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第211話 ヴェルドレイク様が、計算具を完成させた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

和合のコツを教わったことは、私の中で、結構大きな変化となっていたようだ。というのは、毎日の早朝鍛錬で一緒に鍛錬しているレイテア曰く


「先日ディクセント領に行ってから、隙を作ることすら私では困難になりました」


という話だ。自分自身ではあまり感じられないが、敢えて言うなら「世界の法則との一体感」と表現したら良いのだろうか、そういった何かが、先日の件で向上したのだろう。やはり精霊導師としての実力を高めることは合気道を極めることにも繋がるようだ。これからも精進しよう。




休日を鍛錬したりして過ごし、次の週に通常の勤務を行っていたところ、魔道具課長とヴェルドレイク様が嬉しそうな表情でやって来た。


「導師様、此度は画期的な魔道具の開発にご協力頂き、深く感謝致します」


わざわざ魔道具課長も一緒に来たということは……!


「魔道具課長、では、セントラカレン魔技士の開発していた魔道具が、完成したのですね。セントラカレン魔技士、おめでとうございます!」


「導師様、計算具の開発に知恵を授けて下さり、この上なく感謝いたします」


立ち話もなんなので、応接椅子に座って貰い、話を伺った。


ヴェルドレイク様は、完成した魔道具を持参していたので、拝見させて頂いた。これまで色々助言した結果、魔道具「計算具」は、電卓に似た外見になっていた。まあ大きさはB5サイズ、重さも1kgくらいか。見た感じ、10桁の計算が出来そうだ。前世の電卓より使い勝手は悪いだろうが……計算具が完成したという事実が、一番重要なことなのだ。後から改良すれば良いだけなのだから。


「使ってみて下さい。なお、検算用に、こちらも持って来ました」


これまで事務仕事に必須の存在であった、算盤のような器具だ。「算術具」という名前だが、特に魔道具ではなく、前世にあった算盤と同様の使い方をする。なので、速度はともかく、私も一応使える。ということで、試しに計算具を使ってみた。確かに、四則演算が出来る。解答も合っている。私では分からないが、計算だけなら魔力の消費量も微量で、材料さえあれば大量に作ることも可能らしい。


「確かに、計算が出来ます。やはりこの計算具は、歴史に残る大発明ですわ!」


「はい。その上、実は計算具は、これまでの魔道具とは明確に異なる特徴がございまして、無条件に属性を問わず使用可能なのです。通常の魔道具は、魔力の属性を変換する機構を付けなければ、1種の属性の魔力でしか起動出来ない筈なのですが、計算具は、そういった機構が無くても起動出来るのです」


「最初は、雷の素で動作するよう設計していたのですが、魔力自体で動くことが判明しましたので」


「成程。では、風属性の魔道具ではなく、いわば『無属性』の魔道具ということですわね」


「はい。このため、明日陛下に献上することとなりました。もし宜しければ、謁見の間にお越し下さい」


「是非見届けさせて頂きますわ。ヴェルドレイク魔技士の晴れ舞台ですからね」


こうして明日、謁見の間で陪席することになった。




献上の時間となったので、王城の謁見の間に向かう。謁見などについては、内容にもよるが、基本的には高位貴族や政府高官だと陪席が可能だ。重要な情報が得られそうな場合は結構な陪席者がいるわけだが……どこから聞きつけたのか、今回も多くの陪席者がいた。陛下が着席し、計算具献上のための謁見が始まった。


「魔法省魔道具課長ニルストラム・プリナツール子爵、及び魔技士ヴェルドレイク・セントラカレンの入場」


入場統制の侍従の声と共に扉が開かれ、魔道具課長とヴェルドレイク様が入場し、立ち止まって、跪いた。陛下がお声がけをされる。


「魔道具課長。面を上げよ」


「陛下、この度は拝謁賜り、恐悦至極に存じます。陛下と王家の御方々に変わらぬ忠誠を」


「うむ。其の方の忠誠、余に届いておる」


「至上たる陛下にそのようなお言葉を頂けるとは、誠に有難き幸せに存じます」


「うむ。……さて、此度の件だが、画期的な魔道具を開発したということだったな」


「恐れながら、その通りでございます。この魔道具は、計算を行うことが出来るのです。『計算具』と名付けました」


「ほう、興味深い」


魔道具課長は計算具を侍従の一人に渡し、侍従は盆のようなものに計算具を乗せて運び、陛下の近くに移動し、跪いて陛下の手元に盆を掲げた。陛下は計算具を手に取り


「ふむ。動作は……なるほど。では、計算を試すか」


陛下は算盤?を持った侍従と、手ぶらの侍従、紙束を持った侍従を呼び、手ぶらの侍従に計算具を渡した。侍従達は陛下の前で幾つか計算問題を読み上げ、計算して答え合わせをした。役割を交代したりして、何度か繰り返した。


「恐れながら陛下、計算結果は全て正解です。また、別の属性の者に使用させても、この通り正常に動作致します。そして、これほど軽易かつ素早く計算が可能でありますれば、数字を扱う全ての部署において、多大なる貢献を致すことでしょう」


「うむ。これは良き物である。さて、この計算具は、其の方が開発したそうだな?面を上げよ」


「陛下、ヴェルドレイク・セントラカレンにございます。陛下に拝謁賜り、恐悦至極に存じます」


「其の方に相応しい位を授ける。今後も余の為に尽力せよ」


「陛下に忠誠を尽くせるとは、この上なき幸せに存じます。浅学非才の身ですが、更に精進致します」


「うむ。下がれ」


こうして、ヴェルドレイク様の計算具献上は終了した。見た限りでは、非常に評価されたようだ。特に「相応しい位を授ける」と陛下が仰ったということは、計算具発明の功により、叙爵されるということだ。この国の制度的には、収穫祭の時に、恐らくは男爵となるのだろう。


いくら公爵家の出でも、十代のうちに叙爵するのは異例の早さらしい。貴族としては生まれつき魔力量が少なく、低評価だったヴェルドレイク様だが、魔技士という天職を得て、力を発揮しだしたということだ。他人事ではあるが、昔から彼が努力して来たことを知っているので、誇らしいと思っても、おかしなことではないだろう……。




その後、計算具は各所からの注文や製法の購入が殺到しており、ヴェルドレイク様は一躍時の人だ。計算具の存在はステア政府だけでなく、国内の計算が必要なあらゆる場所で使用されることになるようだ。国内だけでなく、諸外国にも計算具の話が伝われば、更に需要は高まるだろう。ただ、ヴェルドレイク様自身は、計算具を更に改良したり、別の魔道具の製作を行いたいそうだ。曰く


「今回、計算具を開発出来たのは、功名心も当然ありましたが、第一には魔道具開発が楽しかったからです。今後も、導師様にご教授頂いた内容を元に、計算具の改善を行って参りますし、新たな魔道具の構想も検討しているのです。構想が形になりましたら、相談に参ります」


とのことだった。今後も更に活躍されることは間違いないだろう。




月末の全体定例会議においても、魔道具課から計算具の件が周知され、今後の政府内での配布の予定や各領への情報提供なども報告された。別件だが、重力魔法の魔道具開発状況についても少し報告されていた。


ちなみに、重力魔法活用会議の後にお母様に手紙を送ったら、アルカドール領の魔技士のうち、重力魔法を習得した者が1名いたので、王都に派遣することになったそうだ。こちらも頑張ってね。


あと、建設省の報告によると、西方街道の工事が、2か月早く終了したそうだ。精霊術士の魔法強化のおかげだということなので、パティ達も頑張ったのだろう。近日中に帰ってくるそうなので、労おうかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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