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第212話 サウスエッドでリーディラゼフト殿下のお披露目が行われた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

6月に入った。出勤し、書類業務を行っていると、パティ達2人の地の精霊術士が入って来た。


「導師様、道路工事支援業務を終了し、昨日戻りましたわ」


「ご苦労様でした。2か月も早く終了したそうですわね。建設大臣が喜ばれておりましたわ」


「それは誠に光栄ですわ。私達も頑張った甲斐があったというものです」


それから暫くパティ達とお茶を飲みながら、工事支援中の話を聞いた。最初の方は魔法強化後の工事の進め方を試しながら色々やっていたそうだが、最後の方では、かなり要領も掴んで、どんどん工事を行っていったので、その速度について移動するのが大変だったそうだ。


「それは大変でしたわね。今後は魔法強化する側のことも考慮して貰わないといけませんね」


「はい。まあ、良い経験をさせて頂きましたわ。しかし、甘味も久しぶりですわ!」


「貴女達が来られるだろうと思いまして、家の料理人に作らせて、持って参りましたのよ」


どうやらパティ達にも、うちの料理人が作ったお菓子は好評のようだ。日々研究しているし、王都のサウスエッド風お菓子も参考にして、技術が上がっているからね……。


パティ達は、色々話をして、退室した。これから1週間の休暇に入るそうだ。まあ、ゆっくり休んで下さいな。




今週は、非常に重要な仕事がある。とは言っても、基本は定期的に行っている人材交流の視察なのだが……今回は、王太子妃殿下が、リーディラゼフト殿下をお連れして、里帰りするのだ。


一応首も座ったということで、この話が出たのだが……あの親ば……もとい、王太子妃殿下をこよなく愛している国王が普通に出迎える筈は無く、今回は歓迎の宴も執り行うので、宿泊決定だそうだ。私はいつもの輸送支援の他、護衛も兼ねて参加することになっているが、精霊達にも手伝ってもらうし、特に問題は無いだろう。




人材交流定期視察……を名目にした、孫の顔見せの日になった。要領はいつも通り、ただし今日は、大事にリーディラゼフト殿下を抱いている王太子妃殿下と、いつもより多い護衛や侍女など、少々物々しい雰囲気だ。まあ、私のやることは変わらないので、いつも通り転移門を使用した。


「おお!婿殿とレイナ! そして……リディ!」


やはり待ち構えていたサウスエッド国王……と、周囲には考えることを辞めたような表情の侍従達がいた。ちなみにリディとは、リーディラゼフト殿下の愛称らしい。


「……陛下、リディは逃げませんわ。一先ず私達を落ち着かせて下さいませ」


「っ! あ、いや、レイナ、そ、それもそうだな!」


どうやら王太子妃殿下は、本気で国王に注意をする時は「陛下」と呼ぶらしい。殺気のこもった目で国王を見る王太子妃殿下を見ると、やはり母は強いんだな、と思った。




謁見もすぐに終わり、王太子妃殿下とリーディラゼフト殿下は、当然のごとく、国王と王妃の対応だ。私は王太子殿下達とともに、人材交流でこちらに来ている人達の視察に向かった。今回も状況を聞きつつ、手紙や荷物を渡したり、逆に手紙や土産を預かったりした。やはり皆、視察が楽しみらしい。


今回は、昼食の時に王太子殿下の希望で、修行中の人のサウスエッド料理を食べてみた。やはり食べ比べてみると、香辛料の使い方がまだまだ荒いような気もするが、普通に食べられる料理だと思った。




視察については、1日で終了し、夜には歓迎の宴……の名を借りた、実質はサウスエッドでのリーディラゼフト殿下のお披露目会だった。


王太子殿下、王太子妃殿下とリーディラゼフト殿下を紹介した国王は、非常に鼻高々な様子だった。挨拶に来る貴族達も、その様子を察したのか、口々にリーディラゼフト殿下と王太子妃殿下を褒め称え、国王は更に機嫌が良くなったようだ。リーディラゼフト殿下は暫くすると退場されたが、王太子殿下と妃殿下はそのまま残り、挨拶を受けていた。


