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第184話 魔力循環不全症の研究への協力を始めた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は通常の業務だ。新しい精霊術士が増えたので、様子を見に行ってみた。新人達は、先輩の精霊術士達に魔力操作を教わっていた。今日の教官役は、パティとマリーか。


「体の中心から魔力の道が伸びて、体中と繋がっているような想像をしてね。まずはへその付近に手を当てながら、やった方が何となくやり易いわよ」


「パティさん、分かりました。…………」


「マリーさん、体中に道を作る想像がうまく出来ないのですが……」


「そうね……私の場合は、一度へそから体の各所を結ぶ線を手でなぞってみたわね」


「へー、やってみます!」


二人とも、自分達がアンダラット法を習得した時の経験を踏まえて教えている様だ。私の場合は何となく出来ていたことを教本通りに教えただけだから、そういった意味では、解りづらかったかもしれないな……。


こちらの方はどうやら問題無さそうなので、執務室に戻り、来週巡回助言に行く、ビースレクナ領とカウンタール領の資料を読んでいたところ、ヴェルドレイク様が訪ねて来た。


「導師様、護身用の魔道具が完成しました。ご協力有難うございます」


「まあ、おめでとうございます!実物はどのような物なのでしょうか?」


「はい、こちらです」


そう言って、ヴェルドレイク様は、小型のスタンガンの様なものを見せてくれた。前世のように電池やバッテリーが入っているわけではないから軽い。魔石に軽く魔力を流すと、確かに先端で一瞬火花が散った。


「素晴らしいですわ。ところで、この魔道具は、ある程度の数を揃えることは可能ですの?」


「ええ、必要な魔石が小さくて済みますし、構造も難しくありませんので、私以外でも作成が可能ですから、それなりに時間を頂ければ、可能だと思います」


「では、精霊課長殿にもこの魔道具を説明して、精霊術士の護身用として、導入を検討して頂きましょう」


そう言って、ヴェルドレイク様を連れて精霊課長の所に行き、説明すると


「確かに精霊術士達には持っていて欲しい魔道具ですね」


と言って、警護班長を呼んだ。精霊課長と警護班長がヴェルドレイク様と話し合った結果、魔道具課から魔技士を紹介して貰って依頼し、警備関係の予算を使って逐次導入することになった。


魔道具については、特許のようなものがあり、政府(魔道具課)で魔道具の作成法を管理している。ここに登録した場合、魔技士なら誰でも作成法を知ることが出来るが、登録された魔道具を作って販売する際は別途税金がかかる。その中から幾らかは登録した魔技士に報酬として支払われるらしい。作成法の登録にもお金がかかるが、沢山作られるようになると、かなりの収入になるそうだ。


登録の有効期間は10年で、3ヶ月に1度、魔道具課が王都や各領の商工組合に新規登録された魔道具の作成法を提供し、情報の閲覧や販売に関しては商工組合が実業務を行っている。登録後10年を経過すると、販売に税金はかからなくなり、また、改良した魔道具の登録も可能になるらしい。


今回の護身用魔道具は、精霊術士もそうだが、貴族や裕福な家の女性や子息に持たせておきたい魔道具なので、確実に売れるだろうし、儲かりそうだなあ……。なお、ヴェルドレイク様は、今回自身の力で魔道具を作成出来たため、本格的に魔道具課の研究班で働くことになったそうで、次はいよいよ計算器の研究を開始すると言っていた。頑張って貰いたいものだ。


業務が終わり、家に戻ったが、今日はお兄様の14才の誕生日。ささやかながら、お祝いをした。




今日は週末ということであまり業務は無く、来週の巡回助言の資料を読んでいたところ、アネグザミア所長とアンダラット先生が訪ねて来た。


「導師様、先日の魔力循環不全症に関してですが、アプトリウム子爵と調整した結果、来週から調査に協力して頂けることになりました」


「では……明日か明後日には移動した方が宜しいですわね」


「はい、こちらからはアンダラット室長以下3名が向かうことになりました。あちらではセイクル市のアプトリウム子爵邸に御厄介になります」


「そうですか。先生がいらっしゃるなら、知人も多いでしょうし、大丈夫ですわね。私の業務の都合についてですが……来週は予定が詰まっておりますので、出来れば移動日は明日にして頂きたいのですが……休日となりますが申し訳ございません」


「いえいえ、移動の支援をして頂けるだけで非常に有難いですから」


「あと、どうせ私も移動するのですから、アプトリウム子爵令嬢の様子も併せて確認させて頂きましょう」


「なるほど。差し支えなければ、施術の状況も教えて頂きたいですね」


「承知致しましたわ。明日は午後に茶会がございますので、午前中のうちに移動させて下さいませ」


「そう言えば、娘をお呼び頂いておりましたな。娘が喜んでおりましたよ」


「ええ、オペラミナー子爵令嬢も魔法学校に入学致しましたし、丁度宜しいかと思いまして」


その後、幾つか調整を行った後、所長達は帰って行った。


業務が終了し、家に戻ってから、明日の準備を行った。まずは緊急連絡用の魔道具で、本邸の方に明日の午前中に一旦帰ることと、アプトリウム邸への移動の準備をしておいて欲しいことを伝えた。


続いて茶会の準備だ。豆腐は明日の朝食の際に出して貰うことにしていたので、おからができる。これで甘味研究所から来た料理人におからクッキーを作って貰うよう、依頼しておく。作りたてを出した方がいいから、時間を合わせて作って貰うことにする。着るドレスは……まあ年末の王妃殿下の茶会で着たものでいいかな。会場の準備と併せて、クラリアに準備して貰っておこう……。




休日となったが、今日はやることが多い。日課の早朝鍛錬を行い、朝食を取る。うん、豆腐が出て来ている。お兄様のリクエストで、揚げ豆腐になっている。朝食後、出かける準備をして待っていると、アンダラット先生達がやって来たので、転移門を使ってセイクル市の本邸に帰った。お父様達に挨拶をした後、馬車でアプトリウム子爵邸に移動した。


子爵邸では、リーズの他、子爵夫人とかかりつけの医者が応接室で待っていたので、挨拶をした後、リーズの現在の状況を話してくれた。やはり、以前より体調が良くなっているようだが、まだ無理をすると熱が出たりするらしい。魔法研究所の担当者は、メモを取りながら色々聞いていた。


暫く話した後、私の施術の件になり、もう一度行っても問題ないだろうということで、リーズの部屋に移動して、再度施術を行うことになった。リーズにはベッドで仰向けに寝て貰い、簡易的な魔力測定用の魔道具もつけて貰った。


「現在、私の目には、一般の人に比べて魔力循環が少し低調に見えておりますわ」


「そうですな。魔力量に比し、魔力が流れる量が健常者の平均より低い。魔力循環不全症の典型的な症状です。ただし、魔力循環不全症の程度としては軽いようです」


「以前は中程度の魔力循環不全症と診断させて頂きました。その当時から考えますと、やはり改善されていると考えられます」


私と担当者、医者の3名で話し合って現状をまとめて行く。私はリーズの魔力を良く観察してみた。すると、あることに気付き、二人に意見を求める。


「通常の方は体の末端でもきちんと魔力が循環しておりますが、リーズ様の場合は、手足などの末端でかなり流れが落ちておりますわね」


「なるほど、もしかすると装着位置でかなり循環量は変わるかもしれませんな」


「そこは血液の流れと同様に、魔力の流れを遮る原因があるのかもしれませんな」


等々話し合い、その後施術の状況を確認することになった。


「では、リーズ様、前回と同様の施術を行いますので、楽にして下さいな」


「は、はい、フィリス様、宜しくお願いします」


リーズの呼吸が落ち着いた所で、リーズの丹田に手を当て、魔力を同調させ、魔力循環を強めた。リーズは一瞬驚くが、以前とは違い、身を任せてくれている。計測の方は引き続き行っているが、どうなっているだろうかと担当者の方を見ると


「循環量が……正常値になりました!」


やはりそうか。私の目にも、通常の人と同様に見える。先程とは違い、末端で流れが落ちていない。暫くして、私は同調を切った。どうやら、正常な循環は暫く続く様だ。


「導師様、有難うございます!これで魔力循環不全症の研究が進みそうです」


「お嬢様、わざわざ有難うございます。娘の状態も更に良くなりそうですわ」


「フィリス様、有難うございます!もっと体力を付けて、騎士学校に入れるくらい頑張ります!」


皆に送られて、本邸に帰った。丁度昼だったので、報告も兼ねて、お父様達と昼食を取った。私の方からは、今後は魔力循環不全症の治療にも協力していくことを話した。領地の状況も聞いたが、各種事業は順調に進み、お母様が行っている重力魔法の普及も問題ないそうだ。良かったよ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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