第001話 私は何故此処にいるのだろう
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですが、宜しくお願いします。
何だろう……むかむかする……。
とりあえず、落ち着いてみよう。
すー、はー、すー、はー。
記憶に染みついた要領で調子を整えていると、
気分が落ち着いてきた。
あと、体が気持ち良くなってきた。
このまま続けていないと気分が悪くなる……。
続けよう……。
………………何だか最近明るくなったので、
何か見えると思って目を凝らしていると、
そのうち景色がはっきりと見えてきた。
明るくなったり暗くなったりしている。
そういえば手足は動かせるのだろうか。
やってみよう。
あれ?誰かが私を動かした?
これまでは着替えさせてもらったりとか
飲み物とかもらってたけど、
今度は景色が変わった。
よく見てみよう……あれ?何か動いてる。
目の前に来た。何だこれ。あ、逃げた。
何かしゃべってる気がするけど、
意味が解らないから放っておこう……
眠たい……。
こんな具合でまったりぼんやりしていた私はある時気がついた。
私は何故此処にいるのだろう、と。
私は渡会和蓮<わたらい かれん>。
日本の某県にある合気道の道場主の娘として生まれ、合気道一筋で育った。他にも色々面白いものはあったが、合気道をやっている時が一番楽しかった。恋愛?知らん。
大学では道場を継ぐことを前提に、スポーツ指導法を専攻したんだよね。
AIを使って個々に最適な指導を行う研究をしてた。丁度教授が武道の方面でデータを取りたがっていたから、父や私のデータはもとより、門下生を紹介したりもした。で、その成果を道場でも使ったりした。皆の上達が早くなったので嬉しかった。
六段にもなれたので更に頑張ろう……と思っていたのだけれど、地震が起こって実家が倒壊し、寝ていた私は死んでしまった。
まあ、いくら鍛えても自然には勝てないよね……。お父さんたち、どうなったのかな……考えても判るわけがないので、気がかりではあるが、この件は考えないことにしよう……。
で、死んだ私が何故ここにいるのだ。自分の手を見てみると、赤ん坊の手のように見える。
えーとこれ、もしかして「転生」という奴なのだろうか。
理屈はよくわからないけれど、渡会和蓮は、どこかの誰かに転生した、ということか?正直、とまどうばかりだが、一度失くした生を再び貰えたのなら、それだけで感謝すべきなのだろう。
とりあえず状況を把握すべきか。ここはどうやらベビーベッドの様だ。周りに人は……あ、何か隅の方にいるな。あれは……メイドというものか?ということは私は、金持ちの家にでも生まれたのだろうか?
あ、騒いだらやって来た。若い子のようだけど、可愛らしいのはいいとして……茶髪だし、何だこの瞳は。緑色じゃねーか。日本人じゃねーよこの子!何喋ってるかも判らんし!
……せっかくあやしてくれているので、落ち着こう。そういえば、知らず知らずのうちに合気道の呼吸力の鍛錬をやっているなあ私。
まだお腹もすいてないし、粗相もしてないので、私が落ち着いたのを見たメイド?は私をベッドに戻し、元の位置に戻った。
で、さっきから気になっていたのだが、何か変なモノがいる。見つめてみると、声が響いた。あれ?何か聞こえたわけでもないのに?気のせいか?
『気のせいじゃないよ。僕は君の目の前にいる精霊だよ』
『精霊?何それ』
『?……ああ、君は生まれたばかりだから色々思い出せないんだね。精霊というのは、僕たちのような姿をしていて、自然の流転をつかさどる存在のことさ』
『はあ。その精霊さんが、何の用でしょうか』
『実は僕は精霊女王様の命令で、たまに君の様子を見ているのさ。で、様子を見ていると、君の目に意志が宿った感じがしたので、試しに念話で確認してみたんだよ。ああ、念話というのは、僕たちが見える人や動物との間に、心の声が聞ける回線?を一時的に繋ぐことで、話が出来るんだよ。凄いだろう!』
『それは凄い!……で、その精霊女王様という方は……あなたの上司なのでしょうか。何故私の様子を?』
『君は全属性の人間だからね。気になっているんだと思うよ』
『全属性……何ですかそれ』
『この世界の存在は、基本的に4種類の「属性」で区分されているんだ。属性は火・風・水・地。ただし、部分的な属性と、全体的な属性が異なることはよくあるけどね。で、魂を持つ存在は、全体的にはその魂の属性を持つことになる。例えば、さっき君をあやしていた子は風属性だよ』
『へー、その、属性はすぐに判るものなんですか』
『彼女は緑色の瞳をしていただろう?魂の属性の色が瞳に現れるんだ。火なら赤系、風なら緑系、水なら青系、地属性なら茶系の色になる』
『では、全属性ならば何色なんでしょうか?』
『全属性の魂であれば、瞳は黄金色になるよ』
『何それ怖い』
『いや、実際君の瞳が黄金色なんだよ。で、全属性の人間はこれまで何人か生まれたんだけど、君を除いて全員すぐに死んだんだ。過剰に魔力を摂取して、体が耐えきれなかったんだろうね』
『え!私もすぐに死んでしまうんですか!』
『いや、他の人間は生後すぐに死んでしまったんだけど、君の場合は、産まれて3か月たっても生きている。何故かはわからないけど、君の場合は、体の魔力の循環が、凄く整っているからだと思う。恐らく、すぐには死なないんじゃないかな』
『う、うーん?とりあえず死なないなら、いいのですが……魔力って何ですか?』
『そこもかい?……魔力というのは、えーと、魔力を説明する前に、魔素について説明するよ。魔素というのは、この世界の至る所にあるんだ。僕も理屈は知らないけど、魔素を通じて人の思考が伝わるんだ。で、その魔素は人間の体にもあるんだけど、この一部が魂の属性に合わせて属性を持つんだ。これを属性魔素と言うんだけれど、属性魔素がどれだけ集められるかを、魔力と言っているのさ』
『うーん、言っていることは判りましたが……』
その後も精霊さんとやらに色々話を聞いてみたが……気付いていたけれど考えたくなかったのだが、どうやらここは、私が前世?で住んでいた地球とは異なる世界らしい。確かこういうのを「異世界転生」というのだっけか。門下生の一人が貸してくれた小説に、そんなのがあった。架空の話だと思っていたので、適当に流し読んだのだが……まさか自分がそうなるとは、夢にも思わなかったよ……。
とりあえず、この世界は地球とは異なる異世界で、魔力や精霊といったものが存在することは把握した。
しかし……転生後すぐに死んでしまうところだったとは……
それだと転生した意味ない!責任者出て来い!
コロナのせいで外出もままならず、暇潰しに本サイトなどの投稿小説を読んでいたのですが、自分でも書いてみたくなって投稿を始めました。
(石は移動しました)
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