私については一応護衛の任務もあるので、導師服のまま参加して、壁の花となっていたり、精霊に頼んで会場や王城周辺を確認したりしていた。それでも私に話しかけて来る人は結構いて、宰相や主要な大臣、あと、王太子妃殿下の兄君であるサウスエッド国王太子や、姉君にあたる、メイルダリア公爵夫人も挨拶に来てくれた。


どうやら、王太子妃殿下が私のことも結構話題にしているそうで、色々助けてくれて有難うと多くの方々に言われて、恐縮してしまったよ。そういえば、私に求婚しているらしい、ラプスダール公爵令息も挨拶に来ていたなあ。そんな感じなので、宮廷魔導師長も挨拶に来た。


「精霊導師殿、護衛の任務お疲れ様ですが……また貴女の盛装姿を見たかったものですね」


「宮廷魔導師長殿、そちらは盛装ですのね。よくお似合いですわよ」


「とんでもございません。貴女を前にして、そのような事は口が裂けても言えませんよ」


「そういえば、小耳にはさんだのですが、暫く海の方に行かれていたそうですわね。大層ご活躍だったとか」


「ええ。これも、ロイドステアと同盟を結ぶことが出来たからですよ。ほら、この通り」


と言って、右手の人差し指と中指でⅤの字を作ってスタンガンを行いつつ、左手の手の平に水を集めて凍らせた。つまり、雷魔法と氷魔法を習得したということだ。まあ、度々うちの魔法研究所に行ってたし、いつかは習得するだろうとは思っていたが……流石は世界最高の魔導師と噂されるだけのことはある。


ちなみに彼女(彼? )がやっていたのは、海賊退治だそうだ。強力な雷魔法と氷魔法の前に、海賊達はなすすべもなく全滅したらしい。とりあえず、この人がロイドステアの敵となることは今のところ無さそうなので、良かったよ。


「宮廷魔導師長殿に喜んで頂けたのであれば、人材交流事業も大成功ということですわね」


「ええ。新しい魔力操作法とともに、我が国でも普及させて頂こうと思っております。ただ、それらの発見全てに貴女の力があったと伺いましたが……その辺りをお伺いしたいものです」


「精霊の言葉を解釈致しましたら、たまたま出来てしまっただけですわ。私の拙い言葉を体系化された方々の才能と努力には、頭が下がる思いですわ」


「……まあ、そういうことにさせて頂きましょう。では」


宮廷魔導師長は去って行った。前はしつこい感じだったが、最近は結構間合いを考えて話し掛けて来るようになった気がする。こちらとしてはその方が有難いのだけれど。


宴は問題なく終了した。両国の関係が更に深まったような気がするので、良いことなのだろう。




次の日は、私についてはサウスエッド側の政府高官と懇談を行っていた。サウスエッドから派遣されている2名の精霊術士の状況を聞かれたり、精霊術士がどのように活用されているかを具体的に聞かれたりした。


特に、最近は魔法強化によって精霊術士の活動範囲が広まっているし、先日の道路整備の話などをすると、興味深そうに話を聞いてくれた。ただ、魔法兵団との連携については、詳細を話していない。確か来週にもまた協同訓練が行われるのだけれど、まだまだ検証の面が強いから、下手に外に出すと、誤解されてしまうことがあるからね……。


昼食をこちらで頂いてから、転移門でロイドステアに転移した。なお、リーディラゼフト殿下を抱いた国王が転移門まで一緒に来ていて、そのままロイドステアまで来かねない勢いだったのだが、王妃と王太子妃殿下が冷たい態度で窘めると、渋々リーディラゼフト殿下を王太子妃殿下に渡してくれた。


何はともあれ、今回の仕事は無事に達成出来たようだ。良かったよ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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