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第209話 水の大精霊と会った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

書類を確認していると、ニストラム秘書官が入室して来た。どうやら、建設省治水課長が、相談に来ているそうだ。とりあえず、執務室で話を聞こう。


「導師様、突然訪ねて来て、申し訳ございません。実は……」


話を聞くと、現在ディクセント領が、雨が降らずに干ばつとなっているらしい。このため、井戸掘削事業をディクセント領で集中して行っているが、それでも飲み水を確保するのがやっとで、農作物にかなりの被害が出ているそうだ。


今年の井戸掘削支援担当である精霊術士は、水がサーナフィアとロナリア、地がエナとエルスラの計4名だが、サーナフィア達が水精霊達から聞いた話によると、現在水の大精霊がディクセント領にやって来ていて、これから水源の調整をするそうなのだけれど、出来れば私にも力を貸して貰いたい、ということだった。


「なるほど。確かに私が関与すべき内容ですわね。情報提供感謝致しますわ」


「ディクセント侯爵からも転移門使用の許可は頂いておりますので、何卒宜しくお願いします」




それから私は、大臣にディクセント領へ行く許可を頂いてから、王都のディクセント侯爵邸から転移してディクセント領へ移動した。そこから領行政舎へと向かい、会議室に案内されて入室すると、侯爵やジルダロース様、何人かの行政官がいた。


「おお、導師殿、ご足労頂き感謝する」


「侯爵、自然災害への対応は、精霊導師としての務めでございますわ。ところで、今回水の大精霊殿が私をお召しになったという話ですが、詳しく情況を教えて頂けますでしょうか」


それから暫く、行政官から詳しい状況を聞いた。どうやら、セントチェスト国との国境付近で井戸工事に参加していたサーナフィア達のところに水の大精霊が現れて、現状を話してくれたそうだ。


近年見られていた、雨雲が国境付近の高い山脈のせいでセントチェスト側からディクセント領に流れて来ないという事象が、今年は更に酷くなっていて、このため水の大精霊は、地下水の分布を変化させて、バランスを取ろうとしているらしい。ただし、ディクセント領側とも相談したいし、私と協力した方が良いだろうということで、私も呼ばれたようだ。


「では、私は国境付近に伺えば宜しいのですね?」


「これから我々も現地に向かうので、同行して頂きたい」


「侯爵、承知致しましたわ」


こうして私は、侯爵達に同行して、セントチェスト国との国境に近い、オデル村に向かった。セントチェスト国との間の主要道路である、北西街道沿いにある村で、中心都市からは2日で到着した。道中は、侯爵が準備していた馬車で移動したのだが、馬車にはレイテアともう一人、ディクセント領のミナドスター行政官夫人のエクレフィナ様が同乗した。


エクレフィナ様は水の精霊術士だったため、今回同行することになったのだ。精霊課勤務時の話や、ディクセント領に来てからの事など、色々話していたのであまり退屈することはなかった。


オデル村に到着し、村唯一の宿屋に宿泊していたサーナフィア達に会って、状況を確認した。水の大精霊は、こちらの準備が整ったら、水精霊を通じて呼べばこちらに現れるそうなので、今日はとりあえず休むことになった。


侯爵達とともに村長宅に宿泊することになったが、部屋数の関係で、村長の家族達は一旦別の家に泊まるそうだ。身分の関係上仕方がないが、早く用事を済ませないとね……。


次の日、村の広場に関係者が集まったところで、水の大精霊を呼び出した。暫くすると、涼やかながらも満たされるような不思議な感覚とともに、通常の精霊とは異なる、大人の人間の女性に似た姿の水精霊が現れた。


話に聞いていた、水の大精霊だ。ちなみに大精霊は、精霊視を持っていれば他属性でも見えるらしく、精霊視が無い者でも、何か雰囲気が違うというくらいには、判るそうだ。


『初めまして、女王様の愛し子』


「水の大精霊殿、お初にお目にかかりますわ。精霊女王様の加護を賜りました、フィリストリア・アルカドールです。この度は、お会いできましたこと、真に光栄でございますわ」


『そう畏まらないで頂戴。本当は色々お話したいのだけれど、お務めを果たさないといけないのよ』


「そうですわね。では、現状と今後の具体的な改善策について、お聞きして宜しいでしょうか?」


『そうね。まずはその辺りから話しましょうか』


それから水の大精霊は、私達と話し始めた。侯爵達には、エレクフィナ様が通訳をした。


『まず、今回の件は、私だけでも対処すること自体は出来たのだけれど、貴女を呼んでおいた方がいいと思ったのよ』


「それは何故でしょうか?」


『理由は3つあってね。1つ目は、人間の生活に大きく影響しそうだったから、一応貴女を通じて人間側に話を通しておきたかったのよ。2つ目は、私が一度貴女に会ってみたかったの。3つ目は、貴女に伝えておきたいことがあったのよ』


どうやら水の大精霊は、人間への気遣いというだけでなく、この機会を利用して私に何かを教えたいようだ。


「色々お気遣い頂き、有難く存じますわ。ところで……その、3つ目の件は一体?」


『貴女は精霊と同調して、精霊と同じ事を行うことが出来るでしょう?以前、エスメターナに聞いたのだけれど、あれにも細かい部分で色々やり方があるらしいのよ。それで、貴女のやり方も一度実際に見ておこうかと思って、ね』


何と、和合や同化にもコツがあるのか……確かに言われてみればそうだな。これまでは比較できる対象がいなかったから、その辺りは考えていなかったんだよね……。よし、絶好の機会だし、勉強させて頂こう。


「是非、宜しくお願いします」

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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