第199話 王子生誕の祝宴に参加した
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面倒な事になりそうな出会いがあったものの、ペルシャ様の結婚のお祝い自体は普通に終わり、王都に戻って、通常の日々となった。それなりに溜まっていた資料を確認していると、国軍総司令部からのものがあった。どうやらこれが、先日総司令官殿から言われた、セクハラ対策の案らしい。
内容を見てみたが……かなり力を入れて改善しようとしているのが良く解った。私が現場で指摘した内容などに加え、各部隊における相談員の設置や、定期的な聞き取りの実施等々。また、海兵団に勤務するであろう精霊術士には、月1回、部外の女性相談員との面談が可能となるそうだ。
それと、今後は女性兵士からも監察員を採用し、定期監察の項目に過度な女性蔑視の有無を設けるとともに、セクハラ対策も総司令部の業務の1つに組み込み、各部隊の相談員などと連携して問題の解決に当たっていく、ということだ。
実際の所、海兵団だけでなく他の部隊でも、大なり小なりセクハラ問題は見られたそうで、特に女性の多い魔法兵団では、聞き取り調査をしたところ、不満が溜まっていたそうだ。しかしながら、これまでは不満を言う相手がおらず、仲間内で慰め合っていた状態だったと、調査結果の概要を記した資料には書いてある。確かに以前参加した打ち上げでも、それっぽい事は言われていたしね……。
少なくとも、精霊術や魔法といった分野では、女性の力を活用する方針なので、これを機に改めようということかもしれない。男性にとっては窮屈になるかもしれないが、慣れて貰うしかないだろう。
恐らく、今後も様々な問題は発生するだろうが、この態勢なら、改善を図ることが可能だろう。あと、私については、この対策案に関する意見が欲しいと指定されていたので、意見として、本施策の周知、相談された具体的な内容の秘匿の処置、相談員の相談技量の確保などを挙げた。特に、相談員となる者には定期的な講習と、相談員の手引きとなるものを作成し、配布することを提案した。
週末となり、朝から御前会議が開かれたが、今期については特記事項として、精霊術士が大幅に増加した件が魔法省から陛下に報告されていた。陛下が増加の理由をご下問されていたが、これまでは巡回助言が精一杯であまり確認に時間が取れなかったことと、精霊術士では私の様に確実に判定できるわけではないことが、理由に挙げられていた。領主の協力の度合いは……言わぬが花か。私に対しても、労いの言葉を頂けたので、とりあえずは良かったよ。
それと、今回の御前会議の後、一旦ステア政府は業務停止となった。リーディラゼフト殿下誕生の祝宴が王城で行われるからだ。開始が夕方なので一度家に戻ってドレスに着替えた。面倒だが、体裁もあるから必要なのよね……。それと、今回は学生でも、主要な貴族の子弟は参加可能なので、一応私もその枠内に入り、早退したお兄様にエスコートされて参加した。
開始の時刻に合わせて登城し、案内されて会場入りした。基本的に今回は国内の主要な貴族向けなので、先日の様に帝国の関係者が来たりすることは無いが、サウスエッドについては大使や人材交流関係者などが呼ばれている。王太子妃殿下やリーディラゼフト殿下とともに、今後も関係を深めていく存在だからね……。
そういえば、会場の所々に、アルカドール領で作られたであろう様々な水晶の像が飾られ、人々の目を楽しませている。恐らく今後はこういった使われ方もしていくのだろうな……と感慨深く見てしまった。
祝宴が始まり、まずは陛下がリーディラゼフト殿下を紹介し、王太子殿下が、リーディラゼフト殿下を抱いた王太子妃殿下と共に入場し、皆が大きな拍手で迎えた。とりあえず、王太子妃殿下の体調は問題無さそうだ。リーディラゼフト殿下は……眠っているようだ。まあ、赤ちゃんは寝るのも仕事だからね。
母子共に健康であることを神に感謝するとともに、国の今後益々の発展を祈念され、祝宴は始まった。王太子妃殿下とリーディラゼフト殿下は退出されたが、次第上そうなっていたので、問題があったわけではない。後は主だった参加者が国王陛下と王太子殿下にお祝いの言葉を伝えたり、他の参加者が歓談する、通常の祝宴の流れだ。
