、シンスグリム子爵との婚約に伴い、レイテアの後任を選考することになったのだが、ある程度の腕を求めるなら、今騎士学校でレイテアが教えている中から選ぶのが一番良いのよね……。私もある程度は知っているだろうし。それをレイテアに伝えると
「確かにそうですよね。では、教え子の中で、優秀かつ希望する者を選んでみます」
ということだった。週1回の授業の時に、確認していくそうだ。まあ、暫くは、うちの他の護衛から色々教わることになるだろうし、私の方でも鍛えることになると思うけれど、それを良しとする人なら、基本的には問題ないかな。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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