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第195話 王子生誕で国中が湧き立つ中、巡回助言を淡々とこなした

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

先週末、無事王太子妃殿下が王子殿下を出産され、王都中が湧き立っている。王子殿下はリーディラゼフトと名付けられたそうだ。数十年後にこの国の国王となられる可能性が高いお方なので、多くの者の期待を担えるよう、厳しく、されど大切に育てられるだろう。1か月ほど後には、生誕の宴が催される予定だ。


それはそれとして、私は領巡回助言に行かなければならない。今週はセクテート領、ブラフォルド領、オクトウェス領の3領だ。セクテートとオクトウェスは容認派、ブラフォルドは体制派なので、警戒はそこまで必要ではないだろう。


ということで、6日かけて3領の巡回助言を行ったのだが……セクテート領は問題無く終了した。


ブラフォルド領は、少々大変だった。というのは、トリセント領の様に、銀山があるイルミス、第3歩兵隊1万5千人が駐屯するタルアイクという2つの国王直轄地があるからだ。当然、精霊にも悪意を感知して貰ったわけだが……今のところは問題無かったようで良かったよ。そういえば、ブラフォルド領では、地の精霊術士のエナのお父さんであるバンケルメス行政官に会った。とは言っても、挨拶だけだったが。


ちなみに、領主であるブラフォルド伯爵は、商務大臣でもあるのだが、今はリーディラゼフト殿下ご生誕の関係で、王都を離れられないとのことだったため、巡回助言については、基本的に前領主のブラフォルド卿が対応してくれた。


オクトウェス領については、昨年私が貯水湖の決壊を防いだので、そのお礼を言われたりした。その際私が作った水路は、前回の様に貯水湖の水位が上がり過ぎたら水を逃がせるように、改めて整備しているそうで、今後も役には立ちそうだ。


また、オクトウェス領は、ティボルナ山の北部地域が接しているせいか、南側では結構火山灰が降っているらしい。そのせいかどうかは判断できないが、南部地域には、地球で言うところのカルスト地形が発達していて、大洞窟があるらしい。この洞窟の中に魔物が入ったりすると、いつの間にか繁殖したりするので、今回の巡回助言では、洞窟内の魔物についても調査した。


……精霊曰く、魔狼が5体いたそうなので、行政官に伝えたのだが……洞窟内は、冒険者を定期的に雇って探索と駆除を行っているそうだが、かなり危険なのであまりやりたがらないとのことだった。去年までは、国軍の派遣隊長がシンスグリム男爵だったので、修行がてら殲滅してくれていたらしいが……今は騎士団の副団長に戻っているからね……。


とりあえず、今回だけは魔物対応に協力することにした。とは言っても、北部地域にある中心都市と大洞窟の間を往復して、かつ魔物を退治するには、正味半日では時間が足りない。なので、感覚共有した状態で魔物を退治することにした。そこまでの殺傷力を持たせるならば……窒息させるしかないと考え、水精霊と感覚共有して、大洞窟まで飛んで行った。


20分程で到着し、近くにいた地精霊に道案内をして貰いながら洞窟の中に入って行った。精霊は暗闇でも問題無く見えるし、悪意も感じられるから、暗闇に潜む魔物でもすぐに発見できた。見つけ次第、こっそり水球を作って、死角から口の奥に突っ込ませて窒息させる。どの魔狼も、突然の攻撃に苦しんでいたが、暫くすると動かなくなった。


念のため他にも探したが、5体以外にはいなかったので、地精霊の案内で外に出て中心都市に戻り、感覚共有を解除して水精霊にお礼と魔力を与えて帰って貰った後、行政官に今いた魔物は全て退治したことを告げた。行政官は驚いた様だが、お礼を言ってくれた。なお、その時の助手であったラフトリーザは、横で話を聞いてかなり引いていたようだ。


3領についても当然精霊術士候補を確認したが、それぞれの領で1名ずつ確認することが出来た。


それと、併せて魔力循環不全症の治療についても行っていた。ブラフォルド領には1名、オクトウェス領には2名の患者がいたので、キュレーニル研究員にも巡回助言に同行して貰い、同様の治療を行った。今回は、中度の患者が2名、軽度の患者が1名だったので、施術後は比較的楽に回復できそうだ、とのことだった。


魔力循環不全症は、患者は非常に少ないけれど、基本的に貴族が罹る病気なので、治療法を確立させることは、国内外に大きな影響を及ぼしそうだが……人の命を救えること自体は、良い事だと考えよう。


なお、どこの領でも、食事の際や休憩時などでは、王子殿下ご生誕の話が話題になっていた。実際に身重の領主夫人もいらっしゃったし、さもありなん。




今日は省の定例会議だったが……リーディラゼフト殿下の話題で盛り上がったのは、仕方のないことだろう。今はまだ話は来ていないが、この国にも前世の日本でいうところの宮内庁のような部署が宰相府にあって、そこから殿下の魔法教育に関して、家庭教師などの選定の調整があったりするそうだ。


この件については、魔法課が所掌らしく、いつ話が来てもいい様に、今から候補者を選定し、人柄や魔法学校時代の成績などを調査するそうだ。少々気が早いかもしれないけど、こういう仕事をきちんとこなすと、省としての発言力が上がるからね……。


また、来週には魔法兵団と精霊課の協同訓練が実施されることも報告されていた。今後は3ヶ月に1回の割合で定期的に行われるから、魔法兵団との交流が進むのはもとより、魔法強化についても理解が進むだろう。




次の日の全体会議についても、殿下が生誕されたことで、年内の行事の追加やそれに伴う予定の変更などが発表されていた。とりあえず私に関係ありそうなのは、1か月後の生誕の宴と、4か月後のサウスエッドへの輸送支援かな。ペルシャ様のお祝いにも行かないといけないのに、別にドレスを注文しないといけないのか、勿体ない……。




ということで少々もやもやした気分で資料を読んでいたら、ヴェルドレイク様が計算具(仮)の製作に関する相談にやって来た。


「実は、計算をさせるための良い案が浮かばず、悩んでいるのです」


話を聞くと、2進数で加算をさせるための仕組みを試行錯誤しているけれど、なかなか良い案が浮かばないそうだ。つまり、加算回路を作りたい、ということかな。まあ、少なくとも私が知っている加算回路は、厳密に言うと計算させる回路ではなく、論理演算させる回路だからね……。


魔道具としての仕組みは知らないが、二進法を利用して計算具(仮)を作ろうとするなら、同様の発想の転換が必要になるかもしれないから、参考に話してみるか。


「ヴェルドレイク様、論理法についてはご存知でしょうか?」


「魔法学校で教わったことはありますが……それが何か?」


「実は、2進数の加算については、計算ではなく、論理法を利用して、結果を表すことが可能なのです」


私は、紙に幾つかの論理記号(当然フィアース式の記号だ)で図を書いて、説明した。


「本当だ! 1つの桁の計算結果になっている!」


「更に、この桁の計算結果を上の桁に送りますと、桁上りが表現できますわ」


「凄い! そしてこれらを接続することで、多くの桁がある数値の計算結果が表せる! これならいけるよ!」


「お役に立てそうなら、何よりですわ」


「やっぱり君は凄い! 有難う!」


「あ、あの……喜んで頂けるのは有難いのですが……その様に見つめられますと……」


「も、申し訳ありません!」


そう言ってヴェルドレイク様は退室していった。少々恥ずかしい所はあったが、いい気分転換になったかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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