私はお兄様と一緒にお祝いを伝えた後、同年代の参加者達と話をしようとしたのだが、先日まで行っていた各領巡回助言の御礼ということで、祝宴に参加していた領主達から挨拶を受けたため、暫く別れることになった。基本的には王都から離れたアルカドール領のような所以外は、領主が参加しているから、結構な数の挨拶を受けた。
漸く終わったので、お兄様と合流した。
「お兄様、お待たせして申し訳ありません。先日の各領巡回助言でご縁が広まってしまった様ですわね」
「前にも増して人気だった様だね。まあ、フィリスは一生懸命仕事をしていたから、当然なのかな」
それから二人で会場を回っていた。とりあえずミリナがいたので声を掛け……ようとしたが、ダリムハイト様と言い争っているようだ。近づいてみると
「何で貴方はそう……あら、カイ兄様、フィリス、御機嫌よう」
「ミリナ、ご機嫌よう」
「ミリナ、ご機嫌よう。ところで、ダリムハイト様と何を話していたのかしら?」
「聞いてよフィリス。この……ダリムハイト様ったら『綺麗な格好をすれば、お前でも綺麗に見えるんだな』と私に言うんですのよ!」
「いや、それはついうっかり口に出て……」
「ダリムハイト殿、私が言う事ではないが……そこは通常、女性自身を褒める所ではないか? 美しい女性の前には、盛装は単なる飾りだからね」
「その通りですわ! ほら、カイ兄様もこう仰っているし、自身の不心得を理解なさい」
「くっ……しかしなあ、この前の研究会の時の恐ろしい形相を見てるからなぁ……」
「なっ! ……あれはあれ、これはこれでしょう?」
「お兄様……どうやら私達はお邪魔のようですわ。ミリナ、またね」
「そのようだね。ミリナ、また学校でね」
前世でこのような現場に居合わせたことがある。ぶっちゃけると、痴話喧嘩のようなものだ。二人がどのような関係になるかは判らないが、私としては見守るしかないだろう。ということでその場を離れたところ
「フィリストリア嬢、久しぶりだな。今日はいつもにも増して美しいな」
と、オスクダリウス殿下が話し掛けて来たので、礼をした後、挨拶をする。お兄様に話し掛けられていないところを見ると、先程挨拶をしたのだろう。
「殿下、お褒め頂き有難き幸せですわ。……この度はリーディラゼフト殿下が誕生され、誠に喜ばしい限りですわね」
「そうだな。これで俺も堂々と、父上に続く兄上の治世を支えるべく、力を揮うことが出来る。そのためにはまず、重力魔法の更なる習熟に励まんとな」
「最近は私も各領巡回助言の為、研究所に行くことが出来ませんでしたが、また伺わせて頂きましょう」
「そうか、楽しみにしている」
と、和やかに話をしていたところ、ライスエミナ様がやって来て
「オスカー殿下! 久し振りにご一緒させて頂く宴なのですから、二人で楽しみましょう!」
と言って、横からオスクダリウス殿下をかっさらう様に引っ張って行った。ちなみに私には、一瞬鬼のような形相をして睨んでいた。まあ、仲が良いのなら、作法に多少問題があっても、見ないことにしよう。祝いの席だしね……。お兄様と一緒に、生温かい目で二人を見送った。
ただ、その様子を見ていたのか、ヴェルドレイク様がやって来て
「カイダリード、フィリストリア嬢、この祝宴の場で、妹が無作法な事をして申し訳ない。妹は、オスクダリウス殿下と祝宴に参加出来たので、非常に舞い上がっているようでね」
と謝ってくれた。なるほど、今日は殿下がエスコートしていたのか。恋する乙女としては嬉しい限りなのだろうね。まあ、お幸せに。
「ヴェルドレイク様、お久しぶりです。ご活躍の噂は伺っていますよ」
「ヴェルドレイク様、ご機嫌麗しゅう」
「ああ、有難う。フィリストリア嬢は、制服姿も似合っているけれど、やはり着飾るといつもに増して美しいよ。そういえば、少し早いけれど、誕生日おめでとう」
「お褒め頂いた上、お祝い頂き、誠に有難うございますわ。その後、調子は如何でしょうか?」
「先日、魔道具の相談に乗って貰ったおかげで、計算部分の問題が解決したんだ! まあ、別の新たな問題が出て来たから検討中なのだけれどね。今度時間を見て、相談させて貰うよ」
「ええ、お待ちしておりますわ」
その他、世間話などをしているうちに終了時間となり、家へ戻った。
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