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第197話 西公府での婚姻式に参加した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今週末はフェルドミナーク殿下とペルシャ様の婚姻式及び祝宴がある。行われるのは休日の27日だが、移動日が26日と28日なので、休みを取っている。また、今回については、私はアルカドール侯爵の名代という立場でもある。


砂糖輸出関連でウェルスカレン公爵家とは関係が深まっているから、お父様が参加出来れば良かったのだけれど、今は産業振興の成果を知った各領からの問い合わせや交渉などが殺到しているらしくて、領主判断が必要な案件が多く、参加が難しいという話なので、私としては文句が言えない。




25日までは、通常の業務の他、王都に住んでいる魔力循環不全症の患者3名についても施術を行った。本当は早めに施術を行いたかったところなのだが、患者1名の親が東公の縁者で、改革派に属していたため、日程調整が少々難航していたと、キュレーニル研究員から聞いた。命あっての物種だと思うのだけれどね……。


まあ、これで国内の患者への施術は全て終了した。爾後は医者の治療を受けて体力増進できれば、寛解と言える状態になるだろう。キュレーニル研究員も、来月には論文が発表できそうだと、喜んでいた。




26日になった。今日は移動日なので、荷物をまとめて収納し、クラリアやレイテアを連れて馬車でウェルスカレン公爵王都邸に移動し、西公府のウェルスカレン公爵本邸に転移した。今回は、公爵本邸は王家の方々が宿泊されるので、それ以外の参加者は、指定された接待者の館に宿泊することになっている。私達は、西公に挨拶した後、接待者の西公府執政官に案内され、馬車で執政官邸へ向かった。


執政官邸に到着し、宿泊することになったが……髪や肌の手入れは前日からやっておいた方が綺麗になるため、クラリアが私の髪や肌の手入れを丹念に行っているうちに、その日は過ぎた。




27日、婚姻式の日だ。私は婚姻式及び祝宴に参加する。式と祝宴の間には、公府内のパレードが行われるが、それは新郎新婦の2人だけだ。その間他の参加者は着替えたり休憩することになっている。婚姻式については、参加者は儀礼的な服を着ることになっているので、私は魔法省の制服を着て、祝宴の方はドレスに着替えることになる。朝早く起きた私は、準備を終えて婚姻式が行われる聖堂に移動した。


聖堂に到着し、まず新婦であるペルシャ様に挨拶に行った。ペルシャ様は控室で待機しており、既に親しい方達が何人か挨拶に来たようで、私についても挨拶してくれた。緊張してはいたようだが、流石に新婦はいつもよりも美しかった。こちらの世界の新婦は、婚姻式の際はシンプルな白いドレスを着る。華美な装飾は付けず、花冠を作って頭に載せるのが習わしだが……ペルシャ様は白薔薇の冠を使うようだ。


式は恙なく行われた。新郎家の長である国王陛下及び新婦家の長である西公の立ち会いのもと、式のために王都からやって来た大司教台下が祝詞を新郎新婦に向けて唱えていた。それが終わると新郎新婦に問いかけた。


「フェルドミナーク・カレンステア。汝は、この女を妻とし、神の教えに従い、共に生きると誓うか」


「誓います」


「ペルスラムナ・ウェルスカレン。汝は、この男を夫とし、神の教えに従い、共に生きると誓うか」


「誓います」


「両家長よ、新たな夫婦の誕生を認めるか」


「認めます」「認めます」


「神の御名において、婚姻は成った。新たな夫婦の誕生に、祝福を」


大司教台下のその言葉で、私を含めその場に居合わせた人達の拍手の音が、聖堂内に鳴り響いた。


その後は、新郎新婦はパレード、その他の人は祝宴への参加準備の時間となった。私がクラリアにドレスを着せて貰っていたところ、警備をしていたレイテアが部屋に入って来た。


「お嬢様。実は、警護中に耳にしたのですが……」


と言って入手した情報を耳打ちしてくれた。


「……そう、教えてくれて有難う。引き続き宜しくね」


「はい、警護に戻ります」


……まさかあの人が来ているとは……注意しないとな……。




祝宴の時間となったので、執政官の案内の元、会場である公爵本邸に移動し、会場入りした。暫く待っていると、両家の両親と、新郎新婦が入場された。大きな拍手で迎えられた後、西公の挨拶で祝宴が始まった。今日の私はアルカドール侯爵の名代という立場なので、5番目に新郎新婦に挨拶に行った。


さて、挨拶も終わったし、レナ様やチェルシー様の所にでも行こうかと思った所


「アルカドール侯爵令嬢、宜しいか」


と、声を掛けられたので礼をする。あちらから声を掛けて頂けるとは、まあ、光栄なんでしょうがね……。


「まあ、これはグラスリンド帝国第2皇子殿下、お初にお目にかかります。フィリストリア・アルカドールと申します」


そう、今回、帝国からの参加者は、この第2皇子、カルロベイナス・サナ・スリンドル様なのだ。確かに帝国からも誰かお祝いにやって来るとは以前から聞いていたけど……それが第2皇子だというのは、さっきレイテアから聞いて初めて知ったよ。


会うのは当然初めてだが、隙がまるで見つからない佇まい、そして何より、赤い右目、茶色い左目のオッドアイ。複数属性者、つまり、転生者だと、一目で判る。仮にも第2皇子が来たわけだから、何らかの政治的な目論見がある筈なのだろうけど、それを考慮せずとも、最大限の警戒を要する相手だ。


「お初にお目にかかる。カルロベイナス・サナ・スリンドルだ。我が国が、今後こちらからも砂糖を輸入することになったが、それが貴女の領地で生産されたものだと聞いたのでな。今後も宜しく頼む」


「砂糖を貴国に輸出できますこと、大変光栄に存じますわ」


「今回は貴女に会うことが出来、幸運だった。我が国にも貴女の美しさは聞こえていたが、噂以上に美しい。是非我が妻に迎えたくなった。どうだろうか?」


と言われても、威圧しながら言う言葉じゃないよね、それ……。周りの人達が青ざめているんだけど……。求婚者リストに入っているのは知っているけど、正直、帝国に行こうとは思わないのよね。


「まあ。お会いして早々そのようなお言葉を頂けるとは、恐れ多いことでございますが、こと本件に関しましては、国王陛下と父の協議で決定されますの。残念ながら、私のお答えできる内容ではございませんわ」


「そうか。それは残念だが……私は貴女が気に入ったのだ。個人的な範疇で良いので、検討願えないか」


「そこは前向きに検討させて頂きますわ。ただ、私のどういった面を、お気に召したのでしょうか?」


「……そうだな。何となく気が合いそうな気がした。それに、貴方も剣を嗜まれるそうではないか。是非、手合わせしてみたいと思ってな」


「まあ。帝国一と謳われる方と手合わせなど、恐れ多いですわ」


「御謙遜を。貴女が相当な腕前であることは判る。是非、考えておいて欲しい」


と言って去って行った。とりあえずは安心かな。


正直な所、恐らくは前世からの剣技を更に磨いているであろう、この世界屈指の実力者と対戦してみたいという気持ちは強いのだけれど、今はそれより警戒心が勝ってしまうのよね……。そのまま帝国に取り込まれる可能性もあるし。それに、今の私では対戦で勝つのは難しいだろう。まずは重心を安定させないとね……。


などと考えつつ、レナ様やチェルシー様の所に話に行ったら


「カルロベイナス殿下と、何をお話しになられていたのかしら?」


とレナ様に聞かれ、その際は砂糖の話をしてはぐらかしたのだが、他の令嬢も話に加わり、更には近くで聞いていたらしき令嬢から


「先程、第2皇子殿下が求婚されておりましたようですが?」


とバラされて、結構大変な目に合った。とほほ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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