第185話 アルカドール出身者の茶会を行った
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王都邸に戻って来た。少々慌ただしいが、茶会があるのでドレスに着替えよう。まあ、今回は気楽な茶会と言うことで皆に参加して貰うので、気合の入った化粧などが不要なのは有難い。
準備が完了して暫くすると、3人が到着し、メイド達に案内されてテラスに移動したらしく、クラリアが呼びに来た。案内されて私も向かい、テーブルの席に位置すると、3人が礼をして来たので、答礼をして着席して貰う。
「皆様、お招きに応じて頂いて有難うございます。皆様との茶会は久しぶりですわね。本日は皆の近況などを楽しく話しましょう」
「はい、フィリス様。私とティーナ様は入学したばかりですが、色々話す事がございますのよ?」
「フィリス様と~パティ様の方は~、お仕事が大変そうですわね~」
「はい、フィリス様は、何度も転移門で色々な所に巡回助言に行かれていますし、私は明後日から道路工事のために半年王都を離れますからね……」
「ええ、今日皆様をお招きさせて頂いたのは、次の機会が半年後になるためですから……」
「本当に大変ですわね。そう考えると、学生という立場は有難いですわね」
そんな事を話しつつ、ルカとティーナがクッキーを口にした。
「あら?これは通常の焼き菓子と微妙に違いますわ?フィリス様、こちらは一体……?」
「この焼き菓子は、小麦粉ではなく大豆を材料にして作っておりますのよ?」
「確かに~普通の焼き菓子と味が違いますわね~。でも、こちらも美味しいですわ~」
「実はこの焼き菓子は、栄養価が高いこともあるのですが、太りにくい効果がございまして」
と言って、ちらりとパティを見ると、得心したのか、おからクッキーに手を伸ばす。
「……ふふ、このような焼き菓子もございますのね。甘味は奥が深いですわ」
どうやら安心して食べてくれたようだ。準備して良かったよ。
それから暫くは、学校の生活を話題にして話していた。
「私は2組で、ティーナ様は1組になりましたのよ」
「確か、成績優秀な方ほど若い組だと伺いましたわ。流石ですわね」
「有難うございます~。それよりも、何故か変な呼ばれ方をされ始めてしまって困惑しているのです……」
「学生の魔法の能力を把握するという最初の合同授業で、ティーナ様が見事な雷魔法を放ったものですから、皆がティーナ様を「雷姫」と呼ぶようになったのですわ」
「それは少し恥ずかしいような気もしますわね。でも、教えて1か月で雷魔法を習得したのですから、皆に讃えられる素晴らしい才能をお持ちなのは事実ですわ」
「もう~、フィリス様まで……」
「そう言えば、ルカ様もフィリス様に新しい魔法を教わっているとか。そちらはどのような状況なのでしょうか?」
「やはり新しい概念ですので、なかなか想像がしづらいところはございますが、慣れて来ておりますわ」
「ご都合を合わせられれば、お教えすることも可能なのですが、暫くは難しそうですわ……」
「フィリス様、そのお気持ちだけで有難いですわ。暫くは自分で頑張ってみます」
「そういえば~、フィリス様の従姉に当たる、ミリナ様も1組でしたわ~」
「フェールミリナ様も、お噂は伺っておりますわ。イクスルード侯爵令息と、何やら諍いを起こしたとか」
「まあ、ミリナったら……」
「実は~、お二人は席が隣で~、何やら話していたのですが、どちらが強いか証明する、という話の流れで試合場に行って模擬戦を始めてしまいまして。しかも、何故か木剣まで持ち出して、剣と魔法を組み合わせた対戦を行っていたそうですわ」
「ちなみに……どちらが勝ちましたの?」
「う~ん、剣を叩き落したから俺の勝ちだ、いいえ、その時貴方を場外に叩き落したから私の勝ちですわ、と言い争っておりまして……良く解らないのですわ」
なるほど、情景が思い浮かぶ。まあ、何でもありというなら、魔力波でダリムハイト様を場外に落としたミリナの勝ちだろうな。
「それで~、決着をつけると言って、何故か二人とも、魔法戦闘研究会に入会されまして……」
「そういう理由で入会されましたのね……。活動内容が過酷な魔法戦闘研究会に、侯爵令嬢が入会されたのは初めてだということで、噂になっておりますわ」
ミリナもなかなか騒がしくやっているみたいだ。今度話を聞いてみようかな。そんなことを考えていると
「そう言えば、フィリス様は特別講師をされるのですよね」
「ええ、今年も7月に精霊概論の講義を行う予定ですわ」
「去年の講義では、精霊を学生達にお見せになったと伺いましたわ」
「ええ、大変好評でしたわ。……宜しければ、今お見せ致しましょうか?」
「是非~お願いします」
では、リクエストにお応えして、背後霊になっている4精霊を……見せると、ルカとティーナは目を丸くして驚いた。パティも地精霊以外を見るのは初めてだから、それなりに驚いていた。ルカは火精霊に、ティーナは風精霊に挨拶して、元に戻って貰った。
「精霊がいるから魔法が使えるのだ、ということを理解するのは重要ですわ。例えば海の上では、火精霊や地精霊は基本的におりませんから、火魔法や地魔法は使えない、といった現象が起こりますから」
「そうですわね……天候や地形によって魔法の威力が変わることがあると、授業でも教わりましたわ」
「……そう言えば~、精霊術士が行うという、魔法強化については、その辺りは関係するのですか?」
「魔法強化は、精霊術士が精霊にお願いして、魔法の威力を強くして貰うものですわ。私ですと、地精霊に魔力を与えてお願いすると、暫くの間は周辺で発動する地魔法の威力が向上するという仕組みですわ。ですので、天候や地形とは別の枠組みですわね」
そんな堅めの話題も話しつつ、その他の学校の話題も話していた。今年の学生会長は、2年だがオスクダリウス殿下らしい。まあ、王族だからね……。ちなみにお兄様は副会長。ライスベルト様も学生会役員らしい。益々忙しそうだが、体に気を付けて欲しいものだ……。
色々楽しく話をさせて貰ったが、時間となったのでお開きにした。3人を送ろうとしたのだが
「フィリス様、少々お話ししたいことがございます」
とルカが言ったので、ティーナとパティには帰って貰い、ルカには残って貰った。何だろう……?
「……本来、このような事は聞いてはいけないことは重々承知しておりますが、敢えてお伺い致します。フィリス様、カイダリード様に、公爵家から縁談の話があるというのは、本当でしょうか?」
……ルカは非常に思い詰めた表情で、私に問いかけている。公爵家から縁談の話があった時点で、お兄様とルカが結婚する可能性は無いも同然だから、確認したい、ということだ。正直、立場上話して良い事ではないし、話したくない内容でもある。だが、ここは、話すべきだろう。
「…………本当ですわ」
「! …………、………教えて頂き……誠に有難うございます。他言は……致しませんわ」
そうルカは言って、私に礼をして、帰って行った。表面上は取り繕っていたが、ルカが深く悲しんでいたのは、感情を読めなかったとしても、分かってしまっただろう。
本当に、人の心というものは、ままならない。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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