第214話 収穫祭初日、魔法学校に遊びに行った
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今日は魔法省の定例会議だったが、重力魔法の魔道具が完成した話などの他、精霊術士の大増加に合わせた新宿舎が来週に完成するという話が出た。二人部屋でも問題ないという精霊術士も多かったが、これまでの待遇から下げてしまうのも宜しくないので、そこは一人部屋を楽しんで欲しいものだ。
今日は人員輸送分科会の日だ。前回同様、国防省にお邪魔して、聴講させて頂いた。前回からの違いは、フロントガラスっぽいものを付ける構想になった他、先日実用化された重力魔法の魔道具の装着部位など、仕様の案が色々挙がっていた。
フロントガラスについては、まだドミナスの方で完成はしていないがコツはつかみつつあるらしい。ちなみに今回の分科会には、私が作った試作も持ち込ませて貰った。水上バイクに近い形のもの、軽自動車くらいのもの、ワンボックスカーのようなものの3つだ。
国防省の試作したものは、馬車や馬から連想したものなので、違う観点も必要だろうと思って預けたのだ。一応運転席……この場合は操縦席になると思うけれど……や、他の座席などの内装も作ってみたので、参考にはなるだろう。今後は、実際に魔道具を取り付けて色々検討するそうなので、試作品は多い方が良いという話だし、預けておいたほうが役に立つだろう。
先日お父様達が、精霊概論の講義の際にやって来て、色々王都で活動してからアルカドール領に帰って行ったのだが、その際に領の状況を聞いたところ、基本的には産業関係は順調で、特に甜菜の栽培については、トワイスノウ、トリセント、カルテリアの3領に新品種の栽培を許可したそうだ。
10年間は、全てアルカドール領が買い取って砂糖に加工する。甜菜を安価で買い取ることで、アルカドール領の利益にするということらしい。ちなみにこの時の値段も、今のところ少し違うらしい。トリセントは体制派だし、カルテリアはお祖母様の実家ということもあって色を付けているが、改革派のトワイスノウはかなり足元を見た値段にしているそうだ。
これには、改革派の切り崩しという面もあるそうで、そういった話も恐らくは王都にいる間に、体制派側、恐らくは央公あたりと話しているのだろうけれど……まあ、とりあえずは様子見かな。
治水工事支援に半年間従事し、メグルナリアがエルスラと交代して精霊課に戻って来たのだが、その際に、メグルナリアの嫁ぎ先が決定した、という話が総務課から入って来た。
確かにあと1年ほどで退官なので、この時期には決定するのが通例だそうだが……今回は、出身のデカントラル領の領主嫡男がお相手ということで、話題になった。つまり、次期領主夫人ということになる。これは、良縁のようだが、実際の所が気になったので、相手を知っている筈のメグルナリアに聞いてみた……のだが……
「……実は……以前から密かにお慕いしておりまして……」
どうやら、幼馴染のような関係で、出来れば添い遂げたいと思っていたようなのだけれど、相手が次期領主なだけに、家の都合が最優先ということで、どうなるか全く解らなかったということらしい。このため、メグルナリアは自分が選ばれるために、精霊術士として実績を作ろうと、かなり焦っていた面があるようなのだ。
以前はそれが悪い方向に出ていたのだが、去年の指導や魔法強化の習得などをきっかけに、良い方向になったようで、それが決め手となったようだ。
今度の休日に、地の精霊術士達が集まって、お祝いをしてくれるらしい。本当に良かったね!
8月になった。月の初めは合同洗礼式なので、当然同席させて貰い、精霊術士候補を探したのだが……今回は火と地、それぞれ1名の精霊視を持つ少女を発見出来た。丁度新しい宿舎も建ったし、大量に入った精霊術士達の勤務も落ち着いたから、受け入れもすんなりと行くだろう。
重力魔法活用会議に参加した。今回も参加者達はほぼ同じのようだ。今回の目玉は、実際に重力魔法の魔道具が完成したことだ。当初は単に物を浮かせるだけの単純な構造だったのだが、色々と改良されて、様々な魔道具が試作されているらしい。
その中で、空動車のエンジンとも言える魔道具が試作されたのだが、問題が発生したようだ。というのは、移動している中で、地精霊がたまたまいない地域や、担当の切り替わりが発生する所では、動作が不安定になるため、安全が保証出来ないということだ。
解決策として、空動車に地精霊が寄り付く魔道具、王城の食事の毒見を行う厨房などに置かれている魔道具だが、それを置くことで、安定した動作を追求する、という仕様になるようだ。
エレベーターなどについても、近傍にそういった魔道具を置いた方が安全だろうという話になった。確かに、精霊達は別に人間の活動に合わせて動いているわけではないし、それがいいと思う。例によって魔法省の関係者を労って、会場を後にした。
収穫祭の時期となった。今年も初日は魔法学校で展示を見て、2日目は武術大会の観戦、3日目は祝宴に参加だ。魔法学校は今回もお兄様にエスコートされて見回ることになっているが……本来ならばお兄様は学生会副会長なので忙しい筈なのだが、初日に関しては、私のエスコート以上に大事なものは無い、ということでスケジュールを調整したそうだ。
正直、喜んで良いやら心配して良いやら分からないが、調整が終わってしまったものは仕方がないので、楽しませて貰おう。今年もお兄様は生活魔法研究会での研究の成果を発表しているそうだから、そちらの方も楽しみだ。
収穫祭初日となった。今回は、レイテアが武術大会に出場しないので、普通に護衛をやって貰っているが、武術大会自体は、レイテアの嫁ぎ先を決めるための大事な指標にさせて貰うので、ご両親が観戦にやって来るらしいし、レイテアもかなり気になっているようだ。まあそちらは明日考えるとして、今は魔法学校だね。
馬車が正門を入って暫く進んだ先に学校の玄関があり、そこにお兄様が待っていたので、馬車を止めて降ろして貰う。作法に則った挨拶をした後、お兄様にエスコートされて、会場を回った。
昨年観に行った、魔法研究所と魔法学校の有志が合同で展示している「魔法の発展性について」の展示場所に行ってみた。今回は氷魔法や雷魔法に加え、重力魔法も展示していた。というか、重力魔法はオスクダリウス殿下が展示していた。
学生会長なのに大丈夫なのかと思ったが、お兄様が言うには、最初だけ自分で展示して、それ以降は研究所に任せるそうだ。まあ、忙しいだろうからね……。
昨年と比べると、氷魔法も雷魔法も練度が向上しており、まさに発展性を感じさせる内容だった。なお、重力魔法の展示をやっていた場所の近くに、ライスエミナ様がいたのは……まあ仕方がないだろう。
お父様がOBらしいし、ミリナも入会しているので、魔法戦闘研究会の展示場所に行ってみた。話を聞く限り、模擬戦でもやってそうなイメージだけれど、魔法戦闘で有効な魔法の使用法などを展示していた。昔は本当に模擬戦をやっていたらしいんだけれど、以前怪我人が出たので禁止になったらしい。さもありなん。
氷魔法の戦闘への活用を説明していたミリナに挨拶をして、内容を確認した後、場所を移動した。
次はいよいよ生活魔法研究会の展示場所だが……今年も盛況のようだ。今回も、悪いとは思いながらも支援して貰いつつ、展示を確認した。やはり今回の目玉もお兄様の研究成果だ。何と今年は、フリーズドライのスープを氷魔法で作ってしまったのだ。一応私が、原理を説明して、お兄様が研究した結果、完成したという流れなのだけれど……まさか完成するとは……。
「もし、そちらの方。展示品を試させて下さるかしら?」
「ど、導師様! 勿論です! こちらをどうぞ!」
今回お兄様が作ったのは、ロイドステアでは普通に飲まれている野菜スープだ。固体となっているスープをマグカップに入れ、熱湯を注いで混ぜ、スープの完成だ。準備されている席に座って、頂きます。
「しっかりと味のある汁になっておりますわ。流石はお兄様です」
「これもフィリスが原理を教えてくれたからだよ」
「それでもお兄様が努力して形にされたから、この盛況があるのですわ。私はお兄様を誇りに思います」
「そう言ってくれて、何より嬉しいよ。有難う」
どうやらお兄様は、この技術を領で活用したいそうだ。確かにアルカドール領は、汁物も結構あるから色々使えるかもしれない。ちょっとした保存食にもなるだろうし、産業的にも面白いかもね。
昼食は、屋台の串焼きなどを買って頂き、その後も色々回って、収穫祭の初日を終えた。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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