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第208話 ロイドステアでもカイコを育て始めた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

アブドームから戻ってから暫くは、平穏な日々が続いた。


まあ、結構な夏日になって来たので、日課の早朝鍛錬を導師服で行い、発汗後の処置を浄化機能で行って横着したりしている。一緒に鍛錬をしているレイテアは、汗を軽く拭く程度らしいが、待機時間にも鍛錬しているそうだから、あまり気にしていないらしい。その辺りは、時に陛下の所に行くこともある私とは違うということかな。




月末には、政府全体の定例会議があった。当然、ビースレクナにおける魔物暴走や、その後のアブドームとの協議について、概要が報告された。また、その際に農務省の畜産課で、養蚕に関する研究をアブドームと連携して実施することも併せて報告されていたが、その重要性に気付いた方は少なかった様だ。




5月に入った。1日には合同洗礼式があったので、それに併せていつもの精霊術士候補の確認を行ったが、残念ながら今回は精霊視を持つ子はいなかった。まあ、今は新人が沢山いるし、またの機会かな。


今週は第2回目の重力魔法活用会議があり、各分科会で検討された内容などについて共有するとともに、今後の検討内容について話し合う。ということで、各分科会の事前資料が届いていたので目を通した。


先月、国防省で人員輸送分科会が開催されたが、その後の変化としては、フロントガラスなどについて、ドミナス分領の商工組合と調整しているそうだ。他の分科会も進展はあるようだし、会議はどうなるかな。




会議の日となり、前回同様、宰相府の大会議場に向かった。今回の参加者はほぼ同じだが、分科会に参加していた技術者の一部も来ているらしい。前回と同様、魔法大臣が入場して、会議が始まった。


まずは各分科会の進捗の報告があった。人員輸送分科会は把握していた通り、重量物運搬分科会は……荷馬車と船が混ざったような形だけど、まあ人員輸送分科会の検討内容も反映するようだから、今後更に変わるのかな。


高所・低所移動分科会は……上下に動くゴンドラみたいな感じかな。作業補助分科会は……結構色々な使い方を考えたらしい。軽めのハンマーを振り上げた後に一時的に重くするとか、小さい石を落とす時に重くして衝撃力を上げるとか。地味に戦闘でも使えそうな所が侮れない。


その他、種撒きの作業を、重力で操作して行うとか、道路工事の際に道路を一旦押し固める作業に、重力魔法を使って板を押し込むとか、色々考えているようだ。


その後、各分科会の内容を踏まえた検討が始まった。


大きな所では、重量物運搬分科会の検討している重空動車(仮)は、空動車(仮)の様な操縦席を付けた上で、荷馬車のような感じで重量物を積載・卸下しやすくして、それに加えて作業において何らかの補助機能を付ける方が良いだろうという話になり、高所・低所移動分科会関連では、階毎の移動と目的の階への移動との住み分けや、安全機能の検討を深化するという話になった。


あと2つの分科会は、現状の検討の深化を図ることとなった。


他には、重力魔法や魔道具の研究に関する情報共有が行われた。重力魔法を習得した人は少しずつ増えているようだ。また、習得出来た人の中には魔技士もいて、重力魔法の更なる習熟を図りつつ、魔道具の研究を進めているそうだ。


それと、魔道具の研究については、王都だけではなく、各領において重力魔法を習得した魔技士にも協力を要請する方向だそうだ。ただし、巡回助言で各領を見た感じでは、重力魔法の習得は難航していたので、重力魔法を習得した魔技士もなかなかいないだろうなあ……。


そういえばうちの領には重力魔法を習得した魔技士はいるだろうか?一応お母様に手紙で連絡しておこう……。


最後に、次の会議を8月第1週に開催するということが総務課長から連絡され、会議が終了した。私は、全般の準備や司会進行を務めた総務課長達を労って、会場を後にした。




今日は農務省隷下組織の1つである、畜産研究所に向かっている。先日宰相閣下から話があった、カイコの研究の件だ。畜産研究所は作物研究所に隣接しており、農務省畜産課と連携して家畜の育成方法や改良などを研究している。畜産研究所に到着し、出迎えてくれた畜産課長、畜産研究所長と挨拶して、所内の空き小屋にやって来た。


「導師様、宰相閣下からお話がございましたが……繭を作る虫を飼育し、その繭から糸を紡ぎ、服飾産業化しようという、壮大な試みだそうですな。まずはその虫の飼育が可能かどうか、研究するということですが……どのように行うのでしょうか?」


カイコや回転まぶしを異空間から取り出して、説明する。


「ええ。まずはこの虫ですが、桑の葉を好んで食します。木枠などで囲った中に桑の葉を大量に入れて育てると良いと思われます。その他の環境は、出来れば原産国であるアブドーム国の環境に合わせた方が宜しいと思われます」


「なるほど……気温はさほど変わらない筈ですが、湿度は高めの方が良さそうですな。アブドーム国に確認致します」


「幼虫は、卵から概ね1か月ほどで繭を作るそうですわ。その際には、こちらに幼虫を誘導して、繭を作って貰うのです。そうすれば、繭を加工するのも容易ですわ」


「おお、これは……細かく区分けされた木枠ですか。しかも、回転させることも可能なのですな」


「当初はこの虫を殖やし、成功すれば糸の取り方を研究していくことになるでしょう」


そして、覚えている限りの養蚕の要領を話していった。まあ、私の知識は社会見学で得た程度だし、この世界に適用できそうな内容を選んだから、大したことは話せなかったのだが。


「……正直、一度試してみないことには何とも言えませんが……アブドーム国と連携した上での研究となりますので、ここだけで行うよりも順調に進めることが出来るでしょう。ただし……もしこの研究が軌道に乗れば、桑を大量に育成しなければなりませんね。元々この近辺にはあまりございませんので」


「当座の分は、種や場所を確保して頂けるのでしたら、私が桑畑を作りましょう」


「そうして頂けると非常に有り難いです。では、こちらで場所を準備させて頂きます」


こうして、ロイドステア内でのカイコの研究は、畜産課と畜産研究所に任せることになった。私は適宜支援する。この件での私の仕事は、桑畑を作ったり、相談を受けるくらいだろうか。桑畑は時間が空いた時に、準備して貰った土地に種を植えて木をある程度生長させればいいだろう。もしかすると更にカイコを改良することもあるかもね……。


私がドレスを着るかどうかは判らないが、絹はあの手触りは好きなんだよね……。産業化に成功するのが楽しみだ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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