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第201話 作物の品種改良を沢山行った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今週は特に大きな行事などは無いが、重力魔法活用会議の人員輸送分科会が行われるそうなので、国防省と調整して、聴講させて貰うことにした。


分科会が開かれ、内容を確認したが……うーむ、やはり実際にあるものにイメージを引っ張られている感が強いかな。車体が馬や馬車のイメージなのはまだいいとして、搭乗者・操縦者を風雨から守るための仕組みが度外視されているのは……分科会が終わったら、担当者に話してみよう。


「もし、そちらの方。少々お話を伺いたいのですが、宜しいでしょうか?」


「は? ど、導師様? 有難きことでございます!」


話を聞くと、最初は窓ガラスのようなものを前面に取り付ける案もあったが、いかんせん透明な窓ガラスが高価な上に脆いため、無くなったそうだ。それなら、一度あれを見せてみようかな。


「では、こちらをご覧下さい。どうでしょうか?」


「えっ? これは異空間収納?」


「ええ。そしてこれは、現在私が個人的に試作している空動車(仮)の外観ですわ」


「……これは! 透明な上に硬くて丈夫です! 導師様、これをどのようにお作りになったのでしょうか?」


「これは、現在アルカドール領で作っている水晶像制作の技術を応用したものですわ」


「ああ、今話題の! 詳しいお話を伺いたいのですが!」


その後、担当者に石英ガラスの話をした。まあ、ドミナスの人達にも作り方を話していないから、今後は調整して貰うことになるのだけれど。水晶の失敗ではなく、きちんとした石英ガラスを作るためには、意図してガラス状態にしないといけないからね……。


不純物を取り除いた上で、ランダムな配置にするのは、少々難しいかもしれないが、後でやり方を書いて、サンプルと一緒にドミナスの商工組合に送っておけば、ドミナスの人達なら、やってくれるだろう。




今日は通常の省定例会議だ。今回は魔法研究所から、所長とキュレーニル研究員がやって来ていた。当然、魔力循環不全症に関する論文発表の件を報告に来たのだろう。重力魔法活用会議の各分科会に関する内容や、私の品種改良関係の報告の後で、論文に関する報告を受けたのだが……。


「先日、論文を政府に提出したところ、陛下が内容に非常に関心を持たれ、大司教台下に対しても情報提供を行う様、命を頂きました」


との発言が所長からあった。つまり、陛下は魔力循環不全症の治療に関して、カラートアミ教と連携する体制を作ろうというお考えなのだ。他の会議参加者も、そのことを理解し、驚いている。これは……かなりの大事になりそうだ。




今日は農業課において、品種改良の支援を行う日だ。私は朝から、王都の南端付近にある作物研究所に赴いた。入口に、農業課長と作物研究所長らしき人がおり、私が馬車を降りると礼をして出迎えてくれた。


「農業課長殿、出迎え御苦労様です。そちらの方は、作物研究所長殿でしょうか?」


「導師様。本日はお忙しい中ご協力有難うございます。所長、導師様にご挨拶を」


「導師様、お初にお目にかかります。私は作物研究所長を務めております、クロピアース・ファプロード子爵です。本日は品種改良にご協力頂けるとのことで、誠に有難うございます」


「所長殿、宜しくお願いしますわ」


挨拶を済ませ、応接室に案内された。まずは細部の説明かな。


「導師様。事前にお渡しした資料をご覧になったと存じますが、当研究所は共通、穀物、野菜・根菜、果実の分野に区分され、研究室が設置されております。効果的な栽培方法の研究の他、他国の作物の導入や、味の向上、気候への適応などの命題をもって品種改良を行っておりますが、導師様には、こちらにご協力頂きたいと思います。ところで、導師様はどのようにして品種改良をなされるのでしょうか?」


なるほど、確かに一度見せないと解らないよね、あれは。とりあえず同化して見せようか。


「このように、手に地精霊の力を宿し、種を持った上で、このように育って欲しいと念じるのです。当然それだけでは結果が出るのは育ててからになりますので、今度は地と水の力を使い、成長を促進させ、結果を確認するのですわ」


「な、成程……」


「一度、実際に行ってみましょう。とりあえずは、私も良く知っている大麦の改良を行いましょう」


一旦同化を解き、所長の案内で穀物研究室の、大麦を研究している場所に移動した。念のため、研究所側の要望を確認すると、やはりそのまま食べるための大麦と、ビールの材料にするための大麦ということだったので、六条大麦と二条大麦をイメージして大麦を改良し、いつもの様に属性エネルギーを与えて成長させて、収穫できる状態にした。


「作業自体はこのように致しますが……どうでしょうか?」


「我々の仕事の数年分が一度に! 何と素晴らしいお力なのか!」


所長は非常に喜んでいるようだ。まあ、私が出来るのはここまでで、後は実際に適合する環境や育て方を研究しないといけないんだけどね。


私の力を理解してくれた所長は、具体的な要望を言ってくれた。小麦については、硬質小麦のように、パン向けの品種を作った。元々の品種が軟質小麦のような感じだったからね……。ついでに中間質小麦も作ってみたから麺類を作る際にも役に立つといいな。


今度は、果実研究室の方にやって来た。こちらでは、デザートやお菓子に使えそうな品種を検討しているらしい。よくよく聞いてみると、王太子妃殿下が、お菓子に使えそうな果物を調べていたことが発端だそうだ。うーむ、それは私の言葉が切っ掛けかもしれないな……よし、頑張ろう。


最初に、ぶどうの品種改良を行うことにした。ロイドステアは、ワイン用のぶどうは結構作っているけれども、生食には適さない品種らしいからね……。よし、黒系、赤系、黄緑系の3種類を作ってみよう。ただし、本当は種無しで皮は薄めの方がいいけど、それは農業技術が進歩してからの課題かな。


続いて、野いちごの品種改良を行った。野いちごは摘むものであって、栽培するものではないというイメージがあり、現在は特に栽培している領は無いそうだが、今後を見据えて栽培種としての品種改良に取り組んでいるそうだ。ここでは、生食用に甘みの強いものと、ジャムなどの加工品用に、酸味の強いものを作っておこう。そういえばいちごは、割と寒い所でも作れるそうだから、アルカドール領で作れるなら、イチゴショートが作り易くなるんだけどね……。いっそのこと、石英ガラスを使ってビニールハウス的なものを作ると、年中作れていいかも。


最後に、柑橘類の品種改良を行った。先日の壊血病の話があったため、多めに作ることにした。甘くて手で皮を剥きやすい温州みかん(ただし種あり)、甘くもほろ苦い八朔、生食でも加工しても良いバレンシアオレンジ、調理用に向いている柚子、それとレモンを作ってみた。


「おお、一度にこれほどの新品種をお作りになるとは! 有難うございます!」


「ただ、これらの栽培方法や、栽培に適した地域などは、今後研究していかねばなりません。その辺りは宜しくお願いします。また、新たな方向性の検討や他の作物の品種改良、新品種を少量、直ちに用立てたい場合などは、ご相談下さいな。あと、我が領からも、もしかすると共同研究の話があるかもしれませんが、その際は前向きにご検討をお願いしますわ」


「承知致しました」


こうして、作物研究所での品種改良協力は一旦終わりとなった。一応、後で手紙を書いて、お父様と甘味研究所に情報提供しておこうかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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