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第204話 ビースレクナでの魔物暴走対応 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

殆どの魔物は討伐出来たようなので、これで私の仕事は終わりだ。残った魔物達は、領軍と冒険者達に任せよう……そう思った時、何故か魔物達が出現したであろう森の中から、本来ある筈のない、人間の視線を感じた。気になったので、レイテアに周囲の警戒を任せつつ、風精霊と感覚共有し、視線を感じた辺りを探ってみた。


……鎧を着た人が二人いて、話をしている。聞いてみよう。


「あの辺りから放たれた凄まじい攻撃は、一体何だ? ロイドステアの新魔法か?」


「伯爵、あのような強大な魔法など、あり得ませぬ。考えられるとすれば……精霊導師の仕業かと」


「確かに、この人智を超えた所業……それしか考えられんな。全く……我々が必死の思いで国から遠ざけた魔物暴走を、いとも簡単に退けるとは……」


「まあ良いではございませんか。我が国もロイドステアも大きな被害は出ず、丸く収まったのですから。ウェルスーラを通じて取り寄せた、サザーメリドの魔道具のおかげですな」


「その通りか……。では、ロイドステアの者に見つからぬうちに戻ろう」


そう言って、二人は森の奥へ入って行った。どこまで行くか判らなかったので、もう1体風精霊を呼んで、魔力を与えて、彼らが戻った場所を教えて貰うことにして、感覚共有を解いた。




砦に向かうと、魔物の掃討はほぼ終わっていた。領兵に案内され、叔父様の所へ向かった。


「おお、導師殿! 貴女のおかげで、大きな被害も無く、魔物暴走を終息させることが出来ました! 領主として、心より感謝を申し上げます」


「皆様のお役に立つことが出来、誠に光栄ですわ」


感謝の言葉を頂いた後、今後の予定を聞いた。領軍と冒険者達は、暫く魔物の死体の処理で、こちらに残るらしい。まあ、多数の死体が転がっているのはまずいからね……。解体して、使えそうな毛皮や肉などを取った後は、穴を掘って埋めるらしい。そちらはお任せして、私は明日、王都に戻ることになった。




夜には宴会が開かれた。食料は砦に備蓄されていたものや、近くの村から仕入れたものらしい。なお、この砦にあった干し肉は、魔猪や魔鹿など、食べられる魔物の肉を干したものだそうで、今回材料が大量に手に入ったから、大盤振る舞いらしい。私は皆の前で荒魂を使ったためか、遠巻きにされていたので、一人静かにパンとスープを頂いていたのだが、暫くすると、ミリナがやって来た。


「フィリス、今回も大活躍だったわね! 何あの攻撃! あんなにいた魔物を一斉に薙ぎ払うんですもの! 事前に聞いていなかったら、今でも信じられないわ」


「ええ、有難う。あれなら砦に避難して下されば、巻き込むことなく魔物を一掃出来ますからね。それより、貴女の方こそ、初めての従軍は大変だったのでは?」


「それはもう……最初は正直、かなり怖かったのだけれど……皆と一緒だったし、領主の娘が下手な所は見せられませんからね。終わってみれば、魔力波を使う機会が無かったのが残念だったわ」


「流石に近接戦闘は、叔父様がお許しになりませんでしたからね」


「正直、連れて来て貰えただけで有難いと思っているわ。それに、あのフィリスの攻撃は、実際に見るまでは誰も想像出来なかったから、昨日はこの砦、今とは違って悲壮な雰囲気だったわよ」


「本格的に魔物と交戦する前に加勢出来て、本当に良かったですわ。先程伺ったのですが、弓矢や魔法での遠方からの攻撃で、魔物の勢いをある程度削げたのも良かったのでしょうね。混戦状態だと、私もなかなか加勢が難しい所でしたから」


「ええ。次から次に魔物を魔法で攻撃したわね。そう言えば貴女、元々の砦の方では何をやったの? 魔物が一斉に倒れて死んだと聞いたのだけれど」


「精霊の力で、呼吸が不可能になる状態を作ったのですわ。魔物とて、生きるのに呼吸は必要ですからね」


「……もしかしてそれ、魔法で同じことは出来るのかしら?」


「多くの魔力が必要でしょうし、恐らく、火属性と風属性が必要になるでしょうから、通常のやり方では、再現は困難だと思いますわ」


「それを聞いて少し安心したわ。そんな物騒な魔法があったら困るもの」


「確かにそうですわね」


その後、ミリナは近くにいたレイテアとも色々話をして、去って行った。私の方も、酒が飲めるわけではないし、かなり魔力を使って疲れていたので、叔父様に挨拶をして、休ませて貰った。




次の日、準備して貰った馬車に、レイテアやミリナと一緒に乗って、中心都市のドルネク市に戻った。夕方には侯爵邸本邸に到着し、レーナ叔母様やワルターに無事を報告した。この日は本邸で宿泊し、明朝王都に転移することになった。


……夕食の時、ミリナが状況を説明してかなり騒いだため、叔母様に叱られていたが。




朝になり、朝食を頂いた後、叔母様達に見送られて王都に転移した。ミリナは明日から学校に行くそうだが、私の方は報告があるので、馬車を出して貰って宰相府に向かい、宰相閣下に報告した。


「導師殿、今回も大儀じゃった。被害を局限出来たのは、そなたの功績じゃ」


「そう仰って頂き、誠に光栄ですわ。あと、それに加えて、ビースレクナ侯爵以下、常日頃から魔物に備える体制を整えていたからこそでございますわ」


「確かにそれもあるがな」


……さて、あの件について、相談してみるか。正直、私では手に余る。


「……宰相閣下、今回の魔物暴走との関連性は証明されたわけではございませんが、報告しなければならない事項がございます。実は……」


私は宰相閣下に、森で見た怪しい人物などについて報告した。


「……今回の魔物暴走は、アブドームの者が、魔物を誘導した可能性があるということか」


「その通りでございます。水龍様の話と、私が確認した2名の者の話から推察すれば」


「他に情報は無いか」


「彼らが戻った概略の場所は精霊が確認致しました。また『伯爵』と呼ばれた者の鎧には……紋章がございました」


「ふむ……アブドームに詳しい者を呼ぼう」


暫くすると、宰相補佐官の一人が地図を持ってやって来た。


「アブドーム国に、このような紋章を使用する伯爵家はございますか?」


私は、記憶の中にある紋章を紙に書いて、手渡した。


「……これは……恐らくポジドリーテ伯爵家の紋章です。ポジドリーテ領は、ファンデスラの森を挟んでビースレクナ領の反対側にあります」


やはりアブドームの伯爵家か。後は……


「精霊が居場所を確認したのは、方位と距離からすると……この辺りでしたわ」


「……ここには、ポジドリーテ領の中心都市があった筈です」


それらを確認した上で、宰相補佐官に下がって貰い、宰相閣下と話した。


「……やはり、ポジドリーテ伯爵が、魔物を誘導したと考えた方が良さそうじゃな」


「はい。……この件、如何致しましょうか」


「まずは陛下に報告し、指示を仰ぐ。本当は、そなたを直接労いたいと陛下は仰っていたのじゃが……この件は、直接報告して貰わねばならん。今から執務室に向かうが、良いか」


幾分慣れたとはいえ、陛下の対応は非常に気を使うのよね……まあ、断ることなど無理だけど。


「承知致しました」


宰相閣下とともに、陛下の執務室に向かった。